卵か夢
学校に行けなくなった少女たちと話す機会がありまして、彼女らの印象を朗読劇にしてみました。
いつだって、犠牲になってきた。
そう思い始めたのはいつだったのだろう。
「 一年生になったら〜。一年生になったら友達百人出来るかな」
テレビに流れる陽気な歌を一緒に歌う。
また新たな一年が始まるよと、春の訪れを伝えてくる。
小動物の赤ちゃんを見て、幼稚園児たちが首を傾げながら一つの言葉を繰り返している。
「かわいいー。」
「かわいいー。」
「わー。かわいいー。」
アニメテレビを観れば理想の主人公が出てきて、みんなに囲まれて幸せそうに笑っている。
優しくて強くて格好良い、みんなが夢見る理想の人物。
--あぁ、"これ"が正解なのか--
そうきっと、私は目指すものを間違えてしまったの。
小学生の頃、頑張って毎日にこにこ笑ってた。
学校でも家でも頑張って楽しそうに振る舞った。
そうするとみんなが笑顔になるから。
それが出来る自分が誇らしかったし、それが"正解"だと思ってた。
中学生に上がってからは、二次性徴か成長期か分からないけど身体が重くなった。
ご飯も少なくして可愛く、運動も勉強も頑張っているのに。
1番たいせつな弾けるような笑顔が作れない。
そんな私を見て、みんな私から去っていった。
そんな自分が許せなかった。
理想の自分以外を誰かに見せるのも嫌だった。
だって嫌われてしまう。
気がついたら学校に通えなくなっていた。
家族に嫌われるのが怖くて、理由も言えずに部屋に篭ってサブカルチャーを漁っていた。
--どうしたら、みんな私を好きになってくれるのかな--
今の自分に出来る、理想の人物を探してネットの海にのめり込む。
気がついたら、身体がしんどくて外に出られなくなった。
私……なにをしているんだろう。
惨めったらしく親の脛を齧りながらこのまま死ぬのかな。
家族は好きに生きていいって言うけど、実際のところ私に良い娘でいることを求めてる。
私らしく生きるってどうしたらいいの?
みんなが求めるスーパーヒーローになりたかった、なりたかったよ。
でも、なれなかった。
そんな私は死んだ方がいいの?
そんな悲しいこと言わせないで。
私はみんなを笑顔にする為に、ずっと頑張ってきた。
頼んでないだなんて言わないでよ。
夢見た私が悪かったの?
夢を求めてる大人に言われたくない。
諦めることを教えて。
等身大で幸せに生きる方法を教えてよ。
私はいま、こんなにも苦痛に灼かれているのに。
家族は今日も、偉そうに一般社会の常識を説いている。