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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第二部 少年期 前編 『人形編』
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『おばけ』

 『アロサール家』『道場』。


 「・・・おばけ?」


 翌朝、早朝。 2人仲良く眠れぬ夜を過ごした俺とサティスは、コルザに昨夜の事を報告していた。

 2人そろって酷い隈である。


 「そうよ! とっても怖かったんだから!」


 瞑想をしていたコルザが、俺たちの話を聞きながら、顔が引きつって行くのが見えた。


 「そ、そんな冗談。 やめてくれよ」


 震えだす始末。

 あれ、もしかして。


 「コルザもおばけが怖いのか?」


 「怖くない!!」


 「きゃあ! びっくりしたわね! もう!」


 突然の大きな声にサティスがびくっとした。

 コルザは、見るからに怖がっていた。


 「コルザにも苦手なものがあったんだな」


 「うっ、別に苦手だとか言ってないじゃないか」


 苦しそうな返事。


 「でも、怖いんだろ?」


 「それは!」


 違うとでも言いたかったのだろうか?

 にやにやする俺と目があった瞬間、口をつぐみ、最後に舌打ちするコルザ。

 態度が悪いぞ!


 「・・・だって、仕方ないじゃないか。 あいつらは攻撃が効かないんだ」


 腕を組んでそっぽを向き、唇をとんがらせながらボソボソと話し始めたコルザ。

 珍しい姿である。


 「あいつら、見た目はただの『人族』なんだぞ? でも、こっちの攻撃は一つも効かない。 まるで霧や蜃気楼を相手にしているみたいで・・・」


 震えだし、自分の体を抱きしめるコルザ。


 「何度剣を振っても、『空間留置』で掴もうとしても全部空振るんだ」


 震えが止まらないコルザ。


 「そうこうしているうちにどんどん近づいてきて・・・。 やがて、鼻が触れそうなところまで迫ってこう言うんだ」


 ピタッと震えが止まった。

 隣のサティスは、俺の腕に抱きついている。

 俺も、コルザの鬼気迫るような物言いに身震いする。

 一体なんて言うんだよ。



 「『・・・帰りたい』って」



 「ひうっ」


 小さな悲鳴を上げて俺の腕に顔をうずめて隠れるサティス。

 そんなサティスを可愛いと思う余裕は無く、俺も生唾を飲んだ。

 帰る場所を求めていると言うのか・・・!?

 怖すぎるだろ。


 「・・・あの時は父さんに助けてもらえたけれど。 今相手にすることになったらすぐに逃げる事を選ぶね」


 ふぅとため息をついた後、いつもの調子に戻ったコルザ。


 よっぽどのトラウマだったらしい。

 いつもの調子に戻ったように見えるのは遠目からだけで、良く見ると手先が震えていた。


 「そ、そうか」


 「怖いわ!! お、おばけは怖いわ!」


 顔を上げて半べそで俺に必死に訴えるサティス。

 その姿は可愛らしいが、正直俺も怖かった。


 だって、おばけだぞ?


 前世では話半分で聞いていたが、この世界では明確に存在した。


 この目で見てしまったのだ。


 年齢を重ねるごとに、笑い話として見れるようになっていたが、それはあくまで、作り物だろうという前提があっての事だ。

 本当にいるとなると話は変わってくる。


 「サティスは、わかってくれるかい!?」


 コルザが、自分と同じように怖がっているサティスの様子に嬉しそうにする。


 「えぇ。 あれはとっても怖かった! 変なのよ! 皆から感じてる生きてるって感じがないの・・・。 あるのは、『帰りたい』っていう悲しい気持ちだけ・・・。 見てるとこっちまでしんどくなるわ!」


 言いながら悲しそうな顔になるサティス。


 「サティス!」


 コルザはサティスに近づく。


 「コルザ!」


 お互いに、細かな違いはあれど、おばけを怖がっている点で共感しているのだろう。

 ガシッと抱きしめあった。


 「やっぱり君は僕の『親友』だ!」


 「怖いものは怖いわよね!」


 2人の意外な姿を見ているうちに、恐怖はどこかに行ってしまった。

 サティスとコルザの友情が深まったようで何よりだよ。


 だが、とりあえず離れてくれ。

 入り口にいる、修練しに来たであろうラーファガが、コルザとサティスの抱擁を見て真顔になっている。


 その後、ラーファガに事情を説明した俺は、ラーファガの『また、サティス様が私の敵になると思いました』と言う、ちょっと怖い呟きを最後に解放された。


 解放してもらった俺は、3人と共に軽く鍛練を行い、落ち着いてから2日目の仕事に繰り出した。

 仕事中にコルザに確認がてら聞いてみたが、『義賊パーティ』のアジトはまだ見つからないらしい。


 もっとたくさん目があればいいのになぁとコルザはボヤいていた。


 沢山の目・・・。 俺はブリランテが使っていたらしい、『空間把握』『全』を思い出す。

 村中の情報を把握できるすごい『魔術』だった。 もし、使用することが出来たら簡単に見つかるのだろうか。

 まぁ、無いものは無い。

 あるもので何とかしなければならない。


 俺にも出来ることはないだろうか?

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