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【第1話】転移しました。スキルは地味でした。とりあえず歩きます。

【第1話】転移しました。スキルは地味でした。とりあえず歩きます。


足元に広がる一面の草原。

空気はやけに澄んでいて、空は信じられないほど青く、

遠くの方には、ファンタジーゲームのような山脈と、ちらちらと何かが舞っている鳥のような生き物が見えた。



「……本当に、異世界転移……してるのか?」



夢でもなければ、仮想現実でも、ドッキリでもない。

現実にしては非現実すぎて、でも、肌に触れる風や太陽の暖かさが、すべてを否応なく現実だと訴えてくる。


そんな中、再び視界の中にピコンと浮かび上がるものがあった。


青白く光るウインドウ。さっきと同じやつだ。


【ステータスを確認しますか?】


今度も選択肢は「はい」だけ。

拒否権のない選択肢に、苦笑しながら指を伸ばす。



タップした瞬間、今度は新しいウインドウが開かれる。



【名前】勅使河原 晃緒(てしがわら あきお)

【年齢】33歳

【職業】なし(転移者)

【スキル】

 ・《ヒール(EX)Lv.1》

 ・《言語理解(EX)Lv.1》

 ・《危機察知 Lv.2》


「スキル……ヒールと、言語理解、危機察知……なんか地味だなぁ」


さすがにLv.1や2という表示には不安しかなかったけど、

一部のスキルについている“EX”という表記が、なんとなく特別感を演出しているようにも思えた。


今はまだよくわからない。だけど、これが唯一の頼りであることは確かだった。


「…スマホ、電源まだ入ってるかな」


ポケットの中のスマホを取り出すと、まだ電源は入ったままだった。

時間も表示されているし、メモ帳や写真も問題なく開ける。

……ただし、圏外。


「……圏外か。そりゃ、そうだよな」


携帯キャリアの電波はどこにも届いていない。もちろんWi-Fiも繋がらない。

独身で、早くに両親を亡くした俺は上司部下以外に連絡を取る相手がいるわけでもないのだが、

現代社会人としては圏外の文字にいささか不安に感じてしまう。


だけど、考えようによってはスマホが使えるだけでもラッキーだ。

メモ帳やカメラ、計算機、時計……鞄の中にはモバイルバッテリーもある。

圏外とは言え異世界で役に立つ機能が意外と多いかもしれない。



改めて周りを見回す。


少し遠く――草原の先に、かすかに人工的な建物らしき影が見えた。

壁のようなものと、小さな塔が数本。人の営みを感じさせる、そんな風景。



「……あれ、街だよな?」


地平線の向こうに見える影を目指して、俺はゆっくりと歩き出した。


草を踏みしめる音と、誰の気配もない風の音だけが、静かに耳に届く。


そうして、俺の“異世界での物語”が始まった。


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