『再会と再開』 5
『城下街』『ディナスティーア』。
『東区』『南のゴミ山』『麓』。
ゴミ山を見上げる。
想像以上の大きさに生唾を飲む。
ちょっとした山だ。
まさしく、『ゴミ山』。
そして、俺の視界に映る『ゴミ山』に、大量の人形が見えた。
今回の殲滅対象である、『正体不明の人形』。
『人形の殲滅』と言われて、直立不動の人形を破壊し尽くせば良いものだと思っていた。
しかし、見える人形たちは動き回っていた。
形は人。 ゴミで作られた人の形をした人形。 マネキンのような見た目。 動く姿は、二足歩行や、四つん這いでの移動、ブリッジ等々。
様々な格好でうごめく人形たちが、昼間だというのに不気味さを醸し出していた。
そして、目につく人形の中には、武器を持つ者も見えている。
おそらく、戦闘になる。
ボカとコルザに依頼がいったのはこのためだったのだろう。
俺は右手で、腰の『短剣』を抜いた。
目を閉じて、ゆっくりと息を吐く。
集中。
目を開ける。
目の前には、不自然に山頂まで伸びた、数多の人形達の残骸が挟む、まっすぐな一本道。
誰かが、人形を壊しながらまっすぐにここを駆け抜けて行ったのだろう。
それは誰か。
それは言わずもがな。
サティスだ。
「行くぞ」
ダンッと踏み込んで駆け出す。
そのまっすぐな道を使って一気に『ゴミ山』を駆け上る。
俺の存在に気付いた大量の人形が迫りくる。
勿論、武器は構えられている。 中には拳や足で向かってくる人形もあった。
俺は半分に折れた長剣の先を整えた『短剣』を構える。 この『短剣』は母の形見。 まずは、この『短剣』で、サティスが壊し損ねたこの大量の人形を壊しつくす。
俺はタタタンッとリズムを足で刻む。
「『剣舞術』」
リズムに乗って舞う。
「『ポルカ』」
集団戦闘用の型。
3拍子のリズムに乗って縦横無尽に舞い、切り続ける型。
俺は息の続く限り、切り続けた。
一瞬にして殲滅を完了。
周囲確認のため、1度体を止める。
カタカタカタカタッ!!
背後の死角から人形が、剣を振りかぶって飛び掛かってきた。
「遅い! 『空間魔術』『転移』!」
『転移』で背後を取る。
腰の青いプレートのアクセサリーが付いた『直剣』も左手で抜く。
右で『短剣』。
左で『直剣』を構える。
「『空間剣術』『転移切断』 『二連』!」
『剣舞術』でよく使った、体を回転させる動きを駆使して人形の首と腹を切断。
バラバラに崩れ落ちて動きを止めた人形。
それを確認して着地。
と、同時。
バゴォオオオンッ!!
轟音が響いた。
それは、『ゴミ山』の山頂から。
あと少しの距離にある山頂を見上げると、そこから人形が数10体吹き飛び、落ちてきていた。
あぁ、いる。
あそこにいる。
俺は駆け出す。
まだ残っていた人形が数10体、しつこく前に並んで邪魔をする。
「邪魔すんな!!」
俺はリズムを取る。
俺がこの世界で最初に修得した型。
突発的なリズム上昇。
『短剣』による刺突。
「『クラコヴィアク』!!!」
ズドオオオンッ!!
爆音を立てて正面を塞ぐ人形を刺突で吹き飛ばす。
舞い上がる人形。
開ける視界。
たどり着く頂上。
その中心。
『深紅』が舞っていた。
肩まで伸びた深紅の髪を持つ少女は、こちらに気付く。
振り向く。
驚く。
そして。
笑った。
「フェリス!」
久しぶりに見た彼女の笑顔に俺は嬉しさが込みあがる。
久しぶりに聞いた彼女の声に俺は安心感が沸き上がる。
「サティス!」
俺は勢いを殺さずにサティスの元まで駆け抜け、そのまま彼女の背中に自身の背中を預けた。
背に伝わる、変わらないサティスの体温。
「ひさしぶりね!」
「あぁ! 積もる話はあるが」
「えぇ、今はこいつらを倒しちゃいましょう!」
サティスは身をこちらに向け、右手で剣を突き刺す形で構えた。
その剣は彼女の母の大切にしていた『曲剣』。
彼女の母の形見。
あんなに重くて持つのがやっとだったのに、振り回せるようになったんだな。
「フェリス、私達きっと同じくらい強くなったわ」
俺は彼女の構えを見て察し、『直剣』をしまって、空いた左手に『短剣』を持ち直す。
そのまま、『短剣』を、サティスの方に体を向けて同じ方向に、突き差すように構える。
この剣は、俺の母とともに戦った『短剣』。
俺の母の形見。
「そうだな。 きっとそうだ。 やろう」
いつもの右隣。
サティスが嬉しそうに微笑んだのが分かった。
「「『剣舞術』『協奏』」」
声が合う。
「「『修型』」」
息が合う。
互いに考えている事が分かる。
「「『ワルツ』」」
2人同時に動いた。
繰り出すは、最後に修める『修型』。
回転しながら、切り続ける、殲滅戦特化の型。
サティスが斬り、俺がそれを守る。
変わらない連携。
面白いほどに息が合う。
止まらない回転切りで、山頂に集まってくる人形を一瞬で殲滅した。
『ゴミ山』の頂上。 数多の人形の残骸。
その中心で、俺とサティスは同時に剣を鞘に納めた。
互いに拳を握って、引く。
「おかえり、フェリス」
「ただいま、サティス」
「もう一度、目指すわよ」
「あぁ」
コツンと拳をぶつけ合う。
「「2人で『無敵』になる」」
2人、どちらともなく笑いだす。
ここからは同じ方向。
笑顔はそのまま。
肩を並べて走り出す。
「「行こう!」」
再会、そして再開。
夢に向かって再スタートだ。




