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泡沫のアクリュース【1800PV達成!】  作者: 稲荷ずー
一章 闇に潜む眼

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12/13

十部 見つめる目

2553年 9月11日 : 天気:曇り 気温:21.6℃ 湿度:56% 場所:サフォーリル特別警察局地下通用口


 それぞれの武器を携えて、ユノたちは出発した。ルエは、(アクリュース)のコントロールを制御できる杖を持ち、ユノは片刃の剣を持っていた。「本当なら、安全な場所で戦える銃を選んであげたいんだけど、誤射が怖いからね。これで我慢して」と言われ、ルエから渡された物だった。

 ユノが渡された剣には、他の武器のように、(アクリュース)に干渉する力はない。下手にユノの(アクリュース)を刺激するのは良くない、という小夜の判断だった。


「さあさ、じゃあ行こー。運転は私がするね〜」


 ルエの声が、地下に響く。

 ルエが、武器を積み込んだ輸送車の運転席に乗り込んだ。


「エリナちゃん、隣に座ってー!」

「じゃあ、俺たちは後ろに座ろうか」


 エリナが助けを求めるような目でこちらを見てきたが、面倒くさそうなのでユノは無視した。小さく、舌打ちが聞こえた気がする。同期だというのに、2人の心の距離はだいぶ空いてしまっている気がする。


「シートベルトは付けたかな?!」

「ルエさん、テンション高いですね。

 ……イバンさん?」

「それじゃあ行くよ! 3! 2! 1! ゴー!」


 ルエが叫ぶのと同時に、車が猛スピードで発進した。地上へ続く坂を登り、壁の外へ勢いよく飛び出す。車体が少しの間浮き、浮遊感に襲われた次の瞬間には、尻から頭のてっぺんまで突き抜けるような衝撃が走った。


「ちょっとルエさん!」

「ルエ! 止めて!」

「んー? 大丈夫ー? もっと上げてくよー! ちゃんと掴まっててね!」


 ユノとエリナが悲鳴を上げるのもお構いなしに、ルエが運転する車は、凸凹の荒野を、土埃をあげながら猛烈な勢いで駆け抜けていく。運転席の速度計の針は、およそ時速100キロを示している。車は激しく揺れ、ユノは尻や頭をぶつけまくった。

 20分ほど走って、車はようやく急ブレーキをかけて止まった。ドアが開き、ユノとエリナがよろよろと出てくる。あのエリナでさえ、不満を言う元気はないようだった。


「ここは……?」


 おぼつかない足でなんとか前を向くと、そこにはぼろぼろになった廃病院らしき建物があった。壁には(つた)が生い茂り、割れた窓からは真っ暗な闇が見える。


「よぉ〜し、この廃墟の中を探索してみよー!」

「この中を行くんですか?!」


 ユノが半開きになっている玄関扉を指して言った。時間はまだ昼で、外は明るいのに、建物を1歩入ったところは先の見えない暗闇になっている。


「そうだよ。小夜にお願いされたんだ。そこの森見える?」


 ユノとエリナは、廃病院の後ろにある森を見た。葉が繁り、地面に日が一切差さないため、数メートル先も見えない。正面の廃病院と相まって、恐ろしい雰囲気を醸し出している。


「この病院にはね、あの森で発生した人型の(アクルース)たちが住み着いてるんだ。こんなところ誰も来ないから放っといて良いんだけど、どうせなら報酬もらえる方が良いでしょ、って」

