なんか、腕輪が喋ったんですけど
『ユーザー登録、完了しました。』
僕が右腕にはめている腕輪が、そう言った。
僕は先程、森の神官トーマスさんに初級魔法を伝授してもらったあと、金色の腕輪をもらった。
どうやら、ある盗賊のアジトに王国騎士団がガサ入れをした際に、見つかったものらしい。ガサ入れをした現場にトーマスさんはいなかったらしいが、騎士団の隊長に腕輪を見せてもらったときに、この世の物ではないような魔力を感じたという。トーマスさんが今まで生きてきた中で一度もみたことがないものだったので、イヤな予感もして、王都にいる高級鑑定士にみてもらうことにした。ところが、鑑定士にもなんだかよく分からないシロモノらしく、形状はまるで魔力引き出しのための腕輪のようであったが、トーマスさんは心配なので、自分の教会で管理することにしたらしい。
なんて説明をしながら僕に腕輪をはめてきた。
「いやいやいやいや、おいおい!!!」
危ないモノだったらどうするんだ!
「あっはっは!大丈夫ですぞ…………………多分」
「今のぼそって何?ねぇ、ぼそって何なんだ!?」
「あーもう、うるさいわね。男なんだから黙って腕輪をつける!」
ついにはサキまでそんな事を言ってきた。一体僕を何だと思っているんだ。
『あなたは異世界転移者です。』
………………………………うん?今の声は何処から聞こえてきたのだろう?
『あなたの腕輪ですよ。』
「わぁ、腕輪が喋った♪………っておい!なんで喋れるんだ!?」
「何を1人でお喋りなさっているのですかな?」
「そうよ。急にどうしちゃったの?」
どうやら2人には聞こえていないらしい。
ああ、これは異世界無双のテンプレートなんじゃないだろうか。自分には聞こえ、人には聞こえない声。しかも腕輪。これは多分……
『お察しの通り、チートを行うことができます。』
やっぱりな。この世界は本当にマジセカと酷似している。実際のゲームにも、チートