一難去って
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ギリギリと鉄が擦れるような音をかき鳴らしながら剣蟻女王とジンの戦闘は続いている。
「四重烈虎ッ!」
「ギャシャアアアッ!!」
「危なっ!」
風の刃を掻い潜りながら攻撃を続けるも、決定打に欠けるジン。
「アカンなんやこの硬さは…カルダンガでやった女王の比やないで…まさか超越個体か?」
超越個体
モンスター内で稀に現れる変異的な個体。
その能力は通常の個体より遥かに高く危険。
討伐出来たケースが少なく、未知の部分が多い。
「ほな尚更ここで仕留めなアカンな…アレやるか…これ気に入っててんけどなぁ。しゃあない」
ジンは渋々と言った様子で大剣を地面に突き刺した。女王は好機とばかりに向かってくる。
「最大加速」
キンキンと大剣が高い音をあげる。
「ギシャアアアアッ!!」
女王が迫る。
「破刃」
ギンッと鈍い音がしたかと思うと、女王の巨体はジンを避けるように真っ二つに裂けた。
「その剣はあの世に持っていきぃ。ワイのお気に入りや…結構高いで」
ズシンと大きな音を立てて女王の巨体は崩れ去っていく。
「うおーあのデケーのやりやがったぞ!何したんだ今!スゲー!」
遠くでその様子を見ていたタケルは興奮の声をあげた。
「すごいわね…本当に1人で女王を倒すなんて…けどまだ剣蟻は山ほどいるわよ」
「ルカ様…蟻達の様子が…」
「?なにかしら…蟻の群れの中から何かが…」
ズバンッ
前方の蟻数匹が横薙ぎで何かに裂かれた。
「ッ!?鉄の番兵。守護の門。掲げる意思は鋼なりて!【鋼鉄城壁】」
その姿を見たルカは即座に魔法でそれを囲った。
「二重ッ!」
リンも咄嗟にルカの作った壁を増やし厚く強化する。
「下がるわよタケルッ!長くは持たないわ!」
「お、おうなんだか知らんが了解」
走ってくる3人にジンが気付く。
「どないしたんや?ワイの勇姿に感動したんか?まぁワイにかかればあれくらい」
ズバンッ
壁が切り裂かれジンにもそれが見てとれた。
「うわマジか」
「ちょっとちょっとルカさんリンさん。スゲー音してるけど後ろにいるのなんなんです?」
「…龍蟷螂…Sクラスモンスターよ」
「それってヤバい?」
「「ヤバい」」
タケルの問いにルカとリンはそう答えた。