「報酬?」

「そう。ここの管理者から、(アクルース)の討伐依頼がでてるんだってさ」


 森を見ていたエリナがふと、何かに気づいた。


「……見られてる」

「え?」

「ほら、あそこ。あの木の陰から、こっちを見てるのがいる」


 エリナが示している先を見るも、ユノには何も見えない。ただ、エリナにそう言われたせいからかもしれないが、たしかに、森に潜む何かに見られているような気がする。


「ちょっと、怖いこと言わないでよ」

「ユノ君には見えない?」


 イバンがユノの肩に手を置いた。イバンの指はすらりと細く見えるが、実際に触れてみるとごつごつとしていた。


「……いるんですか?」

「いるよ。君に1つ、良いこと教えてあげるよ。今から入る建物にも、そいつらがうじゃうじゃいる」


 ユノはもう、行く気をなくしていた。(アクルース)という化け物と戦うだけでも怖いのに、こんな、いかにも出そうな建物に入らなければならないなんて。


「エリナちゃん、これ持って」

「?」


 イバンは、持ってきた鞄から何かを取り出した。それは、手のひらサイズの小型の機械だった。


「これは?」

「これは、融結(ゆうけつ)率測定機。名前の通り、空間の融結率を測ってくれる」

「融結率ってなんですか?」


 ユノが、エリナの手の中の機械を覗き込んで言った。


(アクルース)は、特定の空間と強く結びつく。その結びつきの強さを表すのが、融結率だ。高ければ高いだけ、その場所は危険ってことになる」

「融結率が高いとどう危険なの?」


 エリナが質問すると、イバンがうーんと唸って口を開いた。


「例えば……陸にいる魚は、本来の力の10分の1も発揮できない。でも、水の中ならば、100パーセントに近い実力を発揮できる。

 じゃあもし、魚の(アクルース)がいたとしたら、どうなると思う?」

「水がないところでは、本来の力を発揮できなくなる」

「そう、その通り。そして、融結率が高くなると、そこはその(アクルース)にとって有利な場へと変わっていく」

「つまり、さっきの例で言えば、その空間が水で満たされていくってことですか?」

「そう、その通り」

「……それに、水に満たされた空間では、生身の人間はほとんど手も足も出なくなる」

「そう。戦況が一気に逆転してしまう。だから、(アクルース)と戦うときには、常に融結率を確認してないといけない」


 そこまで言うと、イバンは何かを思い出したのか、手を叩いた。


「そうだ。昔、テレビでドーランジュの騎士競技を見たことがあるんだ。真紅騎士、ロサの試合だったかな」


 ロサ、という名を聞いて、エリナの表情が一瞬、厳しくなった。たしか、ドーランジュはエリナの生まれ故郷だったはずだ。


「ロサはあの試合で、競技場全体を覆うほど大規模な(アクリュース)を使ってた。あれほど強力な(アクリュース)だったんだから、あの時の競技場の融結率は、きっと90パーセント近くにまでなってただろうね」


 エリナが、はあ、とため息を吐くのが聞こえた。


「さっき、融結率は(アクルース)と空間との結びつきって言ってませんでした? その、ロサさんは人間なのに、空間と結びつけるんですか?」

「あー……。(アクリュース)(アクルース)は似てるんだよ。性質が。だから、〈霧祓い〉のなかには、空間を支配できる人もいる」

「へー」


 3人が話していると、先に様子を見に行っていたルエが帰ってきた。


「ぐるっと見て回ってみたんだけど、(アクルース)の数がちょっと多いくらいで、特に異常はなさそうだったよ。途中、何体か(アクルース)を祓ってきたけど、どれも雑魚だった」

「オッケー。じゃ、入ってみようか。エリナちゃん、その測定機をちゃんと見ててね」


 イバンが歩き出し、ユノとエリナがそれに続く。ルエは3人の後ろを守るように歩き出した。

 キイィ、と金具が軋む音が響き、重い扉がゆっくりと開かれる。暗闇に足を踏み入れると、あまりの静けさに、耳鳴りが聞こえるような気がしてくる。


「ねえ」


 ユノの後ろで測定機を見ていたエリナが、いきなり声を出したので、ユノはびくっと体を縮めた。がらんと広い空間のせいか、声が響いて大きく聞こえる気がする。


「融結率って、普通どれくらいあるのかしら?」

「うーん。普通は、5とか6とかかな。高くて15とかそんくらい」

「ルエによれば、ここは比較的安全なのよね?」

「そうだよー」

「なら、この測定機、修理したほうが良いわよ。画面の融結率の数値は、32パーセントってなってるから」


 イバンとルエが、息を呑むのを感じた。

相談というか質問というかなのですが、100メートルや100キロといった単位を、m、kmのようにアルファベットで示すか、あるいは、メートル、キロメートルのようにカタカナで示すか、どちらのほうが世界観を崩さず、かつ読みやすいですか?

Twitterなりなんなりで教えてくださると嬉しいです。

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