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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第二部 少年期 前編 『反逆編』
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『反逆』

 フェリスの援護を受けながら、なんとか部屋に入る事ができた。

 後ろ。 部屋の扉が閉まる。

 戦闘音が聞こえ始めた。


 フェリスとサティスが戦っているんだ。 早くみんなを助けて2人の元に戻らないと。

 

 「ま、そう上手くはいかねぇよな?」


 俺はため息混じりに言いながら、背負っているコルザから貰った長剣の柄を掴む。

 

 「おぉ、ガキ。 結局逃げやがったな? 頭の悪いガキだぜ。 黙ってれば幸せになれたものを!」


 あの大柄な男。

 彼の奥には2つの鉄格子。


 右。 目隠しされたアーラ。 顔を真っ赤に腫れさせているハール。

 左。 手足を縛られ、意識のない妹。


 そこまでの間に山のような大男。

 右手に巨大なこん棒。

 ダークブラウンの無造作な短髪を見るに『人族』。


 「うるせぇ! それの答えは言ったはずだぜ!? そこに『自由』が無ぇってな!」


 俺は叫びながら駆けだす。

 先手必勝。

 まずはハールとアーラを助ける。

 ふたりが居ればこいつに勝てる。

 大男に向けて剣を抜く。


 「『抜剣術』『煌』!!」


 松明の明かりを刃に反射させて輝かせる。

 目眩ましを兼ねた抜剣。 長剣を一気に大男の足に振る。


 「あまい!!」


 言いながら、大男はこん棒を俺の剣筋の先。 攻撃を防ぐように地面に突き刺すように振り下ろす。

 壁のように立てられたこん棒によって弾かれる長剣。

 攻撃の反動で長剣が反対に弾かれ、体勢が崩れてよろめく。

 大男はその隙を見逃さない。


 「ふんっ!」


 腹に大男の蹴りがめり込んだ。

 

 「がぁっ!!」

 

 口から血を吹き出す。 めり込んだ蹴りは、俺をそのまま吹き飛ばす。 飛んでいく先は硬い鉄格子。

 ガツンッと後頭部をぶつける。

 目の前が眩んで倒れ込む。


 後ろは牢屋。

 好都合ではあるが、ダメージがデカすぎた。

 

 「ぐぅっ」


 呻き、血を口から吐き捨てつつ立ち上がろうとする。


 「その声! ティンか!?」

 

 そんな俺に、アーラから声がかかった。

 

 「あぁ、助けに来た!」


 体制を何とか立て直し、長剣を突き刺しながら立ち上がる。

 くそ、痛い。

 腹の中で骨が折れているのか、息をする度に激痛が走る。


 「無茶だ! 相手は『人族』とはいえ、大人だ! 同じ子どもの『ミエンブロ』とはわけが違う! ひとりで来るなんてどうかしてる!」


 そうだ。

 訳が違うんだ。

 相手は大人だ。

 そう。


 「アーラ。 あいつは『ただの大人』だ」


 アーラ。 良く考えてみろ。

 ただの大人とミエンブロ。

 どっちが強い。


 ハッとするアーラ。


 そうだ。

 

 「『ミエンブロ』の方が強い!」


 「そうだ・・・。 そうだった。 『ミエンブロ』の方がずっと強かった。」


 「アーラ、ハールは生きてるか」


 「おー・・・。 生きてるよ」


 俺の声が聞こえていたのだろう、ハールの声も聞こえた。

 良かった、ふたりとも生きているらしい。


 「だいたいな。 俺はひとりじゃねえぞ」


 後ろのふたりに声をかける。


 「ふたりとも戦えるか?」


 俺の言いたいことが伝わったのだろう。

 嬉しそうな顔になっていた。


 あぁ。 そうだ。

 俺はひとりじゃない。



 お前らがいる。



 「「もちろん!」」


 「3人で倒すぞ! 『抜剣術』『伊吹』!」


 俺は横なぎに抜剣し、勢いと共に格子をぶった切った。

 勢いのあまり、爆風が吹く。


 「むっ。 鉄格子をぶったぎるとはな。 力が思ったよりあるらしい」

 

 大男は、こん棒を左手に持ち換えた。

 右手はかすかに震えている。

 先ほどの俺の『煌』を受け止めた際に痺れたのだろう。 そうだ。 俺の『煌』は、普通受け止めたら痺れるくらいの威力はあるはずなのだ。


 やっぱり、『ミエンブロ』の方が強い。

 あいつは、『ミエンブロ』の足元にすら及ばない。


 先ほどの『伊吹』による爆風で土埃が舞う。 それは、俺たちの姿を隠す。


 「『転位』!」


 アーラの『魔術』使用。 これにより、ふたりの手枷と足枷がとれ、アーラの目隠しもどこかに行く。 自由になった2人が立ち上がって俺の両隣にたった。


 「剣が1本だ。 ハール、アーラ。 訓練の時と同じ。 剣が1本状態の連携で行くぞ」


 「おー、久しぶりー。 りょーかい!」

 「俺が大変なんだよなぁ。 でも、ま。 分かったよ」


 ハールとアーラが了承する。

 3人並ぶ。


 俺達は弱い。

 だから3人で力を合わせてきた。


 3人なら、あんな『ただの大人』怖くない!


