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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第二部 少年期 前編 『反逆編』
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『作家ギルド』

 最後に俺達は6階に来た。

 ギルドフロア。

 その名の通り、様々なギルドがあるフロアだ。

 俺はその中で気になっていたギルドに来た。


 『作家ギルド』


 「うげぇ・・・本ばっかりじゃない・・・」


 サティスがおえっとした顔をする。

 その顔止めなさいって・・・。


 ここに来るたびにずっと気になっていたのだ。

 どんなものか見よう見ようとしているうちに1年経ってしまった。

 紙だけでもあると助かるんだが・・・。


 「俺はちょっと中を見るから別の所を見ていて良いぞ」


 「そうするわ・・・。 ファセール! 行きましょう!」


 「え!? あ、うん!」


 ファセールは一瞬残念そうな顔をした後サティスについて行った。

 ファセールは小説を読むことを楽しみにしている。 中を見たかったのだろう。

 今度、2人でここに来よう。

 と、一人思い、中へと入った。


 中は懐かしき書店だった。

 本棚に色んな本が収められている、

 前世と違うのは全てが手書きであり、漫画や雑誌と言ったものはない。 あるのは小説と実用書だけである事。 そして何より。


 「・・・高い」


 やはりボカは金を持っている。

 書斎をもっているのだから。

 俺が呟いて驚愕していた。


 「坊主、年は?」


 低い声が聞こえた。

 俺は声のした方に顔を向ける。

 そこに居たのはカウンターに座る蜜柑色の髪をオールバックにした、若いが貫録のある男性だった。


 「えと、8歳です」


 「俺の息子と大して変わらんな」


 言いながらその男性は俺の前に立つ。

 背が高い。

 大男だ。


 「文字は読めるのか?」


 「一応、人並みには。 ところであなたは?」


 俺の問いに驚いた顔をした後、笑顔になる。


 「あぁ、まだ名乗ってなかったな。 俺の名前は『グラディトゥ・メンテ』。 この街の『作家ギルド』で『支部長』をしている」


 「どうも。初めまして。 『ミエンブロ』の『フェリス・サード・エレヒール』です。 よろしくお願いします」


 ぺこりと頭を下げる。


 「ああ、君がボカさん所のパーティーにいる子か。 よろしく」


 言いながら握手を求めてくる。

 俺はそれに応じる。


 「はい! それで、えと。 なにか用ですか?」


 「うん。 いや、なに、少年が本を見に来るのは珍しいなと思ってな。 ちょっと声を掛けて見たんだ。 どんな本が欲しい?」


 親切で声を掛けてくれたのか。

 俺は警戒を解く。


 「そうですね、小説かな?」


 「かなとは?」


 「いや、本当は『漫画』が欲しかったんですけど、置いてないみたいですね」


 「まんが?」


 俺の言葉に首を傾げる。


 そうか・・・。

 やっぱりこの世界に漫画は無いのか。


 「それはどんな本だ?」


 言われて俺は鞄から書きかけのネームを取り出す。

 俺は漫画を出すと言う夢を諦めていなかったのだ。

 

 「こんな感じで、絵に言葉を話させて物語を進めていくんです」


 「ほおう・・・? 面白いなこれは。 なるほど、確かに物語だ。 話の出来はともかく」


 ぐさっ!

 お、おう。

 そりゃそうだろうよ・・・。

 こんな新人作家の漫画なんて・・・。

 くっ! めげるな俺! 努力を忘れるんじゃない!


 「続きは?」


 「まだ書いてません」


 「・・・ん? これはフェリス君が書いたのか?」

 

 「え?」

 

 「ほほおう? おい、君、『作家ギルド』に興味は無いかい?」

 

 ガシッと両肩を掴まれる。

 

 「うえ!?」

 

 「この技法は初めてだ! 頼む! 出来上がったらギルドに売ってくれ! 言い値で買う! 技法を広めたい!」

 

 「いや、売るのは構いませんが、ギルドには入りませんよ!」

 

 気にはなるが、今は仕事と特訓で忙しい。

 『冒険者ギルド』もある。

 ブンブンと頭を振られてくらくらする。

 

 「むぅ・・・そうか・・・分かった。 しかし・・・うーん」

 

 俺から手を放して考え込むメンテさん。

 

 「ど、どうしました?」

 

 俺は服を整えながら聞く。

 

 「いや、ギルドメンバー以外から技術を買うのは少し気が引けるなと思ってな」

 

 「どうしてですか?」

 

 「うむ、ギルドの規則で、ギルド外への技術流出はご法度なんだ。 それなのに、こっちが貰うのは良いのかと考えてしまって・・・」


 なるほど、他に教えないのに、自分たちだけ得をしても良いのかという悩みだろう。

 随分と真面目と言うか、人が良いと言うか。


 うん。 考えてみれば、『作家ギルド』が嫌と言うわけではなく、更に忙しくなるだけなのだ。

 それに、『漫画』を世に出すために『作家ギルド』は避けては通れないだろう。 良い機会だ。

 少し頑張るとしよう。 


 「そう言う事でしたか、であれば、ギルドに入りますよ」


 俺は笑って答える。

 これからお世話になるギルドだ。

 印象を良くしていこう。


 「良いのか?」


 「はい! ですが、『作家ギルド』の事を自分は何も知りません。 もう少し詳しくお話聞いても良いですか?」

 

 「あぁ! 構わない! よし! 奥に来い!」


 俺の答えに満足したのか奥へと案内された。



 そして、俺はいろいろ説明された。


 1 メンバー間で技術のやり取りが行われる。

 2 メンバーは書いた本を店に置いてもらえる。

 3 会費は売上金の2割。

 4 目標売上額(とても高い)に達した場合は特別ボーナスで、一年間の会費免除となる。

 5 入会、脱退は自由。

 6 担当者が付き、現状の定期報告が必要になる。

 7 経営費として申請し、受理されると微量ながら援助金がもらえる。

 8 5年以内に音沙汰なしの場合は脱退。


 他にも色々あったが、今は長くなるから記さないでおく。 あぁ、ギルドの兼任は問題ないらしい。

 

 さて、担当者についてだがメンテさんがそのまま担当してくれることになった。

 今日は『作家ギルド』の説明と、『冒険者証』の『作家ギルド』バージョンである、『作家証』の発行に必要な情報の記入、漫画の簡単な説明をしてお開きとなった。

 本当は結構な入会金があるらしいが、そんなお金は無いので『漫画』の技術提供で貰えるお金をそのまま使って支払う事にした。

 正直、『漫画』の技術は、俺なんかが好き勝手にして良いものではないので、売ったお金を貰うことに気が引けたのだ。 お金事態は用意できたが、こっちの方が気持ち的に楽だった。

 『作家証』の発行には、結構離れた所にあるらしい『本部』とやり取りしなければならないらしく、半年はかかるとのことだった。 この日はネームが出来たら見せに来る約束をした後、質の悪い紙を購入して『作家ギルド』を後にした。 吹き抜けから見える空は夕暮れだった。


 大分遅くなってしまったと、前を向く。

 

 その先では、サティスが腕を組んで怒った顔をしていた。

 後ろのベンチでファセールは眠っていた。

 

 「おそい!」

 

 こうやって怒られるのは初めてでちょっと新鮮な気持ちになって笑いそうになるが自粛。

 誠意をもって謝り、2人にソフトクリームを買ってやる事で事なきを得た。


 最後は屋上で夕焼けを見て堪能した後、帰路へとついた。


 『作家ギルド』。

 思わぬ収穫だった。

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