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獣らしく男らしく


 Ash Garden2日目。今日は朝からのログインだ。

 昨日は東の森で様々な動物と戦った。

 

 ナマケモノの中に猿が入っている生き物のアンスロウスと中に猿が入っていないスロウス、こちらを見つけ次第暴れ回るバーサクゴリラに爪に毒があるプレイグベア。どこからともなく現れて3匹で風の刃を飛ばして攻撃してくる鎌鼬、魔法の使用を阻害するらしい鳥と東の森には様々な敵がいた。

 僕は何度も死んで、アイテムをぶちまけながらもめげずに戦い何とか相手の行動を理解して勝利を収めてきた。

 結果、レベルが27まで上昇して全体的にステータスが上がり、更に負けなくなった。



Name Lion

Lv-27

Job -

Sub -


HP

1510/1510

MP

10/10

STR-65

VIT-80

INT-1

RES-1

DEX-5

AGI-50

LUK-5

SP-0


Skill

『爪撃++』

『咆哮』

『捕食++』

『砕牙++』

『挑戦者』

『獣性EX』

『爪+』

『牙+』


 昨日の戦いでは最低限の殴り合いができるようにとVITを重点的に鍛えた。というか、VITを鍛えてHPを確保していないと鎌鼬の攻撃がめちゃくちゃ痛かったのだ。

 後、スキルがちょっと成長した。『獣性』がEXになったし(いまだにスキルの効果はよくわからない)『爪』と『牙』のスキルを得てさらにそれも割と成長した。

 このスキルは使うと爪や牙が大きく鋭くなったりするスキルだ。これを使ってアンスロウス(ナマケモノモード)にかみつくと結構いやそうな反応を示したので攻撃力が上がっているんだと思う。


 僕はこのステータスを引っ提げて今日も今日とて東の森。

 VITが上がったことで戦闘後の回復を怠らなければめったなことでは死ななくなった僕は、街から出る前に持っている素材を全部お店で売却して回復アイテムを買ってから街を出ていた。


 こうしておけば、死んだときのダメージが小さいのだ。

 そもそも、肉は食べればいいけど毛皮とか爪とか持ってても仕方がないと思うからいらない。革はなめせば服とか靴が作れそうな気がしたけど、爪とか本当に何に使うのだろうか?


 そんなこんなで身軽な僕は東の森で戦う。

 ここの魔物ももう慣れた。レベルは僕の方が低いだろうが、フィジカルで負けにくくなってきていた。

 まぁ、ゴリラにもクマにも猿にもナマケモノにも未だにパワー負けしてる事実には変わりないんだけどね。

 ただ、そのくらいの差なら人間の知恵でカバーできる。

 つまり、もう僕はほとんど負けなくなったのだ。


 木の上に注意しながら、たまに現れる魔物を倒し森の奥へと進んでいく。


 どこまで森が続いているのだろうか?

 そう思いまっすぐ進み続けた。


 そして、そいつを見つけた。


「t————!?」

 そいつが目に入った時、一瞬で理解した。

 あれが、この森の主だと。

 

