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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第二部 少年期 前編 『人形編』
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『邂逅』『レベリオン』 3

 俺は、サティスの足を引っ張ってしまった事を反省しながら短剣を腰の鞘に納める。

 しかも、逃げられてしまった・・・。


 「追いかけるわ!」


 サティスの声が響いた。

 大きな煙幕に周りが見えない。

 

 「追わなくていい! ちょっと泳がせたい。 それよりも、この煙幕が邪魔だ」


 コルザの声も聞こえる。

 

 「『取出』 サティス!」


 コルザが使ったのは、『空間魔術』の1つ。

 『空間』に干渉することが得意だった俺の母、ブリランテに対して、ボカやコルザは『亜空間』と呼ばれる、この世界にあるもう1つの空間に干渉することが得意なのだ。

 ボカが、使っていたあの黒い穴は、『亜空間掌握』と言う『魔術』。

 なんでも、自分の『亜空間』を作り出し、それを自由に使うことができるという『魔術』らしい。

 こちらも、体力によって入れられる量や、『亜空間』の広さを調整できるらしい。

 俺にはいまいち、その『亜空間』という物が想像できなかった。

 前の世界の事ならいくらでも想像できるんだが、それとは違うのだ。


 「わかったわ! あと、『扇』ありがとう!」


 後ろでコルザが『取出』によって、取り出した何かを受け取ったのだろう。

 元気にお礼を言っていた。

 『扇』と聞こえたが、扇子か?

 扇いで飛ばすとかいう、ほほえましいことではないだろうな。



 「「『扇舞術』『神楽』」」



 2人の声が聞こえた。

 同時、煙幕が吹き飛んでいった。


 開ける視界。

 その中心で、手に扇型の武器をもつ2人がいた。


 「うおっ」


 話を聞いてはいたが、『剣舞術』以外の『剣術』を使ったサティスに驚く。

 動きは、日本舞踊を彷彿とさせる美しさ。

 ゆっくりと扇で口元を隠すサティス。

 コルザはすぐに扇を畳んでいた。


 「ふふんっ! すごいでしょ!」


 サティスが元気な声で自慢げに言う。

 妖艶なしぐさが大人っぽく見えた。


 「あぁ! すごいな! 綺麗だったよ!」


 「ありがとう! 嬉しいわ! 今度、他のも見せるわね!」

 

 そりゃ楽しみだ。

 

 「良いから返してくれ」

 

 言いながらコルザがサティスから扇を返してもらい、空間に出来た穴にしまう。


 「ありがとう! 便利ねそれ!」


 「うん。 さて、それよりあのお姉さんはどこかな?」


 言いながらコルザは、いつの間にか取り返していたらしいカバンを、扇と取り替えるように穴から取り出して周囲を見渡す。

 女性を見つけたらしい。 まっすぐ進んでいく。

 俺とサティスもそれに続いた。

 周囲の人々は戦闘が終わったことを察して、何事もなかったかのように流れを再開させ始めていた。

 この国ではこういったことはよくあるのだろうか?


 「さっきの3人はなんだったの?」


 サティスが俺の隣でコルザに聞く。


 「『義賊パーティー』だね」


 「ぎぞく?」


 サティスが首を傾げる。


 「人の為に悪い事をする奴らだ」


 俺が答える。

 人のために悪い事をする・・・と呟きながら意味を理解しようとしているサティス。

 そうこうしていると、女性にたどり着く。

 コルザがカバンを返した。


 「はい、ごめんね、あいつらは逃がしちゃったけど、カバンは取り返したから」


 「ありがとうございます! ・・・この中には父への贈り物が入っていたので助かりました!」

 

 美人が腫れた目を擦って笑顔でお礼を言っていた。

 

 絵になるなぁ・・・。

 

 「フェリス、人を助けるのに悪いことをするのは、良いことなのかしら?」

 

 俺は突然聞かれて答えにつまった。

 人にとって良い事であっても、別の人から見れば悪い事なんてよくある話だ。

 必要悪なんて言葉があるくらいだし、仕方のない事ではあるのかもしれないが・・・。


 「僕はそうは思わない。 過程はどうあれ悪い事は悪い事だ」

 

 「そうね。 そうよね。 その通りだわ」

 

 ちょっと悲しそうに胸を抑えるサティス。

 その様子にはっとした顔になるコルザ。


 「あぁ、ごめん。 考えが足りなかったよ」

 

 俺もコルザもサティスも、1年前の事を思い出す。

 サティスは、自身の身を守る為とは言え、仲間の命をその手で奪ったのだ。

 

 「ううん。 大丈夫よ! そうよね。 それなら、しっかり償わなきゃ」


 サティスが頷いて自分を納得させていた。


 「そのとおりだな。 次こそ一緒にとっ捕まえてやろう!」


 俺はサティスを肯定する。


 1人じゃないからなサティス。

 俺も一緒に背負うからな!


 俺の思いが伝わったのか、笑顔で頷いてくれた。


 「・・・はぁ」


 なんだ?

 コルザ、なんでため息なんかつくんだ?


 俺と目があったコルザが首をふった。


 「なんでもない」


 なんだよ。

 気にはなるが、教えてくれそうには無かった。


 その後、俺達は女性にお礼として少しのお金を貰い、最初の目的地である、パン屋さんに向かった。

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