【第11話】挙動不審なおっさんと目を覚ます少女
【第11話】挙動不審なおっさんと目を覚ます少女
それからも、俺は少女のそばで《ヒール》をかけ続けた。
淡い癒しの光が、静かに彼女の体を包む。
布の隙間から覗く肌からは痛々しい痣も殆ど見当たらなくなっていた。
(……効いてるな、ちゃんと)
……いや、確認したのは、あくまで服から見えてる範囲だけだ。
さすがに、服をめくってまでしっかりチェック――なんてことはしていない。
治療的な意味で見れば問題ないのかもしれないけど……構図がアウトすぎる。
今でもギリギリなのに、それ以上は完全にアウトだ。
しばらくして、ふと気配を感じて視線を戻すと――
少女が、目を開けていた。
(……!)
その瞳は、昨日とはまるで違う光が宿っているように見える。
昨日はただ、ぼんやりと天井を見つめるだけだった目が……
顔を向けてこちらを見て、はっきりと、俺の目を――捉えた。
(目が……合った)
でも、声はない。
何か反応があるわけでもなく、ただじっと見つめられているだけ。
もしかして、声が出せないのだろうか……?
それとも、まだ回復しきっていないのか……。
「えーと……聞こえるかな?」
少し緊張しながら、目線を合わせる。
「おじさんは怪しい者じゃない……んだけど……いや、この言い方がもう怪しいな……?」
自分で言っておいて、自分で引っかかる。
ああ、もう。どう言えばいいんだ、こういうとき。
「ごほん……おじさんは、君の傷を治す“お医者さん”みたいなもの、なんだよ。今やってるこの光も、その治療の一環でね。あー…い、痛くないかい?」
もちろん返事はない。けれど――
まっすぐな瞳が、ずっと俺を見つめている。
(……な、なんだろうな。この感じ)
子どもだからって、油断してたわけじゃないけど……
こうもまっすぐ見つめられると、こっちが勝手に焦れてしまう。
視線から外れるように少しだけ動いてみる。
……すると、少女の視線もそちらへ移動する。
試しにまた少し動いてみると、また目で追ってくる。
「……おお。ちゃんと見えてるんだな。よかった」
ベッドのそばに腰を下ろして目を合わせる。
吸い込まれそうな、綺麗な紅紫の瞳がこちらを見ている。
いまはただ、彼女の瞳に光が戻った事が何より嬉しかった。