 東の森の少し開けた場所にそいつはいた。

 大きな体躯、真っ黒な皮膚、丸い頭、発達した顎に鋭い牙、加えて発達した前腕とその先に生える鋭利な爪。

 この森でも強い部類に入るプレイグベアの死体の上に胡坐をかいて座り、その肉を千切り食い散らかす姿はまさに森の暴君と呼ぶにふさわしい化け物っぷりだった。


 とっさに名前を確認する。そこには『ゴライアスLv55』という文字。予想通りの化け物で、この森の中でもひときわ高いレベルを有していた。

 あれと戦えばほぼ確実に死に戻ることになるだろう。レベルだけで言えば僕の倍もある。


 にもかかわらず、僕の身体は少しずつゴライアスに近づく。

 昨日育てた僕の中に眠っている“漢”が、奴と戦えと言っている。



「よっし、勝負だゴライアス! お前を倒して僕はこの森を出る!!」


 正々堂々真正面から僕は姿を現して、ゴライアスに向かっていった。

 声を上げたことで向こうもこちらに気が付いた。


ゴライアスは僕の姿を確認すると、プレイグベアの死体をこちらに向けて投擲してきた。何とか回避に成功したが、大質量が横を通り抜ける感覚に一瞬ひるんでしまう。


 その一瞬の隙をついたゴライアスは、僕に向けて跳躍をしていた。

 上から両腕を振り下ろしてくる。


「うわあああ!!」

 僕はその落下地点から逃げる。

 ゴライアスの腕は、地面を大きくたたき小さく亀裂を作った。それほどの威力だった。

 あれに当たればただでは済まない。


 僕の本能がやっぱり逃げるべきだと囁いてくる。そのくらい、今の攻撃には迫力があり命の危険を感じさせられた。


「でも僕は逃げない。そして死に戻ってゾンビアタックで勝つなんて漢じゃないこともしない。僕はこの一戦でお前を倒して見せる!」

 僕はゴライアスに向けてそう宣言させてもらった。


 僕はこぶしを握り締めて構える。

 見た感じゴライアスはゴリゴリのパワータイプ。速度も僕よりあるだろう。

 だが、魔法という何をしてくるかがわからないことはしてこないと見た。



 僕はまずは全力で逃げながらゴライアスの行動を観察する。


 ゴライアスは幸い、アンスロウスと同じような発達した両腕による攻撃が主体だった。ただ、違うのは蹴り技も使ってくるということとたまに尻尾で搦手を狙ってくるということ。

 どれも距離を取れば当たらないが、内側に入り込んで攻撃を入れるのは難しい。


 また、稀にものを投げつけて攻撃をしてきたりもする。

 これは絶対受けたらいけない。


 拳大の石を避けた後に後ろにあった木の幹に穴が空いていたのを見てそう感じた。

 ただ、投擲後には少し隙がある。


 これらのことから行動パターンは強化版アンスロウス、またはバーサクゴリラの亜種のようなものだと考える。

 となれば当然つかみ技を持っていたりするはずだからあの手には最大限警戒をしていなければならない。


 そのことを踏まえて、僕は大ぶりの攻撃の後の隙をついて一撃、『爪+』を使って強化した爪を使って引っ掻いた。

 だが、まったくと言っていいほど聞いている様子はない。


「右の横振り、左の横振り、その後は一瞬止まって右の振り上げ……」


 ぶつぶつと分析結果が口から漏れ出ているが、僕はそんなことを気にせず先頭に集中する。


「パターン化はされてない? 攻撃の流れを汲んでいる?」

「尻尾による搦手は全体の割合としては少ないがタイミングがわかりづらい……」

「5m以上離れないとものは投げてこない。逆に言えばそれ以上離れれば投げてくる可能性がある」

「攻撃を当てても向こうの動きが鈍る様子はない。変化も見られない」

「牙の攻撃をするほどの隙は今のところ見られない」

「右の横振り、右の振り返り攻撃……立ち位置によって攻撃の誘導は可能?」

「先手を取っても防御行動はとらない」

「回避にフェイントを入れれば次の回避が楽になる」

「ちっ、かすった。今のだけで体力5%減、20回かすれば死亡。多分直撃は9割以上確定で持っていかれる」

「牙による攻撃頻度は少なめ、隙は大きい」


 一つ一つ、ゴライアスの性能を検証していく。

 冷静になれば避けられない攻撃ではなく、たまにではあるが攻撃もできた。


 問題はこの状況が続いたら倒すまでに時間がかかるということだろうか? すでに戦闘が始まってから20分が経過しているが、その間僕がした攻撃回数はたったの11回。もしこれでHPが1%削れていたとしてもこのペースだと倒しきるまでに2000分、つまりは33時間強もかかってしまう。


 ここいらで少しずつ攻めに転じないといけない。

 いいころ向こうの行動も読めるようになってきた。


「よし、ゴライアスここからは僕のターンだ」

 まずゴライアスの攻撃を搔い潜り爪で一撃、攻撃はなるべく大きく後ろに抜けるように避ける。

 ゴライアスは後ろにいる敵に対しては近い方の爪で振り向きざまに切り裂こうとすることがほとんどだ。だからそれを読んで身をかがめておき、頭の上を爪が通り抜けた瞬間に再び背後に回るようにすり抜けざまに一撃。


 これを繰り返す。

 たまに尻尾で振り払おうとしてくるが、尻尾はあまり力が強くないのか拳で打ち払える。

 これを続ければ、この脳筋モンスターは完封できる。


 そう考え、僕は相手の行動を誘導しては避けて殴る引っ掻く蹴るを繰り返した。気分は判定勝ちを狙うボクサーだ。違うところがあるとするならば、僕の場合は一撃でKOされてしまうから攻撃にあたることが許されないことだろう。


 そんなことを繰り返して早2時間、遂にゴライアスに変化が現れた。

 

