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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第二部 少年期 前編 『人形編』
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『建国祝賀会に向けて』

 『城下街』。

 『南区』『ハッピーセレクター』前。


 あの後、『城下街』に戻るまでにも『魔獣』を見つけ次第討伐する事を繰り返していたら、いつの間にか夕暮れとなっていた。

 閉まってしまう前に、急いで『冒険者ギルド』に戻り、『階級』を『金』に上げて貰えたが、外に出る頃にはもう、すっかり夜になってしまっていた。

 ギリギリで駆け込んだにも関わらず、レセさんは嫌な顔をせずに対応してくれたのには感謝だ。

 と、言ってもレセさんからしてみると、依頼が結構減った事と、『金階級』の『冒険者』が増えた事は、大変喜ばしいことなのだそうで、残業する価値があったらしい。 申し訳なさそうな俺を察してか、ヒソヒソと担当している冒険者から『金』階級が出たため、ボーナスが出る事も教えてくれた。

 綺麗で優しい受付嬢に当たって、本当によかった。

 これからも、出来るときは依頼をこなして助けになれれば良いなと思う。


 『ハッピーセレクター』を出て少し歩いた頃。

 俺は、『冒険者証』を取り出す。

 家や店から漏れる明かりでそれなりに明るいため、ちゃんと見ることができた。


 『階級 金』。


 上がった階級の文字を指でなぞる。

 簡単に上がってしまったものだから申し訳ない気持ちはある。

 だが、この世界に転生してから努力した結果だ。

 こうやって、目に分かる形で評価して貰えると込み上げてくるものがある。

 喜ばしいことだ。


 「これで、条件の一つは達成だね」


 俺が後ろで『冒険者証』を見つめていることにコルザが気づいたのだろう。 振り返って俺に言った。

 右隣のサティスもうんうんと頷いてくれている。


 「あぁ、今日はありがとう。 付き合ってもらって」


 本当は1人でいくつもりだったが、時間を作ってくれて、当然のように一緒に来てくれたのだ。

 今の俺には返せるものはない。

 だから、せめて言葉だけでもと思っての事だ。


 「いいんだ。 ちょうど連携も試しておきたかったからね」


 「これくらい当然よ! 沢山『魔獣』を狩れてよかったわ! これで『城下街』のみんなも少しは安心できるかしら」


 コルザもサティスも何ともないと言ってくれる。

 本当に優しいやつらだ。


 「さて、これからの事だけど、 明日は1日休みにしようと思う」


 話を変えるコルザ。


 「やすみ? いいのか?」


 『建国祝賀会』に向けて色々やらなきゃならないんじゃ?


 「うん。 フェリスもこっちに戻ってきてからずっと動きっぱなしだし、サティスだって動きすぎだ。 僕もそろそろ一度休息をとらないと倒れてしまう」


 大きなあくびをする。

 ここ2,3日、ずっと眠そうなのだ。


 「随分とお疲れのようだな」


 「うん。 まぁね。 父さんに頼まれた仕事が忙しくて」


 「仕事?」


 「うん。 深夜じゃないとできなくてね。 最近睡眠時間が足りないんだ」


 「そうだったのか」


 「そうだったんだよ。 ま、これからは、2人にもそれを手伝ってもらうんだけど」


 「え?」


 サティスが首を傾げた。


 「あ! それって、もしかして『建国祝賀会』の事?」


 続けて思い付いたのか、サティスは問いを投げ掛ける。


 「正解。 5月5日は『建国祝賀会』の一番盛り上がる最終日。 それに向けて、2週間前から『南区』の盛り上がりは一段と増す。 出店の制限が解除されるんだ」


 「制限されていたのか?」


 初耳だ。


 「うん。 ひと月前から開かれている『出店』は、『レイ王』の許可を得ているんだ。 だけど、2週間前からはそれが撤廃される。 出したい人が自由に出せるんだ」


 「それは楽しそうね!」


 「うん。 楽しいよ」


 「でも、なんでそんなことを?」


 「さぁ? 父さんの話では、『レイ王』が貸しを作るためだって言ってたけど良く分からないよ」


 俺は腕を組んで考える。

 良く分からないが、『出店』の中に貸しを作っておきたい『貴族』とかが居るのだろうか?


