『戦闘』『アーラ』
「にゃあ」
ガートの鳴き声が響くと同時、俺とアーラが動く。
「『転移』!」
「『転位』!」
姿を消す。
俺はいったん上空に移動。
眼下で青紫色の魔法陣のような『魔素』の集まりを視認。
それは俺がいた場所の背後。
そこからアーラが現れた。
速度は俺の『転移』よりわずかに遅く、あの『魔素』の集まりに体を移動させることが出来る。
と言う情報を得てすぐに攻撃にうつる。
再度の『転移』。
「『空間剣術』『転移切断』!」
アーラが現れたタイミングに合わせて背後に『転移』。 流れるような回転切り。
「うぐっ!?」
浅いが、背中を切りつけた。
「なんで!?」
言いながら再度『転位』するアーラ。
俺は『空間把握』で彼が出現する位置を把握している。 それは少し奥。 『転移』で追いかける。
「『転移切断』!」
今度は正面からの横切り。
「うぅ!」
アーラの腹を浅く切り込む。
「・・・ばれてる!? くそ!」
逃げる気だろう。
路地裏の道の方。 奥の奥にかすかに『魔素』の集まりが見えた。
追いかけて『転移』。
が、遠すぎて間に合いそうにない。
それを察して武器を変える。
直剣から短剣に。
ステップ。
突発的なリズム上昇。
「『剣舞術』『クラコヴィアク』!!」
踏み込み。
刺突一線。
「うわっ!!」
『転移』ほどの速度は無いが、代わりに圧をかける。 当たれば怪我するぞと。 刺突で狙うは腕。
「はぁっ!」
「『抜剣術』『煌』!」
一瞬輝いた、夕陽の反射光で狙いがずれる。 俺の刺突は、長剣によって防がれた。
ガンッと火花を散らしてぶつかる長剣と短剣。
「ティン!」
アーラの叫び声。
「一回退くぞ!」
俺の目の前。
剣を交差させる少年。
『義賊パーティ』『レべリオン』『リーダー』。
『ティンブレ』が逃げる事を宣言。
「させるかよ!」
「はっ! やるじゃねぇか! 確か『フェリス』とか言ったか?」
「そういうお前は『ティン』だろ? アーラともども捕まえて話を聞いてやる!」
「おぉ怖い。 だが、俺、お前らみてぇな『パーティ』嫌いじゃないんだぜ。 出会い方が違ったら友達になりたかったよ」
「意味が分かんねぇ・・・よ!」
俺は体を回転させる。
『アルマンド』の動きで長剣を下にいなす。
長剣が地面に突き刺さる。
隙。
素早く直剣を抜きつつ『転移』。
「『転移切断』!」
狙うはアーラ。
アーラを止めれば逃げられないはずだ。
しかし、すでに準備は整っていたらしい。
「『転位』!」
アーラは『魔術』を使用。
ティンごと俺の把握できる場所からはるか遠くに『転位』してしまったらしく、見失ってしまった。
「くそ!」
俺は悪態をつきつつ、振り返る。
サクリフィシオの元に戻らねば。
剣を鞘に納めながら『転移』で戻る。
・・・よかった。 まだいた。
もしかしたら逃げられたかもしれないと思ったが。
ちゃんと待っていてくれたらしい。
「良かった。 ちゃんと待っててくれたんだ」
「・・・この子の事を頼まれてしまったから」
サクリフィシオは腕の中の猫、ガートを場でながら答えてくる。
「あ、サティス!」
俺は、ガートの姿を見てサティスを思い出し、サクリフィシオとともにサティスの元に戻ろうと振り返る。
「あ! 2人とも! よかったわ! 無事ね!」
路地裏の道からサティスが顔を出した。
嬉しそうな笑みである。
「ごめんなさい。 ハールに逃げられちゃったわ・・・。 あとティンも止められなかった」
「大丈夫だよ。 こうしてサクリフィシオもガートも無事だ」
サティスが微笑みながら「ありがとう」と言って、俺の後ろのサクリフィシオに近づく。
「良かったわ。 無事で」
抱き着く。
あわわっと嬉しそうな焦ったような表情になるサクリフィシオ。
2人に挟まれたガートが苦しそうににゃあにゃあ鳴いていた。
「話、聞かせてくれるかしら」
サクリフィシオは、観念したように頷いていた。