道すがら
『ご主人!石心ストーンヘンジは解除後も再使用可能な変身スキルです!どんどん石になりましょう!』
「ならねぇよ!!」
【石心ストーンヘンジ】
大きさと重量を自分の体積体重の最大10倍まで変更可能。変化後の大きさと重量の変化不可。人が触れる事により解除可能。
ガチャ子スキル説明書408ページより
「今日の俺は役にたたん。守ってくれ」
宿屋を後にし、徒歩でアルメタリカへと向かう。
リンも目的地が同じらしいので一緒だ。
「まぁアルメタリカまでそんなに距離もないし、私だけでもなんとかなるでしょ。それにしても面白いスキルね…毎日能力が変わるなんて聞いたことないわ。」
「私も初めて聞きました。」
珍しい物を見るような視線がタケルに刺さる。
「そ、そういやルカとリンはどう言うスキル持ってんだ?」
誤魔化し気味にタケルは言った。
「私?私のスキルはクラス6【魔法制覇】。種族や生まれなんかで覚えられる魔法や属性が変わってくるんだけど、私はどんな魔法だって習得出来るのよ。まぁ習得する為の過程を飛ばせる訳じゃないから努力は必要だけど」
魔法制覇?なんだそれは…強そう。
「カッケーなぁ…リンは?」
「私のスキルはクラス3【二重】。触れた物を無機物生物問わず2つに増やす事が出来ます。例えば…そうですね。タケル様、少し失礼。」
リンがタケルの手に触れる。
「二重」
目の前にタケルがもう1人現れた。
「うお!なんだこのアホ面!まさか…俺?」
立体として自分の姿を見る事になろうとは。
へぇ…俺って後ろから見るとこう言う感じなのか。
……良かった。禿げてない。
「ある程度操作も出来ますが…魔力消費が大きいのであまり長時間は使えません」
リンが軽く手を叩くとタケルの分身がフッと消える。
可能性の塊じゃねぇか…
「ほえースゲーなぁ。ところでちょっと気になってたんだけど…クラスってなに?」
「スキルには1〜7までのクラスがあるの。数字が大きい程戦闘向け。ギルドならスキルクラスの測定もやってるし、アルメタリカについたらタケルも見て貰えば?」
「ギルド…ギルドか…フフッ」
「なに笑ってるの?気持ち悪い」
「失敬失敬、ギルドって響きが俺の男心をくすぐりたおすのだよフフッ」
ルカは苦笑し、リンは目を逸らしている。
「ん?」
最初に気付いたのはリンだった。
「ルカ様タケル様、あちらから何か向かって来ていませんか?」
言われた方向を見ると、確かに何かがこちらに向かって来ている。それは土煙を上げながら徐々に迫っていた。
ルカは目に魔力を込めて遠方を見つめる。
「遠視魔法………あれは…剣蟻の群れよ!!それもすごい数」
「それってヤバいのか?」
「あの数は流石にヤバいで兄ちゃん。」
「だよな……のわあっ!!誰だあんた!いつの間に!?」
ルカとリンも突如現れた男に驚きの表情を浮かべる。
「そんな驚かんでええがな。わいはジン。一応冒険者やっとる。よろしゅうたのむわ〜」
「と、とにかく逃げるわよ!」
状況をまとめきれずにとりあえず皆走り出した。
「お嬢ちゃん、逃げるんわええけど、あの虫共ほっとくとえらい事なんで」
「じゃあどうするのよ!」
ジンと名乗る男はニヤリと笑みを浮かべながら口を開く。
「女王や」
首を傾げるタケルとは裏腹に、ルカとリンはその言葉の意味する物を理解していた。