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プロローグ2 “ヒロインside”

※この話は少し重めの内容を含みます。


物語が始まる前の場面なので、少し空気が暗めです。

【プロローグ2】


あの日、“死の淵にあった妾”は主殿に拾われた。

それが妾の全ての始まりじゃった――




生まれた時から、この身には“力”があった。

魔力の奔流、溢れ出る闘気。


物心の付く頃には妾の周りには大人の魔族ですら敵うものは居らず、

若き日から魔王軍の前線として様々な戦場の第一線を駆け回り、気が付けば幹部にまで上り詰めておった。



――思い返せばこの頃からかのぅ、妾が同族に恐れられ、嫌悪までされたのは。



気に入らぬ者は燃やし、(めい)に背く者を裂き、下卑た視線を向けるものは塵にした。

なに、妾が悪いのではない。魔族でありながら弱き者が悪いのじゃ。


……と、思っておったのじゃが。



まさかここまで……

妾が配下や他の幹部どもに…ここまで憎まれていようとは…。


あやつらは妾の首を取るために、あろうことか人間軍と裏で共謀しておった。





数日は戦ったじゃろうか。


裏切りに気づいた時には、すでに逃げ場も、僅かな味方すらも尽きておった。

命を削り、魔力を振り絞り、力の限りを尽くした。

……それでも妾は、ついに人間どもに捕えられた。



あれが魔王軍最凶幹部とまで言われた妾の ――最後の戦場であった。




気づけば妾は、檻の中。


人間どもは共謀した魔族を出し抜き「物好きな貴族への献上品」などの名目で

妾を秘密裏に人間領へと運び込んだ。



しかし奴らも誤算だったのじゃろう。


時が経つにつれ魔族の呪術と戦場の傷による病が妾を蝕んだ。

肌は焦がれ、四肢は形を失い、誇りを刻んだ肉体は見る影もなくなっていた。


美しき妾の顔も――面影すら残らぬほどに。

下卑た人間どもですら、もはや妾を見ることはなかった。


病と呪術に蝕まれ、腐りゆくこの体とともに、価値も誇りも奪われた。


「ふは……この妾が…城でも戦場でもなく…こんな薄汚れた場所で死を待つとはのう……」





それから何日、何か月と時が過ぎ、もはや声すら発せず、妾の瞳には光すら映らない。



――あれから幾度となく夢を見た。

腐り落ちる夢を見た。焼け焦げる夢を見た。

呪詛の類か見る夢はどれも耐え難く、寝ることにすら恐怖に感じる夜もあった。



……けれど、その夜に限っては、不思議な夢じゃった。

焼け跡でも戦場でもない、静かな光の中で。

妾はただ――誰かの隣に、立っておった。



奴隷市場の片隅の、酷く臭うあばら家同然のボロ小屋で一人の魔族が息絶えようとしていた。


その時――

鈴のような音とともに、扉が開いた。

扉の開く音とともに、風が吹き込んだ。



――それは、妾にとって。



最初の“光”じゃった。


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