 もう一度『伊吹』を使用する。

 爆風が土埃を飛ばす。

 大男の姿が露わになる。


 「だるいな・・・。 子供は黙って大人のいう事を聞いてろ!」



 「うるせぇって何回言わせんだ! そこに『自由』は無ぇ! これは言わば、俺たちから『自由』を奪っていく、お前らみたいな身勝手な『大人』への『反逆』だ!」



 3人構える。

 ふたりに声をかける。



 「行くぞ『レべリオン』! 反逆の時だ!!!」



 「「おう!!」」


 「アーラ! ついてこい!」

 「了解!」


 俺は隣のアーラと共に駆け出す。

 途中で左右に別れ、両方向から大男に迫る。

 背の長剣を、体を回転させながら一気に抜き、自由に切り込む。


 「『抜剣術』『柳苑』!」


 自分でも突発的に思った所に切り込むため、剣筋を読ませない。

 この一撃で、いまだ痺れている右腕を跳ねてやる!


 「ぬん!」


 大男は、防げないと見るや右手で俺の剣を受けた。

 肉を切り裂く感覚。 しかし、途中で骨に止められてしまう。 結果として切断までには至らなかった。


 「くそ! 本当に『人族』か!?」


 俺は大男の頑丈さに悪態をつきながら剣を引き抜こうとする。 しかし、大男の筋肉が収縮された事によって剣が固定され、引き抜けなかった。


 「マジかよ!?」


 予想外の動きに動きが止まる。 その隙に、大男の左手に握られたこん棒が迫り来る。


 「アーラ!」


 ハーラが、アーラの名前を叫びながら俺とこん棒の間に割り込む。


 「任せろ!『転位』!」


 後ろで控えていたアーラの『魔術』発動。 大男の右腕に刺さった剣が突然消えて、ハールの手に渡った。

 何回も練習していたのだ。 アーラの目が見えていなくても関係ない。

 大男の傷から血が吹き出す。


 「ぬぅ!?」


 一瞬、顔をしかめたが、大男の攻撃は止んでいない。

 こん棒はハールに真っ直ぐ向かっていく。 


 「『大剣術』『吸収障壁』!」


 アーラは剣でこん棒を捕らえ、体を回転させつついなし、真下へと軌道をずらす。

 ガンッと大きな音がし、こん棒が地面に叩きつけられた。 衝撃でひびが入る。


 「もう一撃! 『分断障壁』!」


 ハーラは叫びながら、本来は向かって来た物を叩き斬って無力化するその技を、こん棒に剣を叩きつけるという応用で放つ。

 バキャッと音をたてて砕け散った。

 それを確認した、長髪のハーラはにやっと笑う。


 「なぁ!? くそっ!!」

 

 大男が使い物にならなくなったこん棒から手を離し、今度はその左手をきつく握り、殴り掛かってきた。

 俺たちの想像以上の強さに焦っているのだろう、隙だらけだ。


 「『基本魔術』『火』 『火球』! 『転位』!」


 アーラはその隙を見逃さない。 大男の左腕に火の玉が『転位』で現れ、燃やした。

 

 「んがぁあああああ!!」

 

 「くっ。 頭を外した!」


 アーラが舌打ちをしながら悔しそうに叫ぶが、問題ない。 大男はあまりの熱さに悲鳴を上げて狼狽えているのだから。


 「決めるぞ! 剣を貸せ!」

 

 「オッケー!」

 

 「間隔、短いって! くそ! はぁはぁ・・・『転位』!」

 

 ハールが剣を投げる。

 アーラが息を切らしながら俺のいつもの位置にある鞘に剣を納める。

 放つは今の俺の全力の一撃!

 踏み込み、肉薄。



 「『抜剣術』『無限永華』!!」



 息が続く限りの連続斬り。 剣が通った後は華を形作る。


 「あぁああああああ!!!」

 「ぬがぁあああああ!!???」


 大声を上げながら、気合いで何度も大男の身体に花を描く。

 そして。


 「らぁあ!!」


 最後の一撃。

 切り上げ。

 振り抜いて大男を後ろにする。


 瞬間。 飛び出す鮮血が花弁のように舞った。


 後ろで膝をついて倒れ込む大男。


 俺達は大男に勝った。

 そう。 勝ったんだ。


 両隣に仲間が来た。

 

 「しゃあ!」

 

 ハールが俺の背中を叩いた。


 「俺達の勝利だ!」


 アーラも鼻血を拭きながら肩を叩いた。


 「はっ! 『レべリオン』の相手じゃねぇぜ!」


 俺も嬉しい。

 っと、喜んでいる場合じゃない。


 俺は気を取り直して妹の元に向かった。

 格子を壊して妹を背負い、来た道を戻る。


 「フェリス! サティス! 全員助けた! 今助太刀・・・する・・・」


 元の部屋に戻った。

 部屋に繋がる扉を開けると、『天族』と互角に戦っているふたりが居た。

 


 戦いの次元が違った。

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