『革命戦編』 『終戦』 1
俺は立ち上がり、下の拘束を解いた。
フォールとバイレが倒れているエスクラボの元へ駆け寄っていく。
『革命戦』は終わった。
これ以上の拘束は必要ない。
他のクラボ派の主要メンバー達も駆け寄っているのが見えた。
『革命戦』を見にきていた生徒達の中からセミージャ先生と、クラシオン姉妹も見えた。
こっちのメンバーも次々とスィダの元へ向かっていっていた。
ふと、隣のサティスを見る。
顎に手を当ててなにか考え込むような、珍しい顔をしていた。
「サティス?」
「・・・技の組み合わせ。 ひとつに。 いえ、ただまとめれば良い訳じゃないわね。 あと少しでなにか掴めそうだわ」
ぶつぶつと独り言を呟くサティス。
「おーい、サティス?」
「あ! ごめんなさい! ふふっ。 スィダ、すごいわね! 『身体強化』の強化と『至型』に至ること。 どちらも凄いことだわ! 『剣舞術』以外の『至型』なんて初耳よ! 良い技だったわ! あの状態のスィダなら倒すの苦労しそうね!」
勝てないとは言わないんだな。
さすがの自信だ。
「そうだな。 俺たちの盾役だけあって打たれ強いしな」
「そうね。 攻撃を回避する力も高いからそもそも攻撃を当てるのにも苦労するわ。 今回は相手がクラボだったから手加減してたみたいだけど、本気になったらきっと破壊力も目を見張るものになると思うわ」
言いながら満面の笑みになる。
「私たちの盾役は心強いわね!」
「そうだな。 本当にスィダが仲間で良かったと思うよ」
「そうね! さぁ、スィダの元へ行きましょう! 勝った事を喜ばないと!」
「あぁ、行こうか」
俺は、サティスに合わせて足を前に出した。
並んで歩く。
「あ、そうだわフェリス! 今回はあまり手を出さなかったわね? イディの攻撃も防がなかったわ」
「む。 うーん。 そりゃあ、死ぬような攻撃や本当にまずい状況だったら守るつもりだったけど、これはスィダの戦いだろ? つまり、今回の主人公はスィダだ。 だったら、スィダが自分の力で勝たなきゃ意味ないだろ。 俺の仕事はこなしたしスィダなら勝てるって信じていたしな」
俺の言葉を聞いたサティスがなぜか笑った。
「ふふっ! フェリス? さっき私が苦労しそうって言った時、自信で溢れてるって思ったでしょ?」
うぐっ。
「分かってたか。 すまん」
「どうして謝るのよ? 私はなにも気にしてないわよ? 『2人で無敵』を目指して努力してるんだから、戦闘でくらいは自信を持たないと努力してる自分に申し訳ないわよ。 だから、謝らなくて良いの」
「そうか」
「それに、フェリス? さっきの手を出さなかった理由。 それを思ってるフェリスも大概よ?」
「え、なんで?」
「だって、さっきの言葉、『この中で一番強いのは俺だから安心して戦え』って感じに聞こえたわよ?」
「な!?」
言われて顔が赤くなる。
あまりにも傲慢。
言われてみればそう受け取られてもおかしくない。
だって、サティスの言う通り。
俺ならなんとか出来るから見守ろうと思ったと言っていたようなものだ。
恥ずかしい。
あまりにも傲慢で嫌なやつだ。
「すまん。 そんなつもりは」
「だからなんで謝るのよ? 私はフェリスも自信を持ってて嬉しかったわよ? フェリスも努力してるんだから、強いって自信を持った方が良いわよ!」
「駄目だ。 傲慢は身を滅ぼす。 褒められたら調子にのる」
「・・・傲慢とは違うと思うし、フェリスは少し調子にのっても良いと思うけど」
「いや、油断に繋がるから駄目だ」
「頑固ね。 でも・・・ふふっ。 自信満々で調子にのってるフェリスも可愛いと思うわよ?」
悪戯な笑み。
「う、うるさいなぁ! とにかく、駄目なものは駄目だ!」
「わかったわよ! また、危ない目に遇われても嫌だもの!」
あははっ!と笑った後こちらを見つめて、言葉を続ける。
「でもフェリス? 私はあなたの事を誰よりも強いと思ってるわ。 だから、少しは自信を持って。 努力している自分を認めてあげてね」
微笑みながらそんなことを言う。
心臓が強く脈打つ。
あぁ、サティスは俺を認めてくれているんだな。
それがとても嬉しかった。
照れ臭くて目を合わせられない。
俺は、後もう少しでたどり着くスィダの方を見ながら口を開く。
「それは、俺もだ。 俺は、サティスの事を誰よりも強いと思ってる。 ちゃんと自信を持っているサティスを誇らしいとも思うよ」
「な!?」
俺は、突然立ち止まったサティスを見る。
顔が真っ赤だった。
「どうした?」
「あ、ほ、誇らしいなんて言われると思ってなかったわ!」
「そ、そうか? いつも思ってるんだけど」
「いつも!?」
さらに驚くサティス。
「はいはい。 良い感じなところごめんね~。 エスクラボが目を覚ましたから、スィダがなにか話したいみたい。 お静かに」
俺とサティスの間にファセールが割り込んできた。
サティスは慌てて顔を隠す。
「わ、わかったわ! 静かにするわね!」
「いや、声が大きいよ」
なんてやり取りをしている2人を微笑ましく思いながら俺はスィダに目を向けた。
体を起こし、バイレとフォールに背中を支えられながら座るエスクラボ。
クラボ派閥のメンバーは、クラシオン姉妹から治療を受けていた。
大男もイディオータの隣で治療を受けていた。
そん彼らの前でスィダは、エンシアに支えられて座っていた。
こっちの陣営を治療するのはセミージャ先生だ。
それぞれの陣営が互いの陣営と向き合う形で集まっていた。
会長と副会長もニエベとともに向かってきていた。
俺とサティス、ファセールもスィダの後ろに行く。
セミージャ先生からの治療を受けながら2人の様子を見つめる。
全員が集まって、スィダはやっと口を開いた。