 「さて、話を戻すけど。 2週間前から『出店』が増えるんだ」


 「今以上に盛り上がるのね!」


 サティスはわくわくと言った表情である。


 「うん。 その通りだ。 だけど、人が増える分、問題も増える」


 「窃盗、もめごと、詐欺・・・。 パッと思い付くだけでも色々あるな」


 「その通り、話が早くて助かるよ」


 コルザがニヤッと笑って続ける。



 「僕たち『ミエンブロ』は、『建国祝賀会』の成功に向けて、問題の早期発見と解決を目指し、『騎士』や『自警団』。 加えて『冒険者』らと協力しながら『城下街』を一日中見回ることになる!」



 「それはつまり、みんなと一緒に『建国祝賀会』を成功させようってことよね!? それに、成功できたらファセールと一緒に遊べるのよね!?」


 サティスが確認のためにコルザの元に駆け寄った。


 「その通り! ただ、ちょっと気になる事があってね」


 「気になる事?」


 俺は問う。

 サティスも首をかしげている。


 「うん。 それは、『義賊パーティ』と『人形の徘徊』だ」


 「『義賊パーティ』は、昨日会ったあの3人よね?」


 「うん。 僕が父さんに頼まれた仕事の一つは、彼らの寝床を突き止める事。 目立たない時間帯がいいから深夜に探してるんだ」


 それが眠そうにしていた理由か。


 「そうだったのね! でも、どうして『建国祝賀会』と関係あるの?」


 「それは、彼らが『建国祝賀会』に向けて、何やら準備を進めているらしい情報が入ったんだ。 ひと月ほど前に、『雑務隊』の人が『東区』に潜入して、集会に参加して情報を掴んだらしい」


 「情報って?」



 「『建国祝賀会』で『革命』を起こすつもりらしい」



 「一大事じゃないか! ・・・あれ、でもあいつらって、俺とサティスと同い年だよな?」


 そんな発言権があるとは思えないが。


 「そうだね。 でも、年は関係ない。 なぜなら、『義賊パーティ』は、『東区』にとって『英雄』のようなパーティだ」


 「そうなのか」



 「助けない『神』より、助けてくれる『英雄』って言葉もあるくらいだ。 『東区』のみんなは『義賊パーティ』の言葉を何よりも聞くと思っていい」



 「それじゃあ、早くとらえた方がいいんじゃないか?」


 「僕もそうしたい。 でも、見つけられないんだ。 『東区』にあるとは思うんだけどね・・・。 それに、今はもう一つ、『人形の徘徊』もある」


 「それは?」


 「この間の大量の『人形』を覚えているかい?」


 頷く。

 この街に入ってすぐやった仕事。

 そこでサティスと再開したのだ。

 忘れるわけがない。


 「あの時の人形が、深夜の『城下街』中を徘徊しているんだ。 最近は目撃情報も増えてね。 今は何も問題を起こしていないが、一応見つけ次第破壊している。 『建国祝賀会』に影響を及ぼされても困るしね。 でも、数が最近は増えすぎている。 今じゃ、すっかりこっちを主にしながら、『義賊パーティ』の寝床を探す感じになってるよ」


 「コルザ・・・大変だったのね」


 サティスが心配そうに見つめる。


 「なに、これも『建国祝賀会』を邪魔しそうな物を取り除いて、成功させるための大切な仕事だ! 『建国祝賀会』は、個人的には大好きな行事なんだ。 姫抜きにしても成功させたい・・・。 あぁ、大丈夫だよ。 無理はしない。 倒れて参加できなくなったらそれこそ本末転倒だからね。 僕が無理しなくて良いように、明後日からは2人も一緒によろしく頼むよ!」


 「えぇ、任せて! 明日ゆっくり休んだらしっかり手伝うわ!」


 胸を張るサティス。

 明後日から本格的に忙しくなりそうだな。


 「よし! 一緒に頑張ろう!」


 俺もコルザに向かってガッツポーズをする。


 「うん。 頼りにしてる」


 にやっとした、いつもの笑い方で返すコルザだった。

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