表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第二部 少年期 前編 『人形編』
97/721

『再会と再開』 4

 『空間魔術』の魔術、『転移』には、面倒な特性がある。


 まず1つ目。

 それは、距離と重さによって必要な体力が大きく変わってくるという事。

 距離が伸びれば伸びるほど体力が必要になる。

 重さも同じく、重くなればなるほど体力が必要になる。

 今の俺の限界は、距離だけなら約1km。

 重さだけなら約30kg。

 重さの方が体力を使うため、俺の体重は20キロと少しであるのを踏まえると、結局移動できる距離は10メートル前後が限界である。

 

 2つ目。

 自分以外を転移させるには、倍の体力と、直接触る必要があるという事。

 自分以外の誰かや物を『転移』させるためには、俺が『転移』する以上の体力が必要になる。

 前述を踏まえて大雑把に言えば、距離は500mが限界だし、重さに至っては15kgが限界となる。

 加えて、触れる必要があるため、遠くのものを引き寄せるなんてことは無理だ。

 ・・・まぁ、『空間掌握』というものを習得できれば話が変わってくるみたいだが。

 その習得ははるか先らしい。


 そして、最後。

 3つ目。

 『転移』はあくまで『移動』であるという事。

 『魔素』によって、体を超高速で運んでもらっているだけなのだ。

 つまり、密室や、地面の中など、そういった場所に『転移』することは不可能なのである。

 もし、やろうものならトマトである。

 まぁ、危険があったら『魔素』が勝手に止めてくれたり、そもそも発動しなかったりするので、そんなことになる事はほぼ無いと言っていいだろう。


 という面倒な特性を持つ、この『転移』。

 だが、それでも『転移』。


 面倒だが、便利ではあるのだ。



 「「『転移』!」」



 『アロサール家』『2階玄関』。

 そこから外に出た俺とコルザは、回廊の上で『転移』を使用して空高くまで飛んだ。

 やはりコルザの方が体力があるらしい、俺よりもはるか上空に『転移』している。

 

 「さぁ、フェリス!場所は覚えているかい!?」


 「『東区』『ゴミ山』だろ!」


 「正解! とりあえず『南門』から入るからしっかりついてきなよ! 『転移』!」


 15メートルほど遠くに『転移』したコルザ。

 彼女はもっと早く『転移』できるはずだが、恐らく俺を待っていてくれているのだろう。

 俺は、『転移』の再使用にはまだ少し時間がかかる。

 数10秒だが、戦闘では命取りだ。

 気を付けて使わないとならない。


 「『転移』!」


 コルザを追いかける。

 それを何回も繰り返して、『東区』の『南門』にたどり着いた。

 見上げるほどの大きな門。

 その下、左右に銀の甲冑を着た門兵が2人。

 右側の門兵の後ろには扉がある。 


 さて、『ディナスティーア』は、中心の『ディナスティーア駅』を含んだ円形の『中心街』と、バツ印のように東西南北の区に分かれている。

 『東区』は、中を隠すように周辺を強大な壁で囲われ、一般人は簡単には入ることが出来ない。


 その理由は『治安の悪さ』と『不衛生さ』である。


 元々『東区』は研究都市だったらしい。

 『異世界召喚』の『召喚研究施設』があったのだが、事故により周囲一帯が吹き飛んだ。

 その、崩壊した『東区』に罪を犯して捕まり、拘留された後、行き場を無くした人々が勝手に住み込んだ。

 そんな人たちのせいで、治安が悪化、国王が他の区域に住む人々を守るため、巨大な壁を作って隔離した。

 中は、『治外法権』と化す程『治安が悪い』。

 その為、立ち入り禁止なのである。


 と、言うのは表の理由。


 ボカが言うには、『勇者召喚』の失敗によって起こった『大事故』の惨状を隠す為と、前科持ち等の『要注意人物』の隔離。 王族関係者以外への、2度目の『勇者召喚』の隠蔽。 等といった理由があるらしい。


 さらに、『東区』は表と裏の事情に加えて、2ヵ所あるゴミ処理場の巨大な『ゴミ山』や、整っていないインフラ整備のせいで『不衛生』な区域でもある。


 等々、様々な理由により『東区』は、王の管理下に置かれているのだ。

 と言うことで、基本立ち入り禁止。


 そんな危険な場所に入るのには、それなりの実力を示し、許可を貰う必要があるが、俺はすでにボカから許可を貰っている。

 俺の、今の実力で通用するということなのだろう。


 コルザが右の扉の前に立っている門兵に話しかけに行く。


 「うおっ驚いた。 こんな場所に何の様だ?」


 コルザが門兵に聞かれて答える。

 俺は、コルザを追いかけて隣に並んだ。


 「やぁ、門を開けて欲しいんだ。 王様からの依頼でね。 言わなくてもわかると思うけど、一応父さんの許可は貰っているよ。 ちなみにこの子もだ」

 

 コルザが、俺の肩を叩いて言う。


 「あぁ、さっきの女の子も『雑務隊長』から許可を貰ってるって言って入って行ったよ。 髪が赤くて、ちょっと怖い顔で笑ってたから心配だったんだ。 本当に大丈夫なのか?」


 不審そうに見てくる兵士。

 なんだ?

 失礼だな。

 て言うか、その話はサティスの事か?

 俺たちの事を疑ってるのか?

 よし、それなら、ここで『剣舞術』の1つでも披露して、実力を見せつけてやろうかね。


 俺は、腰に左右から取り出せるように下げている2本の剣に手を伸ばす。

 右の折れた剣先を鍛えなおしてもらった『短剣』。

 左の青いプレートのアクセサリーがつく『直剣』。

 『剣舞術』は『短剣』だ。


 「あぁ、心配ないよ。 何かあっても僕がいるからね」


 「そうか、なら安心か」


 ・・・良いんかい。

 

 肩透かしを食らった俺はため息をついて手を剣から離した。

 俺は、門兵が開けてくれた、後ろの扉にコルザとともに入っていった。


 門を開けるわけではないのね。

 ちょっと残念だ。


 この先にサティスがいる。

 

 やっと会える。

 意気揚々と扉を抜け、通路を通り、再度扉を潜った時だった。


 「うっ」


 異臭に顔をしかめた。

 隣のコルザも同じらしく、鼻をつまんでいた。


 「『スラム街』は、『ゴミ山』のゴミを拾い集めているうえに、上下水道があの『研究施設の爆発』で破壊されて以来、修繕されていない。 不衛生そのものなんだ。 じきに慣れるよ」


 鼻声から、少しずつ元に戻る。

 意識しなければ・・・何とかなりそうだ。


 「さて、『東区』には北と南で2か所の『ゴミ山』があるんだ。 どっちに行く?」


 俺は聞かれて悩む。

 『南区』にある『南門』から入ったため、南のゴミ山がちょっと行った所に見えている。

 北は見えない。

 サティスは多分、目の前から行く。

 それなら決まっているな。


 「南で」


 「了解。 それじゃ、僕は北に行くよ」


 言ってコルザは北に向かって『転移』して行った。

 俺は徐々に離れていくコルザの姿を見届けたあと、『スラム街』の建物に挟まれた、広い道の奥にそびえ立つ、巨大な『ゴミ山』を見る。


 あの先にサティスがいる。


 不思議な確信めいた予感があった。

 俺は体力温存もかねて、走って『ゴミ山』の麓まで向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