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主殿、我だけを見よ~異世界で助けた奴隷少女は元・魔王軍幹部!?独占欲と戦闘力が規格外な娘と遺跡探索スローライフ~  作者: 猫村りんご


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【第26話】旅立ちの準備

【第26話】旅立ちの準備


「この街を出ようと思ってるんだ」


先日の買い出し以来、ずっと胸の奥で考えていたことをナヴィに打ち明けた。


「そろそろ、どこか他の街にも行ってみようかと思ってさ。せっかく異世界なんだし、一ヶ所に留まらずに、いろんな場所や物を見てみたいんだ」


「ふむ……いや、我からは何も言うまい。よいぞ。主殿の“冒険心”とやらを、我がしっかり支えてやろうではないか」


――建前を見抜かれたような気がしたけど、それでも俺の意図を汲んでくれる彼女に、胸が少し軽くなった。



いろいろ不安はあるが、まずは旅に出るための資金をどうするかが問題だった。


ギルドでの小さな依頼や雑用で細々と稼いではいたが、長旅となるとさすがに心許ない。

そこで、少しでも足しになればと、私物を売ることにした。


ナヴィからは「異世界人だとバレるな」と念を押されていたため、スマホや腕時計など目立つアイテムは残し、日本から持ってきたビジネスバッグと革靴を手放すことにした。


古物店の店主は革靴をしげしげと眺めたあと、思いのほかの高値で引き取ってくれた。

どうやら異世界では、日本の量産品でも“質の良い高級品”という事らしい。


雨にも負けず、風にも負けず、サラリーマンの(せわ)しない生活にも付き合ってくれた品々だしな。

ちょっとだけ誇らしかった。



その後は数日かけて旅に必要な道具を買い集めた。

保存食に地図、テント、火打ち石……

旅道具は思った以上にかさばるものばかりで、旅というものの大変さを痛感する。



あれこれと荷物が増えていく中、街で気になる噂を耳にした。

魔族と人間が、互いに偏見を持たずに暮らしている街があるらしい。


一通りの買い出しを終えた夜。

ナヴィと二人で地図を広げ、その街について尋ねてみた。


「うむ、その場所なら聞いたことがあるのう」


ナヴィは指を滑らせ……と思いきや、地図の端、はるか東をトン、と指差した。


「この地図には載っておらぬが、“湖の都”と呼ばれておる街じゃ。

人間も魔族も、どちらとも区別せず共に生きておると聞いたことがある」


「本当にそんな場所が……」


たまたま耳にした噂話だったが、目的地としては申し分ない。


「じゃあ、目的地はそこにしようか。距離は…かなりあるみたいだけど、途中に村や町もあるから食料の補充もできそうだし」


「うむ。主殿となら、どこであろうと構わぬぞ」


そうして、俺たちは“湖の都”を目指す旅に出ることを決めた。



翌朝、旅立ちに向けての荷物の最終確認をしていたとき――


ナヴィは保存食と甘味ばかり詰めたカバンを脇に置き、俺が準備していたテントや寝袋、野営道具に手を伸ばした。


「これらは我が持とう。主殿は身軽なほうがよかろう?」


「いやいやいや、それはさすがに俺が持つよ。重いし、長距離を歩くことになるんだし」


「ふむ? 主殿の体力で持てるのか? 我のほうが断然――」


「女の子に重い荷物は持たせられないよ」


その一言に、ナヴィがピタリと止まった。


「……ぬぅ……」


耳の先が、ぽっと赤くなったナヴィは、バツが悪そうに視線を逸らし、口を尖らせながら、もにょもにょと呟く。


「そ、そういう扱いは……ずるいぞ…主殿…」


「……?」


「むぅ……まあ、よい! よかろう!

ならば我は、軽くて重要なものを担当する! 非常食とか! 甘味とかな!」


やたら威張って宣言する彼女に、思わず笑ってしまった。


俺は寝袋やテント、予備の水袋をリュックに詰める。

かなりの量になりそうな荷物を見て「ああ……この世界、アウトドア初心者にはやさしくないな」とぼやいた。


「ふっふっふ……安心するがよい! 何があっても我が全部吹き飛ばして守ってくれようぞ!」


「……そもそも、吹き飛ばすような事態にならないといいんだけどね」


そんな他愛もないやりとりを交わしながら、

俺たちは着々と旅立ちの準備を進めた。


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