『体育祭1年生編』 『体育祭開催』
レイ暦279年。
6月28日。
とうとうやってきた大きな行事。
『メディオ学院』『体育祭』。
その1日目が幕を上げていた。
パンッという大きな音。
審判役の生徒が上に放った『基本魔術』の『火球』がはじけるのが合図だ。
その合図とともに走り出したのは深紅。
俺の『幼馴染み』。
『サティス・グラナーテ』。
爆発的な加速。
普段、『剣術科』の生徒が使用している『剣術実践場』。
前世で言うグラウンドの様な場所で開催されているのは短距離走である。
100メートルと言うこの世界では短すぎる距離。
彼女の加速は爆風を引き起こす。
その爆風は彼女を応援する俺とファセールを含めた観客に襲い掛かった。
3秒。
これだけの時間で彼女は100メートルを駆け抜けた。
息ひとつ切らしていない彼女の様子から、本気では無かったことが伺えた。
「おぉおおお!!」
と歓声があがり、サティスは答えるように手を振っていた。
2秒ほど遅れてゴールする他の『剣術科』の生徒。
15秒かけてゴールする『魔術科』の生徒。
差が凄かった。
全員がゴールし、自分の番が終わったサティスはこちらに駆けてきた。
「見てたかしら!?」
観客の中から俺達を見つけて、嬉しそうに駆けてきた彼女がとても可愛かった。
「見てたよ! 凄いねサティスは! ボク、あんなに速く走れないよ!」
ファセールがサティスとハイタッチしながら2人でキャッキャとはしゃいでいた。
「ちょっと本気出したもの! でも、ファセールだってさっき1位だったじゃない!」
「あれはたまたまだよ!」
そう、ファセールはサティスより先に走ったのだが、『剣術科』相手に勝ち星を挙げていたのだ。
「いや、2人ともすごいよ!」
俺は2人を誉める。
前世で言えば2人とも世界記録だ。
「ふふん! 2着のフェリスとは違うのだよ?」
ファセールが珍しくどや顔だった。
調子乗ってるファセールも可愛い。
「でも惜しかったじゃない!」
サティスが優しくフォローしてくれる。
そう、惜しかったのだ。
短距離走。
本気で走ったのだが、5秒かかった。
ティンと一緒に走る事になった為、なおさら負けられないと本気を出したのだが・・・。
あいつ・・・足が思っていた以上に早かったぞ。
1秒差で負けてしまったのだ。
「ちょっ、長距離なら負けねぇから!」
俺は意地を張る。
「ふふっ! 頑張って! フェリスなら長距離は負けないわ! あ! アミが走るわよ!」
サティスが俺を応援したり、次に走る友達を見て手を振りながら応援したり、忙しそうに、しかし、楽しそうに動き回っている。
ファセールがその隣で一緒に手を振って楽しそうにしている。
そんな2人の様子が微笑ましくて、この学院に来て良かったと思った。
俺も楽しまないとな!
俺も2人に並ぶ。
3人でアミを応援すると、姫カットのアミが汗を飛ばしながら照れていた。
可愛い反応である。
さて、結果は。
見事に一着だった。
サティスと大して変わらない時間でゴールしていた。
やっぱり身体能力高いよな・・・?
ちょっと後に走ったミーゴも同じ結果だった。