1.迎え
自分が誰なのか、ここがどこなのか、何故こんな所にいるのか、何も分からなかった。僕は記憶を失っているらしい。
何一つ思い出せないまま分かったのは、ここは海に囲まれている広い場所だということとたくさんの動物がいて動物を狩って生活している人間がいるということだ。僕は人間達が生活している場所から離れた森で動物と何年も…何十年もの時を過ごした。一緒に居た動物や植物はどんどん寿命を迎え、死んでいった。
ここに来てから900年は経っただろうか。僕は老いることもなく生きている。
人間たちは数を増やし続け、今では国がいくつか出来ている。人間のまとめ役は何度も入れ替わった。僕はきっと人間ではない。では一体なんなのか?僕には分からない。数百年も死なない生物が存在するわけない。天使ですらこんなに生きられない。
最近の人間は土地を奪い合い、「銃」という物を使い殺し合っている。増えていた人間は段々と減っていった。僕は初めて人間に会いに行くことにした。
力がなく、体を起こすことも出来ずにただ死が訪れるのを待つ人間。僕は人間を見て人間は哀れな程に弱い存在だということを知った。
「天使様?迎えに来てくれたのですね」
重たそうに瞼を開き、今にも消えてしまいそうな声で僕に言った。
僕が天使?何を言っているんだ、そう言おうとしたが目の前の人間は安らかな顔をして死んでいた。
人間は弱い。守らなければいけない存在だと感じた。
まだ生きている人間に会いに行き看病したが誰一人助けることは出来なかった。
寿命とはなんて儚いものなのか。僕はまた一人になった。
どれくらい経ったのだろう。僕は未だに死を迎えることなく存在している。
海を眺めていた。「隣に誰か居たら」もう叶うことない願い。もっと早くに人間に会っていたらなにか違っていたかな、そんなことを考えていたら隣にいきなり誰かが現れた。
「お前一人なんだな、俺はクロ。お前は?」




