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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第二部 少年期 前編 『銘々某日編』
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『フェリス編』 2

 午前6時半。


 俺とサティスは『東区』の『北門』でシオンと別れた後、帰宅する。


 汗をかいた体を水浴びで清めるのだが、サティスに先を譲り、俺はもうひと汗かくべく道場へ向かう。

 道場につき、中に入るとコルザとラーファガが『剣舞術』の特訓をしていた。 ラーファガはいつのまにか、『剣舞術』を全て修めていた。


 「お、帰ってきたのかい?」


 コルザが俺を見て笑う。

 着替えているのを見るに、既に水浴びも終えているのだろう。

 

 「あ! フェリス様! おはようございます!」


 ラーファガがニッコリ笑顔で黄緑のふんわりツインテールを揺らして挨拶をする。

 

 「おはようラーファガ。 今日も頑張ってるな」

 

 「はい! 今日はコルザ様と一緒にお仕事をする予定でしたので。 その前に特訓に付き合っていただいてました!」


 彼女は、来年4月から俺とサティス、コルザの万事屋パーティー『ミエンブロ』が旅に出るのに変わり、コラソンとカルマと一緒に新生『ミエンブロ』として街を守る事になる。

 今日はコルザと仕事に行き、色々教えて貰うのだろう。

 

 「頑張れよ!」

 

 「はい! ・・・あ。 そうだ! フェリスさん。 今時間大丈夫ですか?」


 「ん? いいけど、どうしたんだ?」


 ラーファガが俺に時間があるか聞くなんて珍しい。


 「手合わせ。 お願いしたかったです! えと、『剣舞術』のみで!」


 ・・・おぉう。

 一応、忘れない程度に型を練習してはいるが。


 「俺で良いのか? サティスとかコルザとかコラソンとかの方が学びは多いと思うぞ?」


 俺の言葉を聞いてラーファガが一度コルザを見る。


 「あぁ、フェリス。 君がちょうど良いんだ。 君は真っ当な『剣舞術』の使用者だ。 僕や母さん、サティスは癖が強いんだ。 僕は煽りすぎるし、サティスは突っ込みすぎる。 母さんはレベルが違いすぎて気付いたら負けてる。 でも、フェリスは『剣舞術』だけなら真面目そのものだ。 上手に舞うけど癖が無い。 まぁ、突出した点が無いとも言うけど、それは十分凄い事だよ。 技を綺麗なままで覚えているんだから」


 コルザに褒められてちょっと照れる。


 「なんだい? 変な顔をして」


 「変な顔じゃない!」


 「ふん」


 嘲笑。

 なんか久しぶりで腹が立つ。


 「くそ。まぁいい、分かったよ。 ラーファガ、やろうか」


 「はい! お願いします!」

 

 ○


 午前6時45分。


 道場内で俺とラーファガが立ち会う。

 まずは握手。

 そして離れて木の剣を構える。

 やる事は簡単。

 いつも通り。

 よく見ていなして躱して当てる。


 「準備は良いね? 致命傷は避けてくれ。 後は僕の判断で止めるよ」


 「はい! お願いします!」


 言いながら腰を低くし、剣を両手で構えるラーファガ。

 彼女の独特のスタイルだ。

 ・・・癖と言うならラーファガが一番強いと思うが、まぁ、いい。

 せっかく相手に選んでくれたんだ。 全力で相手しよう。


 「こちらこそよろしく頼む!」


 「うん。 それでは」


 コルザが腕を上げて。


 「はじめ!!」


 下げたと同時、ラーファガがバク転で距離を取り、間髪入れずにリズムを取りながらステップを踏んだ。 それを確認したと思ったらリズムを突発的に上げて突っ込んできた。


 「『剣舞術』『クラコヴィアク』!」


 早いっ!?

 右手に握る剣を使用して放たれるのは、修行明けに再会した時のサティスに匹敵するレベルの速度とキレを持った鋭い刺突。

 俺は急いでリズムを取り、迫る木剣に自身の剣を添わせる。


 「『剣舞術』『アルマンド』!」


 そのまま体ごと縦回転し、剣の軌道を縦方向にいなす。

 重いがいなせないわけでは無い。 これで隙を作って、一発入れる。

 と思ったが、あれ?  居ない?