 この2時間半の戦闘でほぼ確定していたことは、ゴライアスの真後ろに立った時は確実に尻尾攻撃か振り向き攻撃だったのだが、それが今変化した。

 振り向いたゴライアスはその口を大きく開いてこちらを見ていたのだ。


 これは――――やばい。何かはわからないがやばいということだけはわかる。


 僕はなりふり構わずその場を離脱、全力で後ろに向けて跳んだ。

 すると、ゴライアスの口から炎が吐き出された。


「火ぃ吹くのずるくない!?」

 炎を全て避け切れたわけではない僕は、少なくないダメージを受ける。

 僕は炎の範囲から出るようにゴライアスから距離を取った。取ってしまった。


 気づけば僕は5m以上ゴライアスから離れてしまっていて、僕の背中を追いかけるように炎を纏った石が飛んできた。

 危ない。僕はその場に転んでそれを回避する。


 背中をかすった石はそのまま森の奥深くに消えていく。


 畜生、森に生息している魔物が炎を吐くってどういうことだよ。

 僕は追撃を喰らわないように立ち上がり、ゴライアスの出方を伺った。


 ゴライアスは5m以上離れていると投石攻撃をしてくる。これはかなりの速度が出ている上に、投げ切った後の隙に攻撃ができない程度の距離があるため一方的に攻撃を受けることになる。

