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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第二部 少年期 前編 『人形編』
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『解放の一歩』

 事の顛末を聞かされた翌日。

 俺たち『ミエンブロ』はボカに連れられて、『レイ王』の元にやって来ていた。


 『城下街』『ディナスティーア』。

 『北区』『王城』。

 『謁見の間』。


 ボカの後ろで、俺、コルザ、サティスの順に横一列に並び、膝をつく。

 勿論、頭は下げている。

 

 大きな椅子に座り、威厳たっぷりな様子で俺たちを見下ろす『レイ王』。

 濃い顔のイケオジだ。 髭もあり、威厳たっぷり。

 隣には宰相。

 椅子を守るように『騎士』が2人。


 「表をあげよ」


 俺たちは4人揃って頭を上げた。

 そして、ボカがレイ王に向かって話し始める。


 「『レイ王』。 約束通り、ファセール姫を連れ出しに来た」


 ため口!?

 おいおいおい!

 ボカよ!?

 不敬罪とかにならないのか!?


 俺は、不安と驚きであわあわする。

 サティスはよくわかっていないのだろう、真面目な顔でレイ王の返答を待っている。

 コルザはいつも通りだ。


 「あぁ、約束しちまったからな」


 頬杖をついてフランクに話すレイ王。

 え、なに?

 どんな関係?

 私語厳禁な気がして、コルザにどう言うことか聞けない。


 「だが、本当に良いのか? 『建国祝賀会』の警備報酬だぞ? 大金を渡してもいいんだが?」


 レイ王は確認をとる。



 「お金はどうでもいいわ」



 と、割って入ったのはサティス。

 そう、サティスだった。

 俺は思わずサティスを見る。

 真剣な顔で突然話し始めたのだ。

 比較的な綺麗な言葉づかいではあるが、敬語ではない。

 サティスの突然の行動にハラハラする。


 「・・・ほう?」


 レイ王は見るからに不機嫌そうな顔をした。

 お、怒らせたんじゃないだろうな?


 「お、おい! サティス!」


 小声で叫ぶと言う、やったことの無い技で何とか止めようとするが時すでに遅し。

 サティスは立ち上がってしまった。


 おぉい! サティス!

 ここに来る前にコルザに言われていただろ!

 立つんじゃないぞって!


 「王様! 私はファセールと一緒に街に遊びに行きたいのよ!」


 呆れ顔でため息をついたコルザの隣。 ドキドキハラハラと落ち着かない俺が見る先で、胸を張って言いきった。

 一瞬の静寂。

 一国の王に向かって、無礼な物言い。

 立ち居振る舞い。

 

 終わったかな?

 まさか、こんなところで人生終了とは。 思ってもみなかった。

 まぁ、抵抗はするけども。


 「フェリス。 落ち着きな」


 俺の隣でコルザが俺を諭す。

 いや、落ち着けと言われましても。

 不敬罪は処刑だろ?

 落ち着いてられますか!


 「大丈夫だ。 父さんを見てごらん?」


 言われてボカの背中を見る。

 震えていた。


 あぁ。 ボカも震えているじゃないか。

 怒ってるのか悲しんでいるのか?


 「ぶはっ!」


 唐突にボカが吹き出した。

 

 「あっはっはっはっは! だ、だとよ? レイ王。 子供の頼みだ。 き、聞いてやってくれ!」


 ボカが大笑いを始めたのだ。

 大笑いしながらレイ王に言う。


 すると、レイ王はため息をついた。


 「はぁ・・・。 まったく。 もう少し、礼儀作法を学ばせろ!」


 「コラソンが教えてくれてるが? 何か文句でも?」


 「大有りだ。 たわけ。 まったく。 して? 生活は大丈夫なのか?」


 「問題ないさ。 また稼げばいい」


 ボカは、レイ王と旧友のような雰囲気で話しながら、ちらっと俺とコルザを見てニヤッと笑う。

 話にはまったくついていけないが、とりあえず金をまた稼ぐのに俺たちを使おうとしているのは伝わった。



 「そうか、では許す。 『城下街』内に限り、『ミエンブロ』の『護衛』の元、『ファセール・ブランコ』の外出を許そう」



 〇


 王様からの許可を貰った俺たち『ミエンブロ』は、部屋の前に立った。


 『2階』『ファセールの部屋』。


 「とうとう来たわね! この時が!」


 サティスは満面の笑みで腰に手を当てて胸を張った。


 「そうだな。 いよいよだ」


 俺は、以前会った純白の少女を思い浮かべる。

 同い年くらいの美しい少女。 とても長い純白の髪は、立ち上がってなお床に広がる。 華奢な体と細い手足は簡単に折れてしまいそうで、透き通った白い肌と純白のワンピースが儚げな雰囲気を醸し出す。 整った相貌に収まる2つの深紅の瞳からは目が離せなくなった。


 彼女に対して俺が感じている感覚は、前世で言うところの『推し』だ。

 見るだけでテンションが上がる。


 それは、サティスも同じようで、部屋の前で少しだけ緊張した表情で立っていた。 毎朝パンを届ける為会いに行き、すっかり仲良くなっているとの事だったが、やはり今日は特別な日。 緊張しているのだろう。

 サティスは緊張からか、腰に下げられた『曲剣』につく『赤い宝石』に軽く触れた。 すると、一瞬だけ『柚子色』に輝いた。


 「ふふっ。 リフィも緊張しているみたいだわ」


 本当に声が聞こえたのか、『野生の勘』なのかわからないが、そんなことを笑顔で言うサティス。


 「じゃあ、行こうか」


 俺が声をかけると、サティスは頷いて両開きの扉の右側に手を添えた。

 コルザとボカは、外で待っていてくれている。

 今は2人だけだ。

 俺は、サティスの左隣で両開きの扉の左側に手を添える。


 「じゃあ開けるわよ!」


 「あぁ!」


 「「せーの!」」


 息を合わせて扉を開ける。

 中から風が吹き込んできた。


 「ファセール!」


 扉を開け終えた俺たち。

 開いている窓の前に座る純白の少女。

 その少女にサティスが声をかける。



 「行くわよ! 外!」



 開かれた部屋の奥。 風に吹かれながら椅子に腰かけるのは、嬉しそうな笑みを浮かべる純白の少女『ファセール・ブランコ』だった。


 「待ってたよ。 サティス」


 満面の笑み。

 撃ち抜かれる。

 心臓がキュッとなる。


 「待たせたわね! ファセール!」


 駆け足で部屋に入っていくサティス。

 サティスはそのままファセールに抱き着いた。


 「わっ・・・。 ふふっ」


 嬉しそうに抱きしめ返すファセール。


 俺もそれを追いかける。


 「あ。 フェリスも来てくれたんだ!」


 俺の姿を見て嬉しそうに笑うファセールが可愛かった。 なんとしても守護らねばと思う。


 「あぁ、行こうファセール! 外に!」


 俺も外に誘う。

 大きく頷く。


 抱きついていたサティスが手を肩に置いたまま体を話す。 少しだけ名残惜しそうなファセールが尊い。


 「コルザも待ってるわ!」


 「うん!」


 本当にうれしそうに笑うファセール。

 その笑顔を見ることが出来て、全てが救われた気分だった。

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