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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第二部 少年期 前編 『人形編』
120/564

『コネクシオン・インディゴ』『再び』

 翌日。

 昼過ぎ。

 

 今日は折角の休日である。

 いつもよりゆっくり睡眠をとり、疲れを取った後は体力と体作りをサティスと行った。

 街中を走るというのは、存外気持ちの良いもので、春の朝日と風を受けながら走るのは良い物だった。

 戻ってから朝食を摂り、休憩後『道場』でコルザ、ラーファガを交えた軽い鍛錬を行った。

 キリの良いころ合いで切り上げると、ちょうど昼食が用意してあり、鍛錬していた4人で仲良く平らげた。 コルザの変わりに『建国祝賀会』の見回りをしに行ったコラソンを見送った後、自由行動となった。

 コルザは部屋で二度寝。

 サティスは、『剣舞術』をやりたいと『道場』に戻り、ラーファガはそれについていった。

 多分、サティスにとっては『剣舞術』を舞っているときが一番楽しくて心安らぐことなのだろう。

 前世の俺にとっての漫画を読むという行為と同じかもしれない。


 さて、取り残された俺は、久しぶりにゆっくりデッサンでもと思っていたのだが、紙がないことに気づいた。

 『樹皮紙』が切れてしまったのだ。

 作る暇もなかったなと後ろ頭をかいていると、『冒険者ギルド』で見た出来の悪い紙を思い出した。

 どうせ練習用なのだ。 紙の出来に文句はない。 むしろ、思う存分書き込めるという物。

 と、思い立ち、一番可能性の高い『ハッピーセレクター』に出かけた。

 ついて探してみると、案外早く見つかった。

 

 『作家ギルド』。

 本屋さんである。

 店長と思われる、人族の眼鏡をかけた濃い目のおっさんが一人受付に座り、紙の本が大量に販売されていた。

 その棚の一か所に紙があった。

 値段を見ると、それでもなかなかの値段だった。

 とりあえず、10枚ほど購入し、腰のポーチにしまって『ハッピーセレクター』を後にした俺は、余った時間の使い方を考えた。

 そこで、ふと、『コネクシオン・インディゴ』さんの事を思い出したのだ。

 協力できることがあったら協力しますと言って出て行ったままだ。

 

 正直あまり会いたくはないが・・・。

 時間もあるし、行くとするか。

 

 〇


 『城下街』『ディナステーア』。

 『東区』『異世界召喚研究所』。

 『研究員寮』。

 『コネクシオン・インディゴの部屋』。


 と、いう事で俺は、再び『コネクシオン・インディゴ』さんのお部屋にお邪魔していた。

 部屋に漂う紅茶の香りと混ざる、柑橘系の大人の香水の匂い。


 「あ、あああ、ありがとうございます! ほ、本当に来てくれるとは思ってなかったです! あ! す、すみません。 うっうるさかったですよねっ」


 俺の前の席で、ふくよかな胸の前で指をもじもじさせながら、首を傾げつつ眉をハの字にしながら謝る『コネクシオン・インディゴ』さん。

 自分で言って自分で謝っていたら世話がない。


 「い、いや、大丈夫ですって! 謝らないでください!」


 俺は一生懸命諭すが。


 「い、いえ! 本当に謝らせて下さい!」

 

 言いながら立ち上がり、俺の元に歩み寄ってくる。

 お風呂上りなのだろうか? いい匂いがした。

 ・・・って。 ちょーいちょいちょいちょい。

 なんで俺はこの人と話していると調子が狂うんだ。

 唐突に『コネクシオン・インディゴ』さんが膝をついた。 上目遣いで見つめてくる。


 「謝るのは、今回だけではありません! この間の事や今までの全部を、あ、あああ、謝らせてくださいぃい!」


 潤んだ瞳で、年上のお姉さんが上目遣いで見つめてくる。


 まずいまずいまずい!

 落ち着け! 見た目は年上だが、俺の精神年齢は70歳。

 相手は子どもと同じさ! ・・・多分。

 いや、いやいやいや。

 何を言ってるんだ俺は!


