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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第二部 少年期 前編 『人形編』
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『邂逅』『純白の少女』 2

 「ここが、2人に見せたかった場所だ」


 コルザを追いかけてしばらく歩くと、左右に扉が並んだ長い廊下にたどり着いた。

 コルザはそのうちの一室に入っていった。

 俺達も追いかけて入る。

 中は、大きな部屋。

 ダークブラウンで統一された正方形の室内。

 右の壁の中心には、隣の部屋と繋がる扉。


 「これは・・・」


 俺は驚いた。

 沢山の『肖像画』が飾られていたのだ。

 飾り気のない室内に飾られる、大小様々な『肖像画』。

 それは、四方の壁に飾られていた。

 室内の中心にサティスと2人で向かい、その場で体を回して全てに目を通す。

 

 「・・・フェリス。 これって」


 その『肖像画』に描かれている人物たちを俺とサティスはよく知っていた。


 「嘘だろ・・・。 どうして?」


 「驚いたかい?」


 「驚くに決まってる!」


 「そうよ! だってこの人たちは!」


 俺の隣でサティスが嬉しそうな笑顔になる。



 「プランター村のみんなだわ!!」



 そう。

 この『肖像画』に描かれているのは、今は亡き、『プランター村』の住人たちだった。

 

 「これは、どうなってるんだ?」


 俺はコルザに問う。

 コルザは笑顔で答えてくれた。


 「この城には『記憶魔術』と言われる『絶滅危惧魔術』の持ち主である長耳族がすんでいるんだ。 彼の趣味は人の絵を描く事でね。 善意で人の記憶の中にある人物の絵を描いてくれているんだ」


 コルザが教えてくれている間にサティスは駆け出す。

 すべての『肖像画』を近くで見て回る。


 「またみんなに会えるなんて! ジュビア、ソシエゴ、カリマ、ブリッサ、デスペハード、ベンタロン、ビエント、アイレ、ベンディスカ、あ、あっちにはお父様もいるわ! ・・・あっ・・・あぁ・・・フェリス」


 一番奥の壁。

 その前で、サティスが立ち止まった。

 俺は彼女の隣に駆け寄って見上げる。



 「母さんたちだ」



 他より、一回り大きな、2つの『肖像画』。

 

 『ブリランテ・エレヒール』。

 『オブヘディモ・セドロ・グラナーテ』。


 2人の母が笑みを浮かべていた。


 俺たちの後ろにコルザが来る。


 「この階層は、一般公開されている場所でね。 人族の『英雄』や『偉人』の肖像画を飾る事になっているんだ。 国のために戦った人たちを忘れないために」

 

 コルザは真剣な顔で語る。


 「プランター村に住んでいた人たちは、間違いなく人族を救った『英雄』たちだよ」


 母さんたちはこの場所で、人々の記憶に残り続ける。

 死後、沢山の人に覚えていてもらえる。


 「・・・こんな最後なら満足できるのかもしれないな」

 

 そんなことを思った。

 

 「今のは聞かなかった事にしておくよ。 ここに飾られている人達は死にたくて死んだわけじゃないんだから」


 コルザが俺を睨んだのが分かった。


 「・・・すまん」


 だがな、コルザ・・・。

 誰にも看取られず、誰にも覚えてもらえない人生は空しいんだ。


 「はぁ・・・。 さて、気を取り直して要人の元へ行こうか・・・ん?」


 コルザがため息をついて振り返る。

 出入り口に戻ろうと歩き出して何かに気づいた。

 彼女の視線を負う。


 隣の部屋への扉が少しだけ開いていたのだ。


 コルザが扉に進んで、開ける。

 そこから先の室内が見える。

 同じような作りの部屋。

 同じように、何枚かの『肖像画』が飾られていた。

 サティスと2人、コルザを追いかける。


 「うん。 要人がいたよ」


 中を覗き込んで、俺は息を飲んだ。


 視線の先、この部屋で母たちの『肖像画』が飾られている場所と同じ場所。 そこに飾られた『肖像画』を、俺とサティスが見上げていた時と同じ体制で見上げる『純白』がいた。 長い純白の髪は、床まで落ちて、美しく広がっている。 体躯は小さく華奢。 今にも折れてしまいそうなその身を包む純白のワンピースが儚さを醸しだす。


 俺は彼女に、一度だけ会ったことがある。

 去年、ボカの腕の中で眠る彼女を見た。

 あの時もそうだった。

 『純白の少女』が視線に気づいたのか俺たちを振り向いた。



 赤い瞳と視線が合う。



 動悸。

 動けなくなる。

 そのあまりの美しさに息を飲む。


 隣のサティスも同じような反応を見せていた。


 「・・・綺麗だわ」


 呟いたサティス。

 頬を赤くし、見惚れる『深紅の少女』。


 対する『純白の少女』。

 彼女は、サティスの呟きを聞いたのだろう。

 俺たちを見て頬を赤く染めていた。



 これが、俺とサティスとファセールの出会い。



 俺とサティスの心の支えとなる。

 大切なもう1人の家族。

 『ファセール・ブランコ』との邂逅だった。

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