 それは善くない。また、逃走するにしてもこの投石攻撃はネックだ。

 先ほどは運良く避けられたが、後ろを向いて避けられるほどこの攻撃は甘くない。


 また、今は開けた場所で戦っていて石くらいしか投げるものがないが、倒木とかを投げられたらさすがに避けられる自信はない。


 だが、このまま戦闘を続行するにしても問題がある。


 僕はこれ以上一方的な攻撃を受けないようにとゴライアスに近づいた。すると、距離が3mほどになった時にゴライアスは先ほどのように炎を吐き出して攻撃してきた。

 この攻撃は割と攻撃範囲は狭く、横に跳べば避けることができるが両手がフリーなので反撃は難しい。

 さらに、一番の問題。それはゴライアスの腕が届く距離、ゴライアスの半径2m内に入るとHPが減るのだ。

 原因はわかっている。

 ゴライアスは炎を吐くようになってから身体から小さく炎が漏れ出すようになっていた。また、前腕や尻尾の先にはわかりやすく炎を纏っている。

 つまり、ゴライアスに近づくだけで炎によってダメージを受けるのだ。


 長期戦を考えている僕にとって、これは凶報以外の何物でもなかった。



 ……さすがに、相手が悪かったな。

 ここらへんで潮時か。僕はそう思った。

 確かにゴライアスの体力は削れているのだろう。だが、まだ倒れる気配はない。


 僕のHPは度重なるへまで半分を割っており、それもゴライアスの炎によってじりじりと少しずつではあるが削られている。

 このまま戦えばどちらが勝つかは明白だ。

 僕はちらりと森の方を見る。


 森の中に逃げ込めば障害物が多いから、ゴライアスの投擲による追撃は何とかなるかもしれない。

 このままこの距離で殴り合うよりはましだ。

 僕は再び距離を取る。


 距離3m

 ここまでくれば熱によるダメージは受けない。代わりに火吹き攻撃をしてくるが、それは僕ならよけられる。


 距離4m

 ここが一番安全だ。ゴライアスの方から近づいてくるが、移動というプロセスを踏むため攻撃が遅い。回避も楽。



 距離、5m

 ここから危険域に入る。投擲攻撃はゴライアスの挙動をしっかり見ないと回避が難しいが、5m離れたら必ず投げてくるというわけではないからだ。



 距離、6m…

 ゴライアスが炎の石を投げつけてきた。何とか回避ができた。


 距離7m……

 ゴライアスが飛び込んできたが、入れ違うようにダッシュして距離を離した。


 距離8m………

 このままいけば逃げ切れるかもしれない。ゴライアスの投擲モーションが見えた。


「んなわけねえだろう!!」


 距離6m

 背中を向けていた僕は踵を返してゴライアスに急接近する。投擲は身をかがめて回避した。


 距離4m

 僕はゴライアスの投擲範囲外に入り高らかに叫ぶ。


「ここで逃げたら漢じゃない! 初めの宣言通り、このままお前を喰い殺す!!」


 距離2m

 ゴライアスの火吹きを掻い潜って近接攻撃の射程に入る。


 距離0.5m

 ゴライアスの爪による攻撃を掻い潜り、一瞬後ろを取る。


「炎を纏うことによる継続ダメージ? そんなものこうすれば無効だあああ!!」


 がぶっ


 僕はゴライアスの腕に思いっきり噛みつき、食いちぎった。

 そうすることでスキル『捕食++』の効果が発動する。僕のHPは7.5%も回復した。それと同時にゴライアスの腕が僕に襲い掛かる。

 ちっ、やっぱり長い手足に対して短い首を伸ばしての攻撃は隙が多い。

 僕はその攻撃をギリギリよけながら心の中で悪態をつく。


 今から継戦するためには定期的にゴライアスから体力を補給しなければならないため、何度も隙の多い攻撃を繰り出す必要があった。

 正直言ってつらい戦いになる。タイミングを間違えればあの腕につかまって一気に死亡コースだろう。


 だが、僕の心は燃え滾っていた。


「覚えておけゴライアス!! 僕の名前は|リオン(Lion)、百獣の王のLion(ライオン)と書いて|リオン(Lion)だ!! 獣の王らしくお前を喰い殺すものの名前であり、最高に格好いい漢になるものの名前だ!!」

 高らかに叫び、僕はゴライアスに襲い掛かった。


 炎を纏うから、火を噴くからなんだ。こいつの戦い方はもう僕の中で消化しきっている。新たに反芻する必要すらない。

 僕はゴライアスの攻撃を見切り、ギリギリで回避する。

 そして喰らい付き口の中に残ったものを咀嚼して飲み込む。


 酷い味だ。こいつは食材としては不合格だな。

「グルルルルゥ」

 僕は闘争本能をむき出しにしてうなる。人間の言葉は出てこなかったが、不思議と心地よかった。


 ゴライアスはそんな僕に炎を吐きかけてきたが、それはもう何度も見た。範囲は把握している。


 こいつの首は左右60度ずつ、つまり前方120度までしか回転しないからその範囲外に回り込んでしまえば当たらない。

 そして、炎を吐いている最中はなぜか急旋回をしてこない。つまり、チャンスタイムだ。


 僕は後ろからわき腹を食いちぎる。

 炎を吐き終わったゴライアスは尻尾で攻撃してくる。初めのころとは違い先っぽに炎を纏っているので危険と言えば危険だが、これは大した威力はない。

 僕の力でも殴り返すことが容易だ。


 さて、ゴライアス。炎を纏った時はどうしようと思ったが今度は寧ろそっちが追い詰められたな。

 炎を纏い始めてから30分程度戦った。戦闘開始から3時間近く経った。

 これだけ同じ相手と戦い続けていれば、もう攻撃をほぼ完ぺきに見切るのも容易い。さらには長時間の戦闘で研ぎ澄まされた感覚と疲れた体が相まって、僕の動きは無駄のないものへと洗練されていた。


 避けて、喰らいを引っ掻きを繰り返し続けた。

 いかに僕より格上で、この森の王で、強靭な肉体を持っていようといつかは限界が訪れる。


 僕はその時を待つだけでよかった。そして、遂にその時が来た。


 僕の度重なる攻撃によってボロボロになったゴライアスが、戦闘が始まって僕に苛烈な攻撃を続けていたゴライアスがついに止まりよろめきながら一歩後退したのだ。


「ついに限界か? 僕はまだまだいけるぞ?」

 ゴライアスという補給がある限り、僕はまだ戦える。

 だが、補給のないゴライアスはいずれ燃料切れが来る。今がその時だった。


 気づけばゴライアスの身体は傷だらけで、纏っていた炎も弱弱しいものになっていた。


 だが、ゴライアスはまだ死んでいない。


オオオオオオオオォォォォォン

 

 奴は雄叫びを上げ最後の力を振り絞り、命を燃やして僕に一矢報いようと力を解放した。

 炎は白に近づくほど熱くなる。


 ゴライアスの炎は赤かった。派手派手しいが温度としてはさほどでもない赤色だった。

 だが、今のゴライアスは真っ青な炎を身に纏っていてその勢いも先ほどまでとは比にならないものだった。

 

