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プロローグ

昔々、この世界は二つの軍勢に分かれていた。

一つは人間。もう一つは魔族だ。

両者は最初は友好関係を持っていたものの、すれ違いや魔族の人間に対する差別的発言、魔族の奴隷にされる人間も増え、人間の魔族に対する不満が高まった結果、人間が魔族側のある国の王様、ポールデンス帝王を殺害した。

それからは両者完全に敵対するようになり、そこかしこで戦争が起きるようになった。

そんな混乱の世界に、ある一つの冒険者パーティーが名乗りをあげた。

当時無名の男二人、女二人の四人組のパーティーだ。そんな彼らは魔族のいる場所から遠く離れた王都でよくこんなことを口にしていた。


「私たちが魔族との戦争を終わらせてあげましょう!」


もちろん、最初その言葉を口にした時の周りからの言われようはさんざんなものだった。


「調子に乗るなこの自惚れパーティーが!」

と言われながらゴミを投げつけられたり、

「なら早く戦争を終わらせなさいよ!あんた達がそうやって演説まがいなことしてる時間に何人の人間が死んでると思っているの!」

と言われながら殴られそうになったこともあった。

だがそれでも彼らは大口を叩くことをやめない。王都に住む人々はパーティーに対する不満が高まっていくばかりだ。

そんな中、ついにこの王都にも魔族が攻撃を仕掛けてきた。

相手は数十万の魔族を引き連れ、王都の入り口で構えている。

それを見た冒険者達や剣士は急いで門の方へ走って行っている。人間達は逃げ惑うもの、部屋の中に籠るものなどがいる。

そんな殺伐とした空気の中、冒険者や剣士は門の前に立った。

そして王都の最強の剣士が剣を空に突き上げ、大きな声で言った。


「お前ら!人間の本当の力を魔族に見せつけてやろう!」


その言葉を合図に、それぞれが戦い始めた。



戦い始めて2時間が経った。

戦況は圧倒的に魔族が優勢、人間は剣士、冒険者含め四分の三以上が死んでしまった。

「もうこの国は終わりだ…」みんなそう思った。

その時だった。



「我らの時が来た!今こそ戦争を終わらせてやろう」



そう言ったのはさんざん大口を叩いていたあのパーティーの剣士だった。

そのうちのリーダーらしき斧を持った男が言った。


「皆さん!下がっていてください!危ないですから!」


そう言ってみんなが王都の中に逃げると、そのパーティーは魔族の方へと近づいていく。

魔族が近づいてきたパーティー一同を殺そうとしたその時…


ピカッ!


目の前が光り、その光の強さに目を瞑る。

光が収まったと思い、目を開けるとそこには衝撃の光景が広がっていた。

魔族が全滅していたのだ。それも、約十秒間の間にだ。

そんな光景を見て戸惑いを隠せない冒険者や剣士達はただただ立ち尽くしていた。

そんな中、斧を持った男が言った。


「終わらせるって言ったでしょ?戦争を」


伝説の始まりである。

そこからそのパーティーは魔族の国々を蹴散らしていった。

その中でパーティーの名誉も格段に上昇し、人間魔族ともに知る最強のパーティーとして名を馳せた。

時期に魔族側の最後の敵、魔王をも倒し、人間に勝利をもたらした。

だがそんな嬉しいニュースばかりの中、ある悲しいニュースが舞い込んでくる。



斧の戦士、クルードマイセル死去。



世界は嘆き悲しんだ。

伝説の戦士の死、28歳という若さで亡くなり、死因は不明。

クルードマイセルの故郷、ルーマイセル王国での葬式には各国から2億人が集まったという。

王都の中に入れなかった人もおり、王都周辺に大量の人だかりができたそう。

葬式の映像も全国に放映され、総勢42億人がその葬式の映像を眺めていたとされている。

クルードマイセル以外のパーティーメンバーは冒険者を引退。一般市民として生きていくようになった。

そんな悲惨な勇者の死の後、新たな時代が幕を開ける。



人間達の戦争の時代だ。



勇者の死の後、だんだんと世界の治安は悪くなっていった。

今までは勇者のパーティーが世界の頂点に立ち、平和な日々が続いていた。

だが勇者が死んだ後、たくさんの支配者が現れた。世界はその支配者達によって支配され、各国の仲も悪化。魔族間戦争時代より被害は大きくなっており、戦争と犯罪が蔓延る毎日が続く。

しばらく経って戦争は治り安全な地域も増えたものの、犯罪はまだまだ多く、無法地帯の割合がとても多い。

そして今に至る。


カーンカーンカーン


チャイムが学校全体に鳴り響く。


「と、今日の授業はここまでだ。お前ら、さっさと帰って復習しろよ」


「「「わかりました」」」


俺は国立ルーン学校の教員をしているロベルだ。

毎日本当に大変で残業も多く、本当に死にそうだ。

だが、今日でこの学校ともお別れ。教員を辞めることにした。仕事はこれから見つけるとしよう。

俺は生徒達の方を向いて言った。


「まぁ…なんだ、お前ら元気でやれよ!じゃぁな!」


「「「はい!ロベル先生!」」」


泣きそうになっている生徒もいれば、お別れとかどうでもいいから早く帰りたいと思っていそうな生徒もいる。

俺は教室のドアを開け、職員室に行って挨拶を済ませた。

生徒達のメッセージと先生達からのプレゼントをもらい、俺はこの学校を出た。


「はぁ、今日は本当に疲れたな……あそこに行くか」


あそことは「カフェ・コンバータリー」みんなの言うところの大人の店というやつだ。

俺はコンバータリーの前に立つと、ドアを開けた。

目の前に受付のバニーガールのお姉さんが立っていた。


「いらっしゃいませ。どのコースにいたします?」

「1日コースでお願いします」

「わかりました。セックスはされます?」

「いや、やらないよ」

「わかりました。五号室でお待ちください」

俺は受付を済ませ料金を払い、五号室の部屋に入り椅子に腰掛ける。


ここであの勇者の話をしよう。

「今?」と思うかもしれないが、話したいから話そうと思う。

………勇者の話にはあるトリビアがある。


勇者クルードマイセルは死んでいなというものだ。


マイセルの死因は明らかにされてはいないが、多くの人は「自分の立場に対するプレッシャーによる自殺」というふうに解釈をしている。

だがマイセルの自殺したような跡、さらには死体すらも見つかっていない。

そんな噂話はどんどんと広がっていき、一時期は死体の大捜索が行われたこともあったが、死体を見つけることはできなかった…

だが、時が経つにつれてその話はあまり話されなくなり、みんなの記憶からすっかり忘れ去られていた。

なぜこんな話を掘り返したか、もうお気づきかもしれない。


「もう一度、目指してみるか…」


勇者クルードマイセルとは、この俺のことだ。

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