 ラーファガはいなされた勢いを利用して後ろにバク転していた。


 「マジか」


 呟く、同時、ラーファガが地に足が付いたと同時に跳ねて優雅に舞う。

 恐ろしく動きが軽い。

 とんとん、とリズムを取りながらとーんと飛んでくる。


 「『剣舞術』『ガヴォット』!」


 右手の剣による縦斬り。

 剣で弾くとまた後ろに戻り、とーんと飛んでくる。


 「くっ!」


 しつこい斬撃をいなしつつ軽いステップを踏み、わざと隙を作る。


 「そこです!」


 強めの一撃が迫る。


 ふむ。

 実戦経験が少ないか。


 「『剣舞術』『パスピエ』」


 好きを作り、引っかかった相手の隙に強めの一撃を入れる『型』。 それを、使用する。

ラーファガの強めの一撃を体を逸らせて躱し、そのままカウンターの横切りを放った。


 そのカウンターは見事にラーファガの左横腹を捕らえた。

 かに思えた。


 「『剣舞術』『アルマンド』」


 左手の剣で盾にいなされ、剣を床に向けられる。


 「なっ!?」


 「その手法はコルザさんに何度も見せられました!」


 そういうラーファガと目が合う。


 獰猛な笑み。


 どこかで見たな!? そんな笑い方する『幼馴染み』!


 「くっ! やるな!」


 俺は左足でラーファガを蹴る。


 「え!? 蹴り!?」


 剣しか使わないと思っていたのだろう、ラーファガが驚いた顔をしていた。


 「あぐっ!?」


 左の脇腹に蹴りを入れ、吹っ飛ばす。

ラーファガはそのまま横に転がり、勢いを利用して立ち上がる。

体制を整えるラーファガ。 わき腹が痛むのか左手で押さえている。


 「ひ、卑怯ですよ! 『剣舞術』だけだって言ったじゃないですか!?」


 「え? 今の無し?」


 俺はコルザに聞く。

 首を振るコルザ。


 「まぁ、卑怯かもしれないけど、今のはただの蹴りだ。 『剣術』でも『魔術』でもない。 ラーファガの油断だね」


 「むぅ・・・。 悔しいですけど、コルザ様が言うなら仕方ありません」


 顔を俯かせるラーファガ。

・・・怒らせたか?


 「ふふっ」


 と、俺の杞憂だったらしい。

ラーファガが笑った。

 バッと顔を上げる。


 「じゃあ、続けましょう! 受けてみて下さい、私の全力!」


 獰猛な笑み。

 さっきも見たが、あの笑い方は・・・。


 コルザをちらっと見る。

 ニヤニヤしていた。


 あいつ、これを見せたかったのか!?


 「『剣舞術』『修型』」


 やばい、くる!

 あの、右手の剣を上段に、左手の剣を下段に構える独特な構え。

 ラーファガだけの特別な型。


 「『剣舞術』『修型』」


 俺は、対応するため剣を横で構える。


 「『剣舞術』『修型』」


 ダンッと音をたててラーファガが突っ込んできた。

 

 「『タンゴ』『ボレロ』!!」


 上段から迫り来る『タンゴ』による一撃。


 俺はそれに合わせて体を回転させる。

 回転のこぎりのように剣を回す。


 「『ワルツ』!!」


 上段からの切断を受けてはじく。

 ラーファガは、弾かれた剣はそのままに左手で再度迫った回転切りを受け流し、俺の回転の勢いを利用した『ボレロ』のカウンターによる一撃で俺の首を狙う。


 だが、遅い。


 まだ俺の回転速度を越せていない。

 俺はそのカウンターも回転切りではじく。


 諦めないラーファガの右手上段切り。

 それをはじく。

 続く斬撃。

 はじき続ける。


 互いに隙が出来るまでの切り合い。

 すぐに体力の差が出た。


 「ここ!」


 一瞬の隙。

 ラーファガの体力が切れかけたことによる動きの鈍化。

 俺はそれを逃さず、鳩尾に回転切りを入れた。


 「うぐっ! げほげほっ!」


 鳩尾に回転切りを受けて膝をついたラーファガ。


 「そこまで!!」


 それを見たコルザが試合を止めた。


 「すまない! やりすぎた!」


 俺は慌てる。

 あれくらいやらないと負けていたとはいえ、少しやりすぎた。


 「い、いえ、大丈夫です! はぁ、はぁ、やっぱり強いです! 楽しかったです! ありがとうございました!」


 コルザに支えられて立ち上がったラーファガが握手を求めてきた。

 

 強くなったんだな・・・。

 本当に。

 

 俺はラーファガの2人の兄を思い出す。

 お前たちの守った少女はこんなに強くなったぞ。

 

 「あぁ、俺も楽しかったよ。 ラーファガ。 またやろう!」

 

 「はぁ、はぁ、・・・はい!」

 

 息を整えたラーファガが良い笑顔で笑っていた。

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