フレンドガチャ
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「ニホン?と言うところから来たの?聞いた事無いわね」
「まぁそのなんつーかすごい遠くから来たんだよ」
俺はルカに案内されて一番近くの街がある、鉄の国アルメタリカってところに向かっている途中だ。どうやらこの世界には6つの大陸があって、ここはアルドランダって大陸らしい。ん〜ファンタジー!!
「そういやここって結構危ないところだったりする??さっきのデカイのがウヨウヨいたり」
「あぁ三眼オーガの事?それは無いわ。あれは恐らく超越個体…Sクラスモンスターよ。6大陸でも中々現れるものじゃない。もし現れた時は、国の兵隊や冒険者達が十数人のチームを組んで討伐に出るでしょうね」
「はーそんなに大事なのか」
「大事も大事よ!…でも変ね。どうしてあんな場所に現れたのかしら。アルドランダは6大陸の中でも比較的平和で、オーガの出現報告なんて今まで無かったのに」
ルカが不思議そうな表情を浮かべながら話している時。
「…待って…何か聞こえない?」
「ん?そうか?」
耳を澄ましてみると、遠くから地鳴りのような音が聞こえる。その音は徐々にこちらへ向かってくるようだ。音が近づくにつれ別の音も聞こえてくる。
「誰かッ!!…助けてッ!!!」
それは確かに助けを求める誰かの声。
「ルカ!!」
「ええ、行きましょう」
2人は音のする方へ向かって走り出した。森の木々を抜け開けた場所に出ると、そこには小さな少女と、見覚えのある巨体がいた。
「嘘、オーガ!?2つ目…通常種みたいだけど」
「とにかく助けねぇと!」
「…そうね。私が魔法でオーガの気をこっちに向けるわ!タケルはさっきみたいにドラゴンになってあいつをやっつけて!」
「よっしゃ了解!おーいガチャ子!」
ピコーン♪ピロリンピロリン♪
『こんにちはご主人!御用はなんでしょう』
「さっきの竜になる奴頼む!」
『残念ながらご主人、それは出来ません』
「え!?な、なんで?スキルは1日使えるんじゃ」
『変身系のスキルは一度解除してしまうとその日はもう使えなくなります。説明書の32ページに書いてありますよ?』
「説明書なんて貰ってねーよ!!」
「来たれ!魔力の唸り!【雷槍】」
ルカの放った魔法がオーガに直撃する。あまりダメージは無いが、オーガの気を向けるには十分だ。
「グオオオオオオオオッ!!!」
激昂したオーガがこちらへ向かって走ってくる。
「来たわよタケル!さあ!ドラゴンになってやっちゃって!!」
「あーすいませんルカさん…なんかそのー無理っぽい」
「ハァ!?ちょ、ちょっとどうすんのよ!もうこっち来てる!」
「ぐああ!!どうにかなんねぇのかガチャ子!」
『ご主人!フレンドガチャが回せます!』
「フレンドガチャ?」
『ご主人とルカ様は友人レベルだと認識しました!よってフレンドポイントを獲得しました!初回なので100ポイント!フレンドガチャは1回100ポイントで回せますが、N〜SRまでしか排出されません』
「だぁー!!もうなんでもいい!回すぞ!!」
ガチャガチャ…ポンッ
銀色のカプセルが出てきた
R 【操鉄メタルスター】
『ご主人!操鉄メタルスターです!自在に鉄球を操り楽しく遊びましょう!』
目の前に浮かぶ鉄球が現れた。
「なんじゃこりゃ?え?楽しく遊んでる場合じゃねぇんだよ!ガチャ子チェンジチェンジ!」
『フレンドポイントが足りません!』
「グオオオオオオオオッ!!!」
「うわやべ」
「タケルッ!!避けてッ!!」
オーガの巨大な金棒がタケルに振り落とされ、豪快に地面を抉り土煙を巻き上げた。オーガはゆっくりと振り下ろした金棒を退け、潰した獲物を確認する。
「グア?」
しかしそこには砕けた地面があるだけだった。
「上だよデカブツッ!!」
鉄球と共にオーガの頭を勢いよく踏みつける。
「ンゴアアッ!!」
突然の攻撃にオーガの巨体は勢いよく前に倒れる。
「おぉ結構使えるじゃんメタルスター」
タケルは鉄球を掴んで宙に浮いていた。
「グオオオオオオオオッ!!!」
オーガは起き上がり、怒りの矛先をタケルに向けていた。
「くっそ硬てぇなおい!ルカッ!!たぶん俺じゃコイツ倒しきれねぇっ!なんとかなんないか!」
「なによ心配したじゃない!元気そうね!…少し時間を稼いで!3分で良いわ!そしたらそんな奴…塵に変えたげる!!」
「まったく頼もしい事言ってくれちゃって…3分だな!お任せあれ!」
鉄球の操作にもだいぶ慣れてきた。このデカブツ、力は強いが動きはそんなに速くねぇ。
「グオオオオオオアアアアッ!!!」
鉄球を足場にしてオーガの攻撃をなんとか避ける。振り回した金棒が当たらず痺れを切らしたオーガはその金棒を大きく振りかぶった。
「!!」
来た!力任せの縦振り!
「グアアアアアッ!!」
「ここッ!」
オーガの脇を抜けて顔の前に飛び込んだ。
「グオ!?」
「どっせーい!!」
驚きの表情を浮かべるオーガの顔面に鉄球を叩き込む。
「グオオアアアアッ!?」
その巨体は体勢を崩し膝をついた。
「うまくいったな!うむ、鉄球式戦闘術目潰死と名付けよう」
「どきなさいタケルッ!!!」
「了解!」
オーガから距離を取る。
「…ふぅ」
正直、三眼オーガと戦ったあとでほとんど魔力は残ってない…でも私はフォントゥス家の娘なのよ。弱音なんて吐いてらんないわ!父さんの教えを思い出して。自分の為じゃない…誰かの為に!!
ルカの周囲を青白い炎が流れる。
「深淵より来たれ、炎獄の焔。闇を祓い、焼き尽くせ。汝に永久の静寂を【宙壊十字灼炎】」
ルカが放ったのは小さな火球。それは目を押さえたオーガにゆっくり向かい弾けた。その刹那、オーガは激しく荒ぶる青い炎に包まれる。
「グアガッ…ゴ…グ…」
時間にしてほんの数秒、オーガは塵となって消えた。
「すげー…」
「フン…どんな…もん……よ」
ドサッ
渾身の一撃の後、ルカはその場に倒れ込んだ。
「ッ!おいルカ!大丈夫か!おい!」
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