 それは、文字通りゴライアスの命の灯火のようだった。放っておけば勝手に鎮火して絶命してくれるかもしれない。

 そもそも、あれに近づいて無事である自信がない。

 でも、


「ここで引いたら漢じゃないよなぁ? 最終決戦だゴライアス!」


 僕はまっすぐ飛び込んだ。

 僕を迎撃するように、ゴライアスが正拳突きを放つ。それはもう見切っている。


 そう思い僕はギリギリを避けたつもりだったが、炎の勢いが想像以上に強かったためダメージを受けてしまう。

 避けた僕を追いかけるように、ゴライアスは蒼き炎を吐く。赤い奴でそれは予習済みだ。

 ゴライアスの炎は一撃でHPを消し飛ばすわけではなく、秒間2回のダメージ判定があるタイプの攻撃なのはこれまでの戦いで気づいていた。


「ガアアアアアアアア!!」


 だから、僕は真正面から炎に飛び込んで燃やし尽くされる前に炎を突破する。

 蒼い炎は僕の想像以上の火力で、こまめな補給によって体力が7割まで増えていた僕のHPをたった一度のダメージ判定だけで4割まで減らしてしまい、次のダメージ判定で残り1割まで焼いた。

 そして近づいた僕に、身に纏う炎による燃焼ダメージが僕の体力を減らし始める。


 あと数秒もすれば僕は焼き尽くされてしまうだろう。


 だが、届いたぞ。

 僕は自分が炎に巻かれて焼かれてしまう前に、ゴライアスのはらわたに喰らい付いた。通常、噛みつきでダメージを稼ぐなら首だが今だけは首を狙わない。


 その理由が――――バキ、バキ……ゴキ……


「脆い、脆くなってるなぁ?」


 スキル『砕牙++』の攻撃を受け続けたゴライアスの腹部は、状態異常【破砕Ⅰ】を超えて【破砕Ⅱ】なんてものはとっくに通り越して、【破砕Ⅷ】までに陥っていた。

 状態異常【破砕】はⅠの15%から始まり数字が一つ大きくなるにつれて15%ずつその部位に対するダメージを上昇させる。

 つまり、現在【破砕Ⅷ】ゴライアスの腹部に対するダメージは+120%だ。それに『砕牙++』によるダメージ+30%、『捕食++』によるダメージ+30%、『牙+』によるダメージ+10%、その他『挑戦者』や捕食によるステータス補正やら、『咆哮』による攻撃力増加やらの大量の補正を掛けた一撃だ。

 骨の髄まで味わってくれよな。俺はお前を骨まで味わい尽くすからさ。


 俺の今出せる最大の攻撃を受けたゴライアスは……


ォオォォォオ……

 

 と、少しずつ叫び声を小さくしていきやがてその場に倒れ動かなくなった。そして、その少し後に、宝玉と爪や牙と言った体の部位を残して粒子となって消えていった。


「はぁ、はぁ、HP、残り75……ギリギリの勝利だった」

 僕はその落ちたアイテムを回収して、ついでに回復アイテムを取り出してそれを使った。

 あと少しまで減っていた僕の体力がみるみるうちに回復していく。


 ゴライアスとの戦いは本当に接戦で、最後どっちが削り殺されてもおかしくはなかった。

 だが、僕は勝利して晴れてこの東の森を制覇したのだ(多分、あれ以上強いのがいるとは今は考えたくない)。


『レベルが上がりました』

『レベルが上がりました』

『レベルが上がりました』

『レベルが上がりました』

『レベルが上がりました』

『レベルが上がりました』

『レベルが上がりました』

『レベルが上がりました』


 今の戦いだけでレベルが一気に8つも上がった。これで僕のレベルは35になり、この森の魔物と遂に対等になった。


『スキル『爪撃++』が『爪強撃+』に進化しました』

『スキル『砕牙++』が『崩牙+』に進化しました』

『スキル『咆哮』が『咆哮+』に成長しました』

『スキル『捕食++』が『捕食EX』に成長しました』

『スキル『爪+』が『剛爪』に進化しました』

『スキル『牙+』が『鋭牙』に進化しました』

『条件の達成によりスキル『獣化』を習得しました』


 後、スキルが増えたり成長したりした。

 ってえ? 『獣化』って俺もしかして苦節2日、遂に獣らしさがゲームに認められて野獣のような男になれるの?


 これは早速試してみるしかない!!


 りおん は けものか の すきる を しようした !


 しかし MP が たりない!!


 ま? ここでMPが必要になってくるの?

 俺は仕方なく少しだけINTにステータスを振って『獣化』に必要なMP20を確保してから再び『獣化』のスキルを使った。


 すると、俺の身体が光に包まれてみるみるうちに身体を変えていく。


 そして―――――



「にゃーん」


 俺は猫になった。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです! [一言] 色々とズレてたけど少しずつ漢らしくなってきた気が...やっぱり気のせいでした。 それはずるいよ。
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