【第15話】ぎこちない介護と魔族の食事事情
【第15話】ぎこちない介護と魔族の食事事情
簡単な野菜スープを作り、少し冷ましてから寝室へ持ち込んだ。
あまり塩も入れていない。弱った体でも、これなら飲めるだろう。
「スープを作ってきた。口に合えば良いんだが……っと、そのままじゃ食べられないよな。体、起こすよ。いいかな?」
そっと声をかけると、少女はじっとこちらを見た。
拒否するわけでも、うなずくわけでもない。
けれど、目をそらす様子もない。
(……大丈夫、ってことか?)
寝たままじゃスープも飲めないだろうし――
俺はそっと、少女の上半身を抱えるようにして起こした。
触れた瞬間、ピクリと小さな反応があったけれど、暴れたり、拒絶するような素振りはなかった。
思わず、ふうっと、胸の奥から息が漏れた。
少しでも、信頼してくれてるといいんだけどな。
背中にはクッションと枕を重ねて、もたれられるようにセッティングする。
少女の細い体は、まるでふわりと崩れてしまいそうで、緊張した。
「はい、少し冷ましてるから熱くはないよ」
そう声をかけながら、スプーンでスープをすくう。
そっと口元に差し出すと、少女はまた、じっとそれを見つめ――
やがて、控えめに口を開けた。
(……よかった)
慎重にスプーンを運び、そっとスープを流し込む。
少しぎこちなかったかもしれないが、少女は特に嫌がることもなく、静かに受け入れてくれた。
それから、ひと匙、またひと匙と、ゆっくり飲ませていく。
(……すごいな。ぺろっと食べてくれた)
空になった器を見て、少しホッとした。
体調が悪いなら、少しずつしか食べられないだろうと思っていたが取り越し苦労だったようだ。
「食欲もあるみたいでよかった。まだ足りないなら、パンとか干し肉もあるけど……食べるかい?」
少女は、ちらりとこちらを見て――小さく首を振った。
「ぅ、む……スープだけでよい。…そもそも我ら魔族は、他の種と比べ栄養摂取の間隔が長いのじゃ。数日飲まず食わずでも問題ない」
「……そ、そうなのか」
すごいんだな魔族ってのは。
人間だったら三日も飲まず食わずってのは命にかかわる。
「それじゃあ……お腹が減った時は、気軽に言ってくれ」
少女は、こくりとわずかにうなずいた。
それから、俺は毎日、少女に《ヒール》をかけ続ける日々が続いた。
あれから気に入ってくれたのか、スープは毎日飲んでくれている。
食事と、ヒールと、たまにぎこちない会話。
そんな日々を繰り返しているうちに《ヒール》のレベルはいつの間にか【Lv.10】を超えていた。




