出会い
ガタッ
俺はコンバータリーのドアを開け、タバコを吸いながらメーシャが出てくるのを待つ。
空は少し曇ってはいるが、ちょうど良いぐらいの天気で心が落ち着く。
「お待たせいたしましたロベル様。さぁ私の車はこっちです」
声がした方を見ると、バニーガールの格好をしたメーシャが立っていた。
俺は吸っていたタバコをおいてあったドラム缶でタバコを消して車の方に向かいながら言った。
「バニーガールの格好のままでいいのか?」
「別にいいですよ。あっちこっちで裸でセックスしてる獣もいるんですよ。それに比べたら可愛いもんです」
「貞操観念はどこに捨ててきたんだこの街は。あ、ていうかタメでいいよ。そっちの方が俺も話しやすい」
「あ、そうですか…わかったわ。」
メーシャが慣れてないタメ口で少し恥ずかしそうに喋っている。
そうこうしているうちにメーシャの車のところまで来た。
「ほら乗って。助手席はこっちですよ」
「あぁそうか…じゃぁ失礼します」
俺は車のドアを開けて車に乗った。
タバコをカバンの中から取り出し、一本とる
「タバコつけていい?」
「いいわよ。なんなら私も欲しいわ」
「いいだろう。一本ぐらいなら」
そういうと俺はもう一本をメーシャに渡す。
俺はタバコを咥え、ライターを手に取り火をつけた。
「スゥーー……ハァ」
俺が煙を口から出すのをじっと見ていたメーシャが言ってくる。
「ねぇ私の分の火はないの?」
「あーそうだったな。ちょっと待ってろ」
俺は一度おいたライターを手に持った。
カチッ…カチッカチッ…
「つかないな…もう切れたのかな」
「えー!私も吸いたかったんですけど」
「つかないもんはしょうがないだろ!今は我慢しろ」
俺がまた吸おうとしていた時にメーシャが恥ずかしそう言ってくる。
「そ、そのタバコの火…私のにつけてよ」
「これとほぼ同じシュツエーションを一度見たことがあるんだが…デジャブだろうか?」
そう言いながらお互いのタバコを近づけ、火を相手のタバコにつけた。
「ありがと。じゃぁ、車出すよ」
そういうとメーシャがキーをかけ、エンジンをかけた。
「じゃ、道は案内してよ」
「あぁ、当たり前だ」
そういうとメーシャがハンドルを握り、アクセルを踏んだ。
しばらくがたった。
俺は新しいタバコに火をつけ、前の方を見ながら言った。
「メーシャってさ、夢とかってあんの?」
メーシャはしばらく考えて、タバコの煙を吐いてから言った。
「あるわ。もっと上に行く夢よ。今のクソみたいな生活は嫌なのよ。毎日夜になったらおじさん達とお話しして、キスして、フェラして、乳首いじられて、挿れられて、結構な量出されて、ピル飲んで、時には魔法使って色々な客の性癖に付き合って、終わったら酒飲んで酔っ払って店で生乳出して寝る。こんな日々、親が見たら泣くわね」
メーシャは悲しそうな目でタバコを吸いながら言った。
俺も口を開ける。
「俺も夢があるんだ。元の位に戻ること。俺みたいなやつでも昔は財産や名誉が有り余るぐらいあったんだがな…仲間が俺に冤罪をかけてこの地まで落とされたんだ」
「仲間が冤罪をかけるって……何があったの?」
「まだお前には言えないな。ほら、五本目やるよ」
俺は五本目のタバコをメーシャにわたした。
メーシャは手で『いらない』というジェスチャーをした。
「あ、メーシャ!そこを右だ」
メーシャはそんな俺の言葉は聞かず、ハンドルを左に回す」
俺は慌てて言った。
「おい!何してるんだよ!右って言ったろ?」
メーシャは俺の言った言葉を無視し、車を走らせる。
しばらくして、車は路地裏に停まった。車を停めたメーシャがタバコを吸ったまま言ってくる。
「あなた、本当は帰る家なんてないんでしょう?私、人の心が読めるのよ。あなたが友達と電話していたのも、母親から嫌われているのも、なんであなたが冤罪を仲間にかけられたかもね」
俺は黙りこくった。
なぜ嫌われているかは単純だ。俺は勇者として有名になった後、親から嫉妬され、嫌われていった。ただそれだけ。
俺はタバコを消して言った。
「母さんと電話できると知ったとき、ちょっとだけ怖かったんだ。なんて言われるんだろう…って」
「知ってるわ」
メーシャは優しい声で言った後、タバコを消して言う。
「だから、今夜は私の家に来ない?というよりずっとよ。私の家にはあなたのような夢を持つ人がいっぱいいるのよ。だからあなたの役にたてるはず」
俺はしばらく考えたあと、メーシャの方を向いて言った。
「……わかった。行くよ」
メーシャは笑顔で言った。
「決定ね!」
そう言うとメーシャは車のエンジンをかけ、路地裏から出た。