シオン 1
私は、8歳の少年に手を引かれながら階段を下っていた。
彼は72歳のお爺さんだった。
これからも今までと同じ8歳の少年として関わって欲しいとの事だったからこれからの関わり方も変わらないとは思う。
まぁ、驚いたが、それよりも私はそれ以上の事が起こってしまった事に驚いていた。
彼は、私の心を軽くしてくれたのだ。
勿論私がしたことは到底許される事ではない。
本来はこんな幸福な事はあってはならないのだ。
それなのにこの人は私の心を救ってくれた。
28年『神樹』に祈り続けていたからだろうか。
いや、彼はこの世界の人では無い。
彼を呼んだのは間違いなく私。
『神樹』ではない。
本当にたまたま私が『召喚』してしまった人だ。
だから、間違いなく『神樹』は関係ない。
彼は、私の『救世主』だ。
頬が熱くなる。
彼は私を認めてくれる。
彼は私を理解してくれる。
彼は私の味方でいてくれる。
その事実が嫌でも私の心を救う。
彼の為に生きよう。
私に幸せな気持ちを運んできてくれたこの『救世主』の為に生きよう。
勿論。 『贖罪』はきちんと終わらせる。
『贖罪』を終わらせたら、私の全てを彼にあげよう。
私に彼の為に何が出来るかは分からない。
分からないけれど、今は彼の為に出来る事を何でもやりたい。
今までは彼を利用していた。
『異世界召喚』の為に『空間魔術』が必要だ。
その為だけに会っていた。
それを止めよう。
『救世主』を利用するなんてとんでもない。
これからは良き隣人として彼を支えたい。
友なんておこがましい。
私は彼の為に身を粉にしよう。
彼が振り向いた。
彼の幼馴染と友人が階段下に居た。
彼の大切な人を大切にしよう。
髪の色なんてどうでも良い。
救ってくれたのは彼だ。
これからは彼を信じる。
彼の大切なものは私にとっても大切なものだ。
振り向いた彼が私に笑顔を向ける。
心臓が跳ねた。
あぁ・・・。
この気持ちは懐かしい。