盗賊の砦①
森の奥に引っ張られていった僕は、あることを思い出していた。マジセカシリーズの中に共通して悪役がいるのだが、その悪役というのが、人の住む世界を脅かす魔物や魔族の王、"魔王"である。
僕が今いるところは、オルテスという国で、この国はいつも魔物の恐怖に脅かされている。もう何個もの土地や城を魔王に奪われてしまっている。マジセカをクリアするためには、この魔王を倒す必要があるのだ。
…もし、この世界から元の世界に戻る方法がクリアするということならば、僕はいつしか魔王と対峙しなければならない。
しかも、僕が今いるのは、"本物のマジセカの世界"だ。今までやってきたゲームの世界とまるで感覚が違うだろう。そういう意味では、コントローラー上でやってきた盗賊を倒すという操作も、ここでは人殺しと同じだと改めて考えてしまう。一体僕はどうすればいいのだろうか。
そうこうしているうちに、森の奥に石造りの砦が見えてきた。あ、まてよ。目の前に…
「ちょ、ちょ!ストップストッ……」キキーーッ!
ドォン!
うへぇ、痛ぇ。木に衝突してやっと止まった。
「くぅ~……頭がぁ……」
「だ、大丈夫?」
後ろからついてきたサキさんに全て見られていたみたいだ。
「な、なんとか…………あ、でももうつきましたね。」
「そうね……禍々しい魔力を感じるわ…」
サキさんの言うとおり、砦の方からはなんとなく嫌な感じがする。すごい、胃がムカムカするような…
この中に、盗賊がいる。そう思うだけで、僕は憂鬱になる。だけど、僕は今本物の魔法を使役することができる。祝福もまだ受けてないけど、チート能力のお陰で使える。憂鬱だけど、僕の中には勝てるという自信が湧いていた。もちろん、何の確証もないけどね。
「さぁ、行きましょう!」
僕は、堂々と中へ乗り込んでいった。
中はとても汚れていた。一歩中に足を踏み入れると、死んだ魔物の匂いがした。部屋の端っこには、誰か他の冒険者から剥ぎ取ったのであろう高価そうな宝飾品が置いてある。…更にその近くには、誰かの骨まで置いてある。
ヒドイものだ。
「若けぇ男と女2人で、おれさまの城になんのようだぁ?」
首領とおぼしき男が、下衆な笑い声を響かせながらそう言い放った。
「お頭、こいつら、いくらくらいで売れそうですかい?」
「最近は奴隷商人もケチりやがる。この前村襲ったときに連れてきた女子供も大した金にならなかったしな。」
「ははっ。雑魚は奴隷がお似合いなんだ。」
アッハッハッハッ…
その声を聞いた瞬間、僕の中でなにかが弾けとんだ。
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