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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第二部 少年期 前編 『人形編』
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『フェリス対アーラ』

 『ゴミ山』『山頂』。


 青髪の少年が消えて、現れる。

 満月が浮かぶ、夜空。

 2人の少年が飛んでいた。

 

 「『転移切断』!」


 フェリスの直剣がアーラの背を狙う。


 「『転位』 『基本魔術』『火』 『火球』!」


 その切り裂きを『転位』でフェリスの背後に回ることで回避し、カウンターを放つアーラ。 彼のカウンターは、右手から放たれる火の玉。 火の玉は、それに反応し、振り返ったフェリスの顔面に迫る。

 フェリスは即座に剣を左手に持ち替え、右手で腰から短剣を素早く引き抜く。


 「『剣舞術』『アルマンド』!」


 体を縦に回転させ、短剣で火球を切り裂く。

 フェリスは切り裂くことが出来たことに一瞬驚く。

 いつも通り、いなすだけのつもりだったのだ。


 「『転位』 『基本魔術』『火』 『付与』『右手』」


 『火球』を切り裂かれたアーラは止まらず、瞬時に『転位』し、フェリスの背後を再度取る。 現れたアーラは、赤い火を右手に纏っていた。 火を纏った拳を強く握り、体を捻り、勢いを乗せたストレートをフェリスの背中に叩き込む。


 「がぁっ!」


 ここに来るまでの『魔術』使用により、大分体力が削られていたフェリスは、『転移』の再使用が間に合わず、背にその右拳を食らってしまう。

 フェリスの背中に走る、焼ける感覚。 ただのストレートでは味わえない、酷い痛みを背に受ける。


 「くっそ!」


 歯を食いしばり、力一杯体を回して、後ろへ向かって横切りを放つ。


 「『基本魔術』『風』 『付与』『右手』」


 アーラは右手の火を消し、代わりに緑の風を纏わせた。 その風は切断能力を持ち、フェリスの横切りを風を纏った手刀で火花を散らして受け止めた。

 ぶつかった際には刃がぶつかった時のような甲高い金属音が鳴り響いた。


 「『基本魔術』『雷』 『雷球』」


 鍔迫り合いで、止まった隙にアーラが雷の玉を左手に作り出して、フェリスへ投げつける。


 「『転移』!!」


 フェリスは体力を振り絞って真下に『転移』する。


 「逃がさない! 『転位』!」


 『雷球』を躱されたアーラは、鼻血を流しながらフェリスの背後に『転位』する。


 「くっ! さっきから始めてみる『魔術』ばっかり使いやがって!」


 『転位』の言葉を聞いたフェリスが、『魔素』を追いかけて後ろを振り向く。


 「『基本魔術』『火』 『付与』『右足』」


 振り向いた先には、右足に赤い火を纏わせて蹴りつけてくるアーラが居た。


 「『転位』同士、背後を取った方が有利。 この状況じゃあこっちの方が有利だ・・・ね!!」


 アーラが話しながら吐血。 しかし、蹴りの勢いは収まらず、そのままフェリスを、纏った火によって破壊力が上昇した右足で脇腹を蹴る。


 「かっはっ!?」


 足が脇腹にめり込み、肺の空気が抜ける。

 蹴られた箇所が焼ける感覚、激しい痛み。

 

 「うらぁっ!!」


 アーラは、叫びながら力を更に込める。

 めり込んだ右足に力が加わると、フェリスはそのまま数メートル蹴り飛ばされた。

 地に落ち、転がり、最後はゴミの壁に衝突。 大きな音と土煙を上げて止まる。


 「ぐっ! かはっ! はっ! はぁはぁ!」


 四つん這いで痛みに耐えながら息を整えるフェリス。


 「はぁ・・・はぁ・・・。 うっ・・・。 はぁ。 もう諦めて帰りなよ」


 『魔術』の使いすぎによる鼻血と吐血。 吐気。 アーラもキツそうに息を整えながらフェリスに諦めるように言う。

 自信も限界なのである。

 逃走用の体力は残さなければならない。


 「ふ・・・ざけんな!」


 息を整えたフェリスが、ふらつきながら立ち上がる。

 左手には父の形見。

 右手には母の形見。

 2本の剣をキツく握りしめる。

 彼の青い瞳がアーラを捉え、睨み付ける。

 ゆっくりと短剣を持ち上げる。

 母の形見の短剣。 その切っ先がアーラに向く。


 「俺はあきらめるわけにはいかねぇ!!」


 息を大きく吸う。

 

 「だって!」


 フェリスの瞳は、目の前の敵を捕らえる。

 

 「1人でも勝てる」


 彼の見ている物は、目の前の敵だけではない。

 もっと先にいる存在達。


 「それくらい強くならないと」


 見えなくても離れていても共に戦っているだろう彼女とともに見ている景色。



 「2人で『無敵』なんて夢のまた夢!」



 目指す場所はいつでも同じ。


 「だから」


 彼女とともに夢を見る彼は。


 「絶対諦めない!!」


 こんな所で止まってはいられない。


 青が駆け抜ける。


 「『剣舞術』『修型』『ワルツ』」


 両手の短剣を横に、直剣を平行になるように構えて回転。 回転のこぎりのように迫りくるその脅威へ『基本魔術』で作れる球を片っ端から放つが、その全てが切り裂かれていく。

 『転位』で逃げようとしたが、時すでに遅し。

 目の前、ぎりぎりで止まったその短剣が、アーラの気力を刈り取った。

 諦めたアーラは、その場に膝をついた。

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