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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第四部 青年期 『1年生編』 前編
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『1年生文化祭編』 『ティガ先生の訪問』

 午後14:00。


 美術室兼絵画部部室。

 

 俺は、ひとり美術室にた。

 ここでの留守番を初めて早30分。

 いまだ誰も来ない絵画部の展示会。


 ニエベがここにいた時は何人か来てくれていたらしいが・・・。


 「・・・まぁ、こんなもんだろ」


 この世界には漫画は普及していない。

 そもそも、小説を好んで読むのは少数派なのだ。

 俺の周りには読書家な者が多いが、基本的に読んでいる者は少数派なのだ。

 この学院に来てよく分かった。


 図書館だって、結局は小説を読むに行くと言うよりは授業の参考書を借りたり、読んだりしに行く場だと認識している者が殆どだ。

 絵を趣味にしている者もこの学院では、俺以外にはニエベくらいしか知らない。

 『魔術』や『剣術』自体が趣味なものが多い学院だしそう言う物なのだ。


 ・・・俺に友人が少ないのが悪いわけではない。


 と、人が入ってきた。


 思わず椅子に座る姿勢を正す。


 なぜなら、その人は先生だったからだ。


 『インベスティガシオン・ペルデ』先生。

 灰色の髪と光輪、白い翼。

 この学院にいる『天族』の先生のひとりだ。

 『魔素研究』の第一人者で、教科である『魔素研究』の担当教諭でもある。


 彼は、『天族』であるとは別な意味で有名である。


 それは、顔が怖いという事。

 まず、背が高い。

 俺が見上げる程の高さなのだ、軽く200センチはあるだろう。

 その高い位置にある彼の堀が深い顔は、眼光鋭く、強面。

 そんな目で高い位置から見下ろされれば誰だって委縮してしまうだろう。


 が。

 実は、俺はあまり怖くなかった。


 いや、顔は怖いぞ?

 だが、彼が『魔素研究』の事を話す姿がとても楽しそうなのを知っているのだ。


 授業中、『魔素』の事を話す彼の目は、まるで少年のように輝いていた。

 話す内容も興味深い物ばかりだった。

 周囲の人は、彼の熱量に引いていたが俺はなんだか共感してしまったのだ。

 好きな物を語れば、誰だってああなる。


 それに、入学試験の日。

 試験会場の場所を教えてくれたし、試験中に、『魔術』を少し失敗してしまい、危うく爆発させてしまうところだったのを救われた事もあった。


 ティガ先生は、根がやさしく勉強熱心な先生なのだ。


 「・・・見てもいいか?」


 ティガ先生がそう、俺に聞いた。

 正直、絵に興味があるとは思えなかった為、少し驚いて反応が遅れてしまった。


 「あ、はい! ごゆっくり!」


 ティガ先生は頷いて絵を見ていく。

 そして、俺の漫画の前で足を止めた。


 「・・・これは?」


 「あ、『漫画』です! 俺が、描きました!」


 「・・・『漫画』? 見ても?」


 俺の頷きを見てから漫画を手に取ってページをめくっていった。


 「・・・ふむ。 なるほど。 これは面白い表現方法だな。 話はつまらんが」


 グサッと刺さった。


 「それに、良い絵だ。 熱が伝わってくる。 まぁ、そのせいで勢い任せになってしまっているのはどうかと思うが」


 ふわりと閉じて、優しく元の場所に戻した。


 え?

 褒められたの?

 貶されたの?


 ティガ先生は俺を見る。


 沈黙。


 「え~と・・・?」


 なんだよ!

 その顔でじっと見るなよ!

 顔は怖いんだから!


 「・・・『魔素研究』に興味はそそられなかったか?」


 「え? あ、え?」


 突然の問いに戸惑う。


 え? 何? どういう意味?


 「あ、と~? いや、『魔素研究』は面白いですよ? 先生も授業も楽しいですし」


 「・・・そうか」


 ティガ先生がまた黙ってしまった。

 顎に手を当てながらその手の人差し指で顎をかりかりとかきながら目線を右下に落とす。


 「えっと・・・」


 沈黙が怖い。

 俺、怒られるの?

 何かしたか?


 「『魔素研究室』の場所はわかるか?」


 「い、いえ」


 「『卒業論文』の議題は決めているのか?」


 ん?

 なんで突然?


 「え? いや、まだ1年生ですし」


 「・・・早いという事はないぞ」


 「え、ごめんなさい」


 思わず謝ってしまった。


 だって怖いんだもん!

 詰められてるのかと思う!


 と、ティガ先生が胸元から雑髪とペンを取り出した。


 「・・・『天人語』で良いか?」


 何がだろうか・・・?


 「えっと?」

 

 「読めるのかと聞いている」


 「あ、はい! 読めます!」


 俺の返答を聞いてすぐ、何かを書き込んだ。

 その雑紙をそのまま俺に渡す。


 「・・・これは?」


 『魔術研究棟』『3階』。

 『研究第一号室』『魔素研究室』。


 「『魔素研究室』の場所だ」


 ペンを胸元にしまったティガ先生は、そのまま振り返る。


 「・・・『魔素研究』に興味があるならこい『転生者』」


 「え? 覚えて?」


 俺は入学試験の日を思い出す。

 ティガ先生は俺を『転生者』と見破り、さらには『魔素研究』に興味があったら快く迎え入れると言ってくれたのだ。


 そこで、合点がいった。


 もしかして、ティガ先生は俺を『魔素研究室』に誘ってくれている?

 さらには、『卒業論文』の事まで面倒を見ようとしてくれているのか?


 だとしたら。


 あまりにも不器用すぎないか?

 この人。


 「ではな」


 ティガ先生が部屋を後にしようとした。


 「あ! ちょっ! ティガ先生! ありがとうございます! すごくうれしいです!」


 ティガ先生が足を止めた。


 「色々片付いたら、『魔素研究室』に行っても良いですか?」


 振り返らない。

 が。


 「・・・勝手にしろ」


 と、それだけ答えたくれた。

 ティガ先生はそのまま部屋を後にした。


 びっくりした。

 まさか、ティガ先生の方から声をかけてくれるとは思ってなかった。


 たしかに、『魔素研究』を含めた『魔術』に関する授業は楽しいし、卒業論文に書くなら『魔術』に関する事かな?とは考えていた。

 良い機会だし、色々片付いたら『魔素研究室』に行ってみる事にしよう。

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