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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第二部 少年期 前編 『人形編』
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『人形編』『エピローグ』


 ファセールを連れて、ボカを含めた俺たち5人は『アロサール家』に来ていた。

 ファセールはサティスと手を繋ぎながら、ここに来るまでに見た様々な物を見ては目を輝かせていた。

 コルザに案内されて家の中を見て回った後、『道場』に入った。


 「ここが『道場』だね」


 コルザが、サティスと手を繋ぎながら『道場』に入ったファセールに『道場』を紹介する。

 ファセールは外に出るにあたり、地面に広がるほどの長さである純白の長髪を頭の上でシニヨンにしている。 といっても、纏めきれず、髪先の方はポニーテールのように腰下まで落ちているが。

 服装はいつもの白ワンピース。

 令嬢か、お姫様かと思うが。 実際彼女はお姫様だ。

 そんなファセールは、見るものすべてに目を輝かせている。

 初めて見る者ばかりなのだろう。 「お~」だとか「わ~」だとか、感嘆の声を上げては目をキラキラとさせている。

 そんなファセールの様子を見てニマニマしているのは、ファセールが手を離さないサティスである。

 初めての外で不安な気持ちもあるのだろう。 毎朝パンを届けに来てくれたサティスと仲を深めていたのもあり、先ほど連れ出してからずっとサティスの手を握って離さないのだ。

 サティスは嫌がるそぶりを一切見せず、むしろ喜んでいる様子なので問題ない。

 俺は2人のほほえましい様子に合掌である。

 ありがとうございます。


 「あ! みなさんお揃いで! あれ? その方は?」


 『道場』の中心で『剣舞術』を舞っていた黄緑の少女、ラーファガが俺たちに気づいて手を振っていた。

 

 「おかえりなさい」


 道場の端の方にはコラソンもいた。

 そして、彼女の隣には久しぶりに見る桃色髪のお姉さんが2人いた。


 「あらぁ? もしかしてフェリスくん? 大きくなったわねぇ」


 間延びした話し方。 桃色のウェーブがかかったふんわりしたセミロング。 体のラインが出るような服。 シオンさんよりも大きいのではないかと思う二つのふくらみ。 短いスカートは足を大きく露出させていてとにかく目のやり場に困る。

 『プランター村』の生き残りの一人。 今はラーファガの母親代わりをしている女性『カルマ』だった。 『長耳族』である彼女は若々しく、思わずドキドキしてしまうような色気をもっている。

 隣で、カルマの母である『トルベジーノ』も俺たちに手を振っていた。

 カルマと同じ桃色の髪。 胸下までのウェーブがかかった髪。 カルマの母である事を理解させるスタイル。 唇の左下にある黒子がセクシーさを際立たせている。

 2人並ぶと、まるで姉妹だ。

 『道場』の中は2人の使用している強めな香水の匂いが充満している。


 さて、そんな彼女たちはあの『第2次魔族進行』の日。 『ディナステーア』まで品物を売りに出ていたため、被害にはあわなかった。 しかし、大切な一人娘。 『ブリッサ』を亡くしてしまった。

 ラーファガを引き取ったことにどのような思いがあったのか、今の俺にはわからないが、きっと、間違いではなかったのだろうと思う。

 俺たちを見る笑顔が、とても朗らかなものだったから。

 きっと彼女たちも再び立ち上がって今を頑張って生きているのだろう。


 「久しぶり! どうしてここに?」


 俺も笑顔で手を振り返した。


 「私たち、ラーファガちゃんが『剣舞術』を修めたって聞いたから見に来たのよぉ」


 答えてくれたカルマ。

 ・・・ってちょっと待て。


 「修めたのか!?」


 俺は思わずラーファガに問う。

 良い笑顔で頷かれた。


 すごいな・・・。


 「思っていたより早かったですね」


 驚いていると、コラソンが口を開いた。

 俺は最初、ラーファガが『剣舞術』を修めるまでにかかった期間の短さの事かと思ったが、コラソンの視線は俺たちの後ろにいたボカに向かっていた為、俺たちがここに来た時間の方だと察した。


