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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第二部 少年期 前編 『人形編』
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『作戦会議』

 目覚めた。


 俺は立ち上がる。

 装備を整える。

 父の直剣。

 母の短剣。

 2本の剣を腰に下げる。


 部屋を出た。


 「おはよう。 フェリス」


 同時に隣の部屋から『深紅』が出てきた。


 「おはよう。 サティス」


 2人、並んで下に降りる。


 「やぁ、疲れはとれたかい?」

 「おはようございます! サティス様! フェリス様!」


 階段下で、コルザとラーファガが並んで待っていた。


 「食事の用意が出来ているよ。 今呼びに行こうと思ったんだ」


 コルザとラーファガが食事の部屋に入っていく。

 俺たちもそれを追いかける。

 台所にはコラソンが居た。


 「腹が減っていては動けません。 しっかり食べなさい」


 俺たちの変わりに朝の仕事をしてくれていたはずだが。


 俺の考えを察したのだろうコラソンが皿をテーブルに並べながら教えてくれた。


 「『人形』の殲滅を確認した後、あの人が帰してくれました。 手は足りているそうですので、大人と協力してやりたいようにやってみろとのことでした」


 「『建国祝賀会』が危ないかもしれないっていうのに随分投げやりだな」


 俺はボカの言葉にちょっとカチンとくる。

 ちょっと無責任なように聞こえたからだ。


 「『建国祝賀会』が危ないかもしれないからですよ」


 コラソンが微笑みとともに座るように促してくる。

 コルザが席に着きながらコラソンに続く。


 「父さんは、『建国祝賀会』の警備の方で手が離せないんだ。 指示だけで無く、自分の手で解決することもあるからね。 どうしても、サクリフィシオの方に手が回せない。 だから、僕たちに言っているんだ。 好きなようにやってみろって」


 ラーファガがコルザの隣に座る。


 「つまり、自分が動けないからあとは頼むっていう事ですか?」


 「あたりだ。 父さんは素直じゃないからね」


 コルザの正面にサティスが座る。


 「ふふっ。 コルザがそれを言うのね」


 俺はサティスの隣に座った。


 「同感だ」


 「ほっといてくれ!」


 言いながら目の前のパンにコルザが手を付けた。

 それを合図に俺たちは食事を始めた。


 腹が空いていたため、バクバクと食べる。


 現時刻、午前11時47分。

 『建国記念日』。

 最後の花火まで、後、8時間13分。


 食事しながらの作戦会議が始まった。


 普段のコラソンなら食事中に仕事の話はやめなさいと言うのだろうが、今は緊急事態である。 止める事はない。


 「さて、これからについてだけれど、まず、『義賊』の根城を一刻も早く見つけなければならない」


 コルザが話し始める。


 「だけど、今まで見つかってないんだろ? 後数時間でみつかるもんか?」


 「そこなんだよ・・・。 一応、見つからない理由として、いくつか仮説があるんだ。 まず一つ目、『気配魔術』のようなもので見つからないように隠されているか。 二つ目、根城なんてなくて、常に移動を続けているか。 そして三つ目、僕たちが見落としている、思いもよらない場所にあるか」


 「・・・それでも見つからないってことは、その仮説は間違ってるんだよな?」


 「正直なところ、その通りかもしれないとしか言えない。 『魔術』的な要因なら、僕らが『魔素』を把握するか、ラーファガの『透視』で見つけることが出来る。 それに『魔術』的な要因だったら、大なり小なり痕跡が残る。 で、あればサティスの『野生の勘』で見つけられるかもしれない・・・けれど」


 「けれど?」


 サティスは小首をかしげる。


 「うん。 『魔術』的なものである可能性は限りなく低いんだ」


 「なぜですか?」


 「だって、それなら父さんが見つけられないわけがないからね」


 「それはそうだ」


 俺は頷いた。

 ボカは俺とコルザよりはるかに高い練度で『魔術』を使用できるのだ。

 ボカの『空間把握』で見つけられないはずがないのだ。


 「そして、二つ目だけど、こっちも同じで、可能性が限りなく低いと思う」


 「なぜでしょう?」


 「うん。 常に移動するのは良いけれど、さすがにこんなに長い期間、一度も目撃情報がないのは不自然だ。 ここ最近は『街中』を同時に探しているんだ。 これで手がかり一つ見つからないのはあり得ない。 うまく隠れている可能性もあるから否定しきれないけれど」


 完全に違うとは言い切れないが、限りなく可能性は低いという事だろう。


 「じゃあ、最後の仮説が一番可能性としては高いわけだ」


 俺は腕を組んで考え込む。


 俺たちの思いつかないような場所・・・。


 「そうなんだよ。 でも、僕たちだけじゃなくて、大人たちも考え付かないんだ。 常識の外にあるかもしれないってこと。 これが難しい」


 コルザがため息をついた。

 人の常識の外にあるものを考え付くのは難しい。

 俺は、パンをかじりながら考える。


 「・・・はぁ。 前も言ったけれど目が沢山あればいいのに」


 コルザが再度のため息の後、スープに口をつけた。


 「そうね! いっそのこと、この間の猫ちゃんにでも聞けたらいいのにね!」


 サティスは肉を呑み込んでそう発言した。

 家を出て、街中を見て回った猫。

 俺たちの視線とは違った場所を見ているのだろう。


 沢山の目。

 動物の視点。

 猫探し。


 ここで、俺は思い出した。


 「あ!? 何とかなるも知れない!!」


 俺は自分の分の食事を平らげる。


 「何とかってなんなんだい!? いい手が浮かんだのかい!?」


 「あぁ! ちょっと! でも自信は持てないから任せろとは言い難い・・・。 でも、やってみる価値ありますぜ!」


 俺は立ち上がる。


 「ありますぜ・・・? ま、まぁいい。 じゃあ、頼んだ。 もしわかったらすぐに教えてくれ。 それまでに僕たちはこの後の動きを考える」


 「さすがフェリスね! 頼りになるわ!」


 「いいか!? 絶対とは言えないからな!? 他の方法も考えておけよ!」


 俺は一応次の手を考えてもらうことを念押しして家を出た。


 現時刻12時16分。

 会って、頼んで、探してもらう。

 間に合ってくれよ!

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