 「わっ分かりましたから!! もう良いですから!」


 俺はそっと肩を押して離す。


 「おっ怒っていないのですか・・・?」


 ひどく怯えた声で言う。

 怒るも何も、そんなに怒るようなことはされていない。

 前回の事も十分謝ってもらってる。


 「おっ怒ってないですから! それより、ほら、研究のお手伝いが必要なんですよね!」

 

 話題を無理やり変えることでこの変な気持ちを切り替える。


 「なっなんて心の広いお方・・・。 あ、あああ、ありがとうございます! 許して頂くだけでなく、手伝いまでもして頂けるなんて!!」


 言いながら抱き着いてきた。

 顔が埋まる。


 「ありがとうございますぅう!」


 柔らかい・・・良い匂い・・・。


 「ふぁっふぁなれてくらふぁい!!」


 俺は必死に引きはがした。


 「あっす、すみません」


 手を合わせて謝ってくる。

 くっ可愛いなこのお姉さん・・・。

 だぁかぁら! もう! いい加減にしろ!


 俺は深呼吸し、気を取り直す。

 紅茶を一口。


 「それで。 自分に何が出来るんですか?」

 

 努めて冷静に、俺は出来る手伝いを聞く事にする。

 

 「はい! よくぞ聞いてくれました! それはですね! 近くに居てくれるだけでいいのです!」

 

 「え? いるだけ?」

 

 「はい! と、いうのも!」


 両手をグーにして力説を始める。


 「この世界での異世界召喚の研究の始まりは、約1億7千5百年前にさかのぼります! その日、『始祖』の一人である私の祖先、『インディゴ』様が趣味の召喚魔術の研究をしていました! そこには仲良しでよく同じ場所で魔術を使っていた始祖の一人、『アスール』様が居ました! その日もいつも通り談笑しながらいつも通り『インディゴ』様が『召喚魔術』を使いました! するとなんという事でしょう、この世のものではない不思議な生物が召喚されたのです!! これが異世界召喚の始まりでした! その日から来る日も来る日も研究を続けて、間違いも犯しながら、諦めずに異世界召喚を研究し続けました! 彼らの努力は子々孫々に受け継がれ、とうとう、レイ暦200年。 お2人の意志を継いだ2人が『勇者召喚』を成功させたのです! つまりです! 何が言いたいのかと言いますと!!」

 

 吃音は何処へ?

 自信満々に語るシオンさんは身を乗り出してくる。


 「異世界召喚を成功させるには『アスール』様の血を引く者の存在が不可欠という事です!」


 なるほど・・・。

 つまり、『アスール・アロサール』を祖父に持つ俺の存在が成功には必要だと。

 俺の母である『ブリランテ』が手伝っていたとのもこういった理由だったのだろう。


 「母さんが協力していたのはそのためか」


 「あっ・・・あの。 お母様の事は何と言ったらいいか・・・」

 

 「あぁ、大丈夫。 2人で乗り越えたから」

 

 「2人?」

 

 「幼馴染のサティスっていう、赤い髪の女の子なんですけど、見た事ありますか?」 

 


 「赤っ!?」

 


 ひどく驚き、後ずさるシオンさん。

 一体どうしたと言うのだろうか?

 

 「あ、ご、ごごご、ごめんなさい! ・・・もしかして、性は『ロホ』ですか・・・?」

 

 「いや、グラナーテです」

 

 「ぐっ!!??」

 

 更に後ろに引き下がるシオンさん。

 

 「いや、どうしたんですか?」

 

 「ふぇっふぇふぇふぇ、フェリスくん! わ、わわわ、悪い事は言わないですぅ! そ、その人とか、関わるのは辞めた方がい、良いかと思いますぅう!」

 

 「・・・は?」

 

 「ひっ!」


 いや、そんなに怯えなくても・・・。

 ちょっとイラっときたけども・・・。


 「あ、すみません。 訳を聞いても?」

 

 「わ、わわわ、私がまちがってましたぁあ! た、たたた、大変もうしわけありませぇぇえん!!」

 

 泣き出してしまった。


 「いや、本当に大丈夫ですから・・・」


 『コネクシオン・インディゴ』さんを慰めていたら日が暮れていた。

 手伝いはまた次の機会だなこりゃあ・・・。


 ・・・それにしても赤い髪にはやっぱり何かあるのだろうか?

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