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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第一部 乳幼児期 『5歳編』
36/939

5歳 3

 あれから1か月。

 4月になり、暖かくなってきた今日この頃。

 雪はすっかり解け切り、空は快晴。

 体を動かすにはもってこいな、素晴らしい日。

 そんな日なのに俺は、『喫茶店トールトロス』でプランターおじさんに借りた本をカフェー片手に読んでいた。

 ・・・あぁ、体を動かしたい。

 不安だ。

 体力が落ちてしまっているんじゃないか・・・。

 いや、落ちているだろう。

 不安を紛らせるように読み進めていた本に影が落ちた。

 顔を上げる。

 「フェリスくん、最近1人?サティスちゃんや他のアルコメンバーは?」

 そう言って話しかけてきたのは、ダークブラウンの髪を緑のリボンで一本に纏めている、笑顔が素敵な女性。

 可愛いウェイターのソシエゴだ。

 プランターおじさんのお孫さんのセミリャさんと婚約し、2か月後には式を挙げる予定である。

 村人全員で盛大にお祝いしたい。

 俺たち『アルコ・イーリス』も協力してお祝いしたいと話をしている。

 渡すものも決まっていて、後はそれを回収するのみ。

 なんと言ったってソシエゴだ。

 あれだけ世話になった人だ。

 サティスなんて実の姉のように慕っている。

 絶対に幸せになって欲しい。

 「1人ですよ。ソシエゴこそ、最愛のセミリャは今日来ないんですか?」

 時間を持て余していた俺は調子に乗る。

 彼女は最近、あか抜けたというのだろうか。

 可愛いに加えて、美しさのようなものも醸し出していた。

 大人の余裕と言うやつだろう。

 そんな彼女が照れているところが見たい。

 セミリャの事を話題に出せばノロケか照れ顔が拝めるかもと思ったのだ。

 「・・・うーん。多分今日は来ないかなぁ。最近また忙しそうだったし」

 ちょっと寂しそうに窓の外を見る。

 なんと。

 我らがソシエゴを寂しがらせていると!?

 許せんやつめ!

 「じゃあ俺と一緒にカフェーでもどう?」

 俺の調子に乗った物言いに目をぱちくりさせて笑う。

 「あははっ、フェリス君可愛い。でも、ま、遠慮しとくわ。忙しいし」

 と周りの無人を見る。

 この万年日中がらがら喫茶が?と目で語り合って2人で笑う。

 ソシエゴと話すのは楽しい。

 ただでさえ長い付き合いだ。

 それに加えてソシエゴは結構社交的で沢山話しかけてくれる。

 気心が知れた仲と言うものだろう。

 それは他のアルコメンバーも同様で、よく相談をしに行ったりしているらしい。

 俺は、サティスやソシエゴ、アルコメンバー等との関わりで、人との会話に前世ほどの怖さを感じなくなっていた。

 今では先ほどのように冗談も言い合える。

 落ち着いたところで俺がカフェーを一口すする。

 砂糖は3つ。

 そんな俺に問いが投げかけられる。

 「今日は何読んでるの?」

 俺は指をさされた本を閉じて、表紙を見せる。

 「今日は歴史の本です」

 「げ、なんでまたそんな?」

 苦そうな顔をする。

 いや、まぁ、俺もそうだったのだか・・・。

 そんな顔しなくても良いじゃないか。

 「ちょっと気になる事があって」

 『神樹』を狙う『魔族』の目的とかな。

 「そっか・・・。すごいね。でも特訓は良いの?最近毎日来ているけど。朝も走ってないでしょ?最近サティスちゃん1人・・・あ、もしかして喧嘩でもした?」

 にやっとするソシエゴさん。

 あれから、サティスとはほとんど会えていない。

 1日1回、水浴びに帰ってくるときにボロボロになった姿を見るだけだ。

 何もできないのが悔やまれる。

 でも信じるしかない・・・。

 「あ、もしかして図星?だめだぞ~。ちゃんと好きって言わなきゃ」

 「・・・は?」

 俺は文脈の無さに意味も分からず首を傾げた。

 「あれ?恋愛的なそれではなく?」

 「それは無いですけど?」

 俺とサティスは家族で、一心同体の同士だ。

 それは無い。

 「あれ~。最近この手の相談多かったから勘違いしちゃったよ~」

 言いながら頬を掻く。

 照れているのか耳まで赤くなっていて可愛かった。

 良いもの見れた。

 結果オーライだ。

 ありがとうございます。

 「なんで手を合わせてるのよ!?それどういう意味!?」

 「いえ、お構いなく」

 俺の返答にため息を1つ。

 心配して損しちゃったと言い残してカウンターに戻って行った。

 心配してくれたのか。

 やはり、優しい人だ。

 そんなソシエゴを手に入れたセミリャ、よくやったものだ。

 きっと俺の知れない努力があったに違いない。

 と、後ろ姿を見ながらカフェーをもう一口飲んだ後、本を開きなおした。


『歴史書 筆者:メンティラ・イストリア』

 以下、抜粋。※レイ暦260年12月現在。


 約2億年前

  『天魔族』から、悪い心を持った一団が世界を思い通りにしようと大反逆を起こした。

  『第一次天魔戦争』である。

 

 約1億8千万年前

  約2千年続いた戦争が終結。

  大反逆を起こした一団を『魔族』として小さな大陸に追いやる。

  『魔族』以外の『天魔族』を『天族』とした。


 約1億5千万年前

  唐突に『魔獣』が出現。

  『魔族』が作った物だった。

 

 約6千5百万年前

  溢れかえった『魔獣』を『魔族領』に押し戻すべく戦争が始まった。

  『第二次天魔戦争』である。

 

 約6千万年前

  約5百年続いた戦争が終結。

  『魔族』にもう一つの大陸を半分奪われる敗戦だった。

 

 約1万2千年前

  『人族』が出現。

  『魔族』の奴隷として扱われる。

 

 約1万年前

  『魔族』から海の向こうへ捨てられた『獣人族』が結託。

  『獣人族国』『ドラドアマリージョ王国』建国。

 

 約3百年前

  最初の長耳族が生まれるまでを綴った小説『天人青春』『筆者:エスクエラ・エテルノ・ディレクトール』が流行。

  長耳族の人口が爆発的に増える。


 260年前(レイ暦元年)

  初代レイ王が『長耳族』、『獣人族』の一部と結託を結ぶ。

  同年、魔族への革命を成功させる。

  『ディナスティーア王国』建国。

  人族はレイ暦と言う暦を用いるように成る。

 

 60年前(レイ暦200年)

  人族、天族の協力により勇者『フェリス』召喚。

  同じ名前が流行る。

 

 50年前(レイ暦210年)

  勇者パーティーが魔王『(始めて見る字で読めない)』を不完全ながらも封印する。

 

 約16年前(レイ暦244年)

  王国内にて、異世界召喚研究中の大事故『異世界召喚爆発』にて数百人が亡くなる。

  勇者が自責を示し、国外へ消える。

  第二の勇者召喚を目指して異世界召喚研究再開。

 

 現在レイ暦260年

  4月 魔王復活。

     勇者、姿を現し、魔王と再戦。深手を負わせるも惜敗。勇者死亡。

     勇者パーティーも共に死亡。

     獣人領内最南端にて『ダンジョン』が作られる。

     魔王軍、人族領内へ攻め入る。

     『人魔戦争』である。

  5月 魔王からレイ王へ冷戦を持ちかける。

     条件は天魔族との会談の場を設ける事。

     レイ王了承。冷戦状態へ。

 ※12月現在、いまだその場は設けられていない。痺れを切らした魔王軍がどう動くか。

 ※協力・・・『神樹教』『教祖』『ナランハ・イグレシア』

 

 本から顔を上げる。

 気になったところを呼んだだけだから、全てを知ったわけではない。

 今の『魔族』の目的は『天魔族との会談』。

 何のための会談なんだろう?

 そしてこの世界での俺の父は、痺れを切らした魔王軍のちょっかいに巻き込まれたのか?

 結局『神樹』を狙う意味は分からず、違う目的を見つけてしまい、謎が増えただけだった。

 まぁ、悪い心を持った一団ってくらいだから良い事は言わないだろうな。

 そう言えば確か『勇者召喚』の研究中っていつぞやボカが言ってたよな。

 という事は、今の状態を整理すると。


 この冷戦状態のまま、2人目の勇者召喚まで持ちこたえたい王国側と、満足に攻める事の出来ない魔王軍側って状態か。


 あれ、なかなか危険な状態なんじゃないか?これ。

 この間の地図を思い出す。

 魔族領って確か壁1つ挟んだだけのすぐ向こう側だったはず。

 プランター村は壁からすぐの所にある。

 『魔族』が『神樹』を欲する大きな理由があるとすれば、冷戦中である王国をわざわざ攻める利点も無いし、他の大陸は『天族』や『獣人族』が居て思うように進めない。

 もし魔王軍が今動き出して、何もない方の壁をぶち壊して進んだりしたら・・・。

 怖くなって本を閉じた。

 強くならなきゃ。

 皆を守れるくらい。


 最低でもサティスを守れるくらいには。


 鍛えなきゃ・・・。

 あ、今運動できないんだった・・・。

 うーん・・・落ち着かない。

 と頭を抱えた時だった。

 

 ズズゥウウンッ


 地響きがした。

 まさかと怖くなった俺は、なんの音か不思議そうにしているソシエゴさんにお代を渡し、カバンを下げて喫茶店を出た。

 何の音だ!?

 まさか魔王軍!?

 サティスは!?

 他の皆は!?


 「・・・はぁ?」


 最近、少しだけ裕福になったこの村に移住者が増えた。

 『人族』がほとんどだが、1人だけ『魔族』の女の人がいた。

 『喫茶店』の前で何人かの移住者たちが指さす先。

 壁の向こう。

 遠く、かすむ壁。

 地図上では近いが、実際距離はかなりある。

 そんな場所に屹立する壁。


 その中心から顔を出す何かがいた。


 俺は目を凝らす。

 同時。


 ドドドドドドォオオオッ。


 轟音。

 地響き。

 砂煙。


 「おいおいおい!」

 「やばいんじゃねぇか!?」

 

 俺は生唾を飲む。


 ・・・壁が壊れた?


 煙の中から巨大な何かが地響きと共に現れる。


 首の長い竜のような動物。

 漆黒の身体。

 『魔獣』。

 キリン?

 いや、頭にトサカ・・・?

 まさか、あれは・・・!!


 俺は目を疑う。

 擦る。

 しかし、現実。


 「・・・ブラキオサウルス!?」


 紛れもなく前世で憧れた、あの恐竜。

 竜盤目ブラキオサウルス科『ブラキオサウルス』だった。

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