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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第二部 少年期 前編 『人形編』
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『防衛戦』『コラソンとラーファガ』

 『西区』『住宅街』。

 『アロサール家』『庭』。


 『道場』を出たコラソン。

 ものすごい勢いで門を破壊して大量の『人形』がなだれ込んでくる。


 「・・・足りないですね。 私を倒したければ、『ドラゴン』を連れてきなさい」


 消失。


 爆発音。

 

 数百体の『人形』が空に舞い上がった。

 やったのは、ただの『クラコヴィアク』。


 『剣舞術』や『魔術』の名前を口に出すのは、その技の安定性や威力を高めるため。

 コラソンはそれをしていない。

 にも拘わらず、刺突ひとつで爆風を起こして何体もの『人形』を巻き込んで吹き飛ばす。

 コラソンにとって、軽い一撃。 それで数百体を一気に戦闘不能に追い込んだ。


 「まぁ、生半可な『ドラゴン』は敵ではありませんが」


 再度、消失。


 2度の爆発音。

 やっているのは『クラコヴィアク』のみ。

 爆発音は、コラソンの起こす爆風と衝撃によるもの。


 『クラコヴィアク』。

 『剣舞術』の中で最も基本的な型。

 ただし、コラソンのものは『練度』が違う。

 サティスやコルザの『修型』でさえ、遠く及ばないその威力。 ただの『人形』に『怪物』が本気を出すわけがないのだ。


 『人形』たちには、意識がない。

 ただ、操られているのみ。

 どれだけ他の『人形』が吹き飛ばされようと怯むことはない。 ただ、破壊されに行くようなものである。

 

 つまり、コラソンによる蹂躙である。


 〇


 「えと・・・緊張しますね!」


 ラーファガが正座しながら、目の前で同じく正座するサクリフィシオに声をかける。

 外では爆発音が続いている。

 コラソンが『人形』の相手をしているのだろう。


 「・・・」


 先ほどから、サクリフィシオは『道場』の出入り口を見つめたまま動かない。

 ラーファガは沈黙に耐えられなかったのだ。


 (うぅ・・・。 やっぱりサティス様ってすごいです)


 サクリフィシオと親友になったサティスを心の中でほめたたえるラーファガ。


 「どうして、ここまでよくしてくれるんですか?」


 唐突にサクリフィシオが聞いた。

 

 「と、言いますと?」


 「はい。 えと、私、サティの友達です。 ですが、あなたたちは私にこんなに良くしてくれる程付き合いは無いでしょう?」


 その言葉にガクッと崩れ落ちるラーファガ。

 そんな様子に首をかしげるサクリフィシオ。


 「な、なに言ってるんですか・・・」


 ラーファガは顔を上げてサクリフィシオと目を合わせる。


 「この一週間。 一緒に過ごしたじゃないですか!」


 言われて思い出すのは、この家に世話になった一週間。

 『剣舞術』を習って、『アロサール家』の人やラーファガと一緒に沢山話して、笑って、楽しく過ごした一週間。 死ぬ前含めた人生含めて、一番楽しかった期間。


 「確かに最初は、大切な人のひとりであるサティス様のお願いだから引き受けましたよ? でも、今は違う」


 ラーファガが姿勢を正す。

 サクリフィシオを見つめながら、しっかりと自分の気持ちを伝える。


 「勝手ですが、私はあなたの事を友達だと思っています! 友達を助けるのに理由はいらない!」


 言い放ったと同時、『道場』のドアが吹き飛んだ。

 入り込んでくる数体の人形。


 ラーファガは、どこでも買える普通の直剣を2本。

 腰から引き抜いた。


 両手に構えて人形を睨むラーファガ。


 「もう、あなたは私にとって大切な人になってるんです。 だったらもう、守るに決まっています」


 言いながら目に『魔素』を集める。

 黄緑の靄が焔のように目に宿る。


 「『透視魔術』『弱点』」


 ラーファガの目に、『人形』たちの体にある脆い箇所が黄緑の線や点として浮かぶ。



 「大切な人がいなくなるのは、もう沢山なんですよ」



 踏み込み。


 「『剣舞術』『クラコヴィアク』!」


 ステップ、突発的なリズム上昇。


 右の剣による刺突は、目の前の『人形』の右胸を穿つ。

 機能停止。

 引き抜いて、振り返る。


 驚いた顔のサクリフィシオに切っ先を向ける。

 

 「わかりましたか!? あなたにとっての繋がりはもう、サティス様だけじゃないんです! わかったら黙って守られてなさい!」


 何度も頷くサクリフィシオの姿に頷いて、変わった構えをとった。

 先日、『修型』をふたつ同時に修めたときに思いつき、やってみたら出来てしまった独特な構え。

 上段で右手の剣を構え、下段で左手の剣を構える。

 ラーファガは両利きだった。 だから可能となる構え。

 しかし、ラーファガは両利きである事だけが理由でないことを知っている。


 この構えをとると、不思議と近くに大切な存在を感じられるのだ。


 かつて、いつも近くにあった2人の姿を思い出す。


 あの2人は、どうやって舞っていたか。

 あの、大好きな2人の兄たちはどう戦っていたか。


 思い出がラーファガの頭を駆け巡る。

 その思い出が、ラーファガに特別な型をもたらす。


 ラーファガの左右からサクリフィシオに向かう人形たち。

 その背を睨むラーファガ。

 腰を落とす。

 瞳が黄緑の軌跡を描く。


 (お兄ちゃんたち・・・力を借りますね!)



 「『剣舞術』『修型』!!」



 叫ぶ。

 2本結びがふわりと浮かぶ。



 「『タンゴ』『ボレロ』!!」



 ラーファガによる猛攻。

 まず、右手の剣が目の前の一体の弱点を的確に切り裂き、機能停止させた。

 抵抗しようと試みる別の『人形』。 左手のカウンターが、その人形の首を飛ばして機能停止させた。

 次々と迫る『人形』。 そのすべてを一瞬のうちに活動停止させたのだった。


 「・・・ありがとうお兄ちゃんたち。 私、頑張るよ」


 サクリフィシオの目の前。

 ひとり、呟いて入り口の方を振り返る。


 まだまだ入り込んでくる人形たち。


 「さぁ、次です!!」


 気合を入れた瞬間。


 「ラーファガ! 後ろ!!」


 『道場』の入り口に突然現れた青髪の少年が叫んだ。

 青く輝くその瞳が焦りに染まっている。


 反射的に後ろを振り返るラーファガ。


 青紫の髪の眼鏡をかけた少年が、サクリフィシオの腕を掴んでいた。



 「『転位』」



 一瞬。


 ラーファガが切り上げる形で剣を振る。

 目の前に青髪の少年が現れて回転切りをする。


 カンッと火花を散らしてはじきあった、ラーファガと青髪の少年の剣。


 「くっ!」


 サクリフィシオは、『義賊』に奪われてしまったのだった。

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