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キミがスキ  作者: はる
1/1

転校生

 いつもより騒がしい朝だった。

 それもそのはず。今年度からの転校生が、ここ鈴成学園中等部3年C組、つまりこのクラスにくるらしい。


 チャイムがなり、担任が入ってくると同時に生徒は慌てて席に着く。クラスのほとんどが期待の眼差しで教室の扉の方を見つめた。

 なめらかに歩く転校生。整った顔立ちを引き立てるように、美しい真っ直ぐな黒髪が腰のあたりまで滑らかに伸びている。


「では、自己紹介をお願いします。」

 そう先生が言うと転校生は可愛らしくて親しみやすい、ごく自然な笑みを浮かべた。

「二階堂萌那です。これから、どうぞよろしくお願いします。」


「では。二階堂さんは佐藤さんの隣に座ってね。」

 佐藤さん、と呼ばれた生徒は少々驚きつつも

「二階堂さん!私、佐藤くるみ!よろしくね〜!」

 と、笑顔で言った。


 二階堂萌那も少し驚いた。

 お、おお…急に自己紹介をするのね。この子、只者じゃない。この子は、

 そう!コミュ力の塊の陽キャ!!!!

 二階堂萌那は、隣の席の人物を尊敬し、自分の運に感謝した。


「佐藤さん、よろしくね。どうぞ、わたしのことは萌那って呼んで。」

「うん!私はくるみでいーよ!」

 まさにくるみ色の髪を揺らしながらにこっと笑う様子は陽キャそのもの。


「萌那って、どこの学校から来たの?」

 くるみが興味津々な様子で聞く。

「ランドリアの、シュトリーニ女子学院っていうところなんだけど……。そもそも、ランドリアって知ってる?」

「え、海外!?たしかー北の方の国でしょ?っていうか!シュトリーニ女子学院って!あの、貴族?達が通うエリート校!?」

 くるみは、さすが陽キャというべきか驚いたときの声が非常に大きいという特徴をもっていた。そしてもちろん、みんなが興味津々でこの二人を見ており、くるみの声はクラス中に響いた。

 その中でも、二人の女の子が近づいてくる。


「あ、萌那。私の友達の、」

「寺田小春と〜」

「青津真理です。」

 天然らしき女の子と、しっかりしてそうな女の子。陽キャと天然と優等生という三人グループ。

 キャラが被ってなくて覚えやすい!

 二階堂萌那はプラス思考だった。


「あ、よろしくね。どうぞ、萌那って呼んでね。」

「おお〜!わかった〜。小春でもこはでもなんでもいいよ〜」

「私は真理で!」

 こは……うーん、こはちゃんとか?え、かわい。マジ天使。

 二階堂萌那には若干オタク気質があった。


「で!萌那は、お嬢様なの?」

 急に話が戻った。お嬢様……、

 そう、そうなのだ!二階堂萌那はお嬢様だった! そして萌那は、一応性格はよかったため、さすがに自分でお嬢様とは言わず

「えー?どうだろう?自分じゃよくわかんないなあ」

 と、いい感じに答えた。


「あー、まあ、そうだよねぇー」

「そうだ!萌那のお父さんかお母さんって何の仕事してるの?」

 小春が、無邪気な笑顔で大変ぶしつけなことを尋ねた。萌那は少々驚きながらも、

「え、ええっと、マリーっていう洋服屋さんの社長、だけど……。マリーって、し、知ってる?」

 と、とても控えめな様子で答える。決して、「ん?高級ブランドの社長ですけど?つまりわたくし、社長令嬢ですけど?おーほっほっほっ!」なんて、やらないのである!決して!萌那は悪役令嬢ではないのだ!


 萌那が控えめに俯くと同時に、教室は賑やかになった。

「え!マジ!?マリー?」

「しゃ、社長……」

「二階堂さん、すごぉー!」

「ヤバ。」


「そんな驚かないでよー、一般人だって!」

 困ったように笑いながら萌那が答える。

「いやぁ……一般人ではないっしょ。」


 転校してきた初日から、二階堂萌那は「可愛くて性格も良いお嬢様な転校生」という、非常に学校で生きていきやすいポジションにつくことに成功した。


 しかし実際の萌那は……


 (前は女子校だったからなぁ……共学はやっぱり公式で付き合ってる人とかもいるだろうし……。あああ……考えただけでも尊い。楽しみね!)


 しょーもないことを考えていた。いや公式て。


 ちなみに、萌那がお嬢様、ということはもちろん本当である。運の良いやつである。


 そして、萌那の容姿はというと……中の上くらいであった。ちょっと可愛いというところである。

 しかし、そこはさすがお嬢様。

 メイドによる丁寧な肌・髪のお手入れ。顔の形や色から完全に計算された、毎日の顔マッサージやメイク。さらに彼女の幼い頃から洗練された美しい動き方。

 それら全てが、萌那を上の上に見せていた。

感想を送ってくだされば、喜びの舞を踊ります。

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