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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第二部 少年期 前編 『人形編』
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『コルザ対ティン』

 「2人とも行ってしまったね」


 僕は目の前の金髪メッシに言う。


 「丁度良い。 お前は俺が倒す。 初めて戦った時と同じだと思うなよ?」


 言いながら背の長剣の柄を右手で握る。


 「今回は本気で行くぞ? だから、お前も全力で来い!」


 何を言っているんだ。

 僕は嘲笑ってやる。

 

 「君なんかに僕が本気を出すとでも?」


 「はっ! 自由にするといいさ! だが、俺を早く倒さないと仲間がやられちまうぞ?」


 哀れだ。

 僕の仲間の強さを全く分かっていないこいつが哀れでしかたない。


 「あの2人は強いよ。 なんたって、僕が認めた、僕の仲間なんだから」


 僕の言葉を聞いてティンが笑顔になる。


 「こっちだって強い! なんたって、俺のダチなんだからな!」


 ふーん。

 僕の煽りに真っすぐ返してくるのか。

 そこだけは面白い奴だ。

 僕は腰から剣を抜く。

 少しだけ全力を出してやろう。


 「それじゃ、ちょっと本気でやろうか」

 

 「やってみろや!」

 

 「『空間魔術』『亜空間把握』『亜空間掌握』」


 青く染まる視界の中、左右で『亜空間』と『空間』を繋げる穴を開ける。

 『亜空間』の中を把握し、好きな武器をすぐに取り出せるようにしておく。


 「さぁ、やろうか」


 地を蹴り駆け出す。


 「『剣舞術』『クラコヴィアク』」


 突発的にリズムを上げて、持っている剣で一気に突っ込む。


 「『抜剣術』 『煌』!」


 一瞬の居合切り。

 月明かりを反射させて目くらましを行いながら振るわれる高速の抜剣。

 僕の刺突に反応してくるのに感心しながら近くの穴の『魔素』を操る。


 「『射出』!」


 中から針を撃ち出す。

 それはティンの右腕を貫き、居あい切りを止めた。


 「いっ!?」


 痛みに身を固める彼に思いっきり刺突を放つ。

 刺突は彼の右足の甲を捕らえる。 

 深く刺さった剣は、足を貫いて地面に固定する。


 「がぁあああ!!」


 「僕はあの2人ほど甘くないからね」


 足が剣で地面に固定されて動けない彼の周囲を囲うように、今出せる最大数の穴をあける。

 計64個。

 中から覗くは無数の剣。


 「『射出』」


 全てを打ち出した。

 狙いはティンの薄皮に絞ってやる。

 打ち出された剣がティンの薄皮を切り刻んでいく。


 「ぬあぁああああああ!?」


 64回の斬撃に耐えるべく叫ぶティンを冷静に観察する。

 うん。 殺さずに倒せそうだ。

 僕は『転移』で距離を取った。

 攻撃が止む。

 『亜空間掌握』を解いて満身創痍のティンを見る。

 膝を着き、体中に傷を作る姿にちょっとやりすぎたかなと反省する。


 「俺は・・・こんな所で・・・止まるわけにはいかないんだ・・・みんなが望んでいるんだ・・・革命を!!」


 言いながらティンが剣を足から引き抜いて、血だらけの体を動かして立ち上がった。


 「えぇ・・・」


 その姿に驚く。


 ここまでの覚悟・・・。

 一体何が彼をここまで・・・。


 ティンが無理を通して突進してきた。

 最後の一撃だろう。 対応するべく僕は構えようとしたが、止めた。

 視界に深紅と青の『魔素』が映ったのだ。


 仲間が戻ってきた。


 「『抜剣」


 「「させない!」」

 

 ティンの最後の一撃は、サティスとフェリスによって防がれた。 2人の曲剣と剣によって、発動すら許されず、長剣を弾かれてしまったのだ。


 「くっそ・・・」


 そこでティンは限界がきたのだろう。 意識を失って仰向けに倒れ込んだ。


 「ごめんなさい! 遅くなっちゃったわ!」


 「すまん! 遅くなった!」


 2人が同時に振り返った。


 「大丈夫だよ」


 2人とも傷を作ってはいるが、思った通り余裕そうだった。

 フェリスの肩には涙目のアーラが担がれていた。

 サティスの足元には、意識を失っている傷だらけのハールが投げられている。

 2人とも無事に勝ったんだね。


 「お疲れさま」


 2人を労おうとしてはっとする。

 フェリスに担がれているアーラが静かに『魔術』の準備を行っていたのだ。


 「・・・うぅ じ、『人体転位』!!」


 一瞬で『魔術』を発動させるアーラ。


 「あ!」


 フェリスも気づいたのだろう、小さな叫び声をあげた。

 2人揃って、しまったと思った時には遅かった。


 『レべリオン』の3人は、僕たちの追い付けない範囲まで逃げてしまった。


 「くそ! やられた!」


 フェリスが悪態をついて、地団太を踏む。

 やられた。


 「油断したね」


 ため息をつく。


 「すまん」


 誤解させてしまったらしい。

 僕は僕が油断したと言ったのだったが、フェリスに対して言ったのだと思われてしまった。

 僕は首を振って否定する。


 「いや、僕がだ」


 フェリスがまだなにか言おうとしたが、僕たちの間に割り込んできたサティスによって阻止される。


 「しかたないわよ! また捕まえましょう! それより今は!」


 そのサティスは崖下を見下ろす。

 僕はため息をついて気持ちを入れ替える。


 悔しいけれどサティスの言うとおりだ。

 今は時間がない。


 「今何分だい?」


 フェリスが腰のポーチから時計を取り出す。


 「7時27分」


 「後、30分と少し。 急ごう」


 サティスとフェリスが頷く。

 3人揃って並び、崖下を見下ろす。


 「行こう」


 この下で、ティーテレスと戦闘になるだろう。

 油断せずに行こう。

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