 「あぁ。 姫がここを見たいってな」


 俺たちの様子を静かに見守っていたボカがそれに答えて、コラソンたちの元へと向かって行った。

 街を見ずにまっすぐここに来たのはファセールの希望だ。

 サティスがいつも『剣舞術』の事を話すため、どんなものなのか気になっていたらしい。

 ファセールは字が読めるため、部屋の中での時間つぶしに『小説』を含めた色々な本を読んでいるらしく、『剣術』や『魔術』の事などを良く知っていた。 しかし、実際に見たことは数少ないらしく、『剣舞術』を見たことは無いのだという。

 と、いう事で今日ここに来たのは他でもない。


 ファセールに『剣舞術』を見せるのだ。


 「あ! そうだわ!」


 サティスが何か思いついたらしい。 ファセールの手を握りながらラーファガに提案する。


 「ラーファガ! 模擬戦しましょう! ラーファガがあんな力を持っていたなんて知らなかったわ! それに修めたのよね!? 色々あって大変だったけれど、今ならゆっくりできるわよね!?」


 思わず俺は笑う。

 いつぞや想像したとおりになった。

 ラーファガも同じようで微笑む。


 「わかりました! やりましょう!」


 コラソンが頷いて真ん中に立つ。


 「では私が審判を務めます。 危険だと判断した場合は止めますので安心してぶつかりなさい」


 ラーファガが腰に下げている2本の直剣を抜く。

 位置につく。


 「しっかり見ててね! ファセール!」


 ファセールの手を優しく離しながら笑いかけるサティス。


 「うん! 楽しみ!」


 満面の笑み。

 心臓を鷲掴みされる感覚に陥る。

 あまりにも可愛すぎる。

 前世での推しに対する感覚を思い出す。

 赤スパはどうすれば投げられますか?

 その笑みを向けられたサティスも頬を赤くしていた。

 むぎゅっと抱きしめて離れるサティス。


 「行ってくるわ!」


 言ってラーファガを見る。

 腰の『曲剣』に触れる。

 赤い『宝石』が一瞬『柚子色』に輝いた。


 「リフィも見ててね」


 呟いて位置につく。

 『魔剣』『グラナーテ』を抜く。


 「『業火魔術』は使用してはいけませんよ。 あれ以来使用していないので危険です。 どうなるかわかりませんから」


 コラソンはサティスに制限をかける。


 「重ねて、『宝石』の力も禁止です。 その力はあなたの力ではありませんから」


 「わかっているわ! 1対1の真剣勝負でそれはずるよね!」


 『業火魔術』。 『宝石』の力。

 今回の一件でサティスが新たに手に入れた力。

 それが、サティスをどのように強くしていくのか。

 

 ・・・不安は勿論ある。


 だけど、それ以上に楽しみに思うのだ。


 コルザが道場の端の方に向かって行ったので俺とファセールも続く。

 全員が見守る中、コラソンの声が響いた。


 「では、両者構え」


 コラソンが腕を上げる。

 サティスは、いつもの腰を落とした構え。

 対するラーファガは最初から全力らしい。

 右手で上段構え。 左手で下段構えをとる。

 その構えにサティスは獰猛な笑みを浮かべる。



 「始め!」



 コラソンの合図。

 振り下ろされる右腕。


 2人の剣がぶつかる。

 2人の美しい舞を見ながら思う。


 俺もサティスも新たな力を得た。

 こらから、まだまだ成長出来る。


 また1年後にはどうなっているのかまだまだ分からない。

 ただ、言えるのは俺もサティスも『努力』は怠らないと言うこと。


 次は、負けない。

 次は、大切な人を守りきる。

 次は、助けて見せる。

 


 2人で『無敵』を目指す旅路はまだまだ始まったばかりだ。



明日の更新分で『人形編』は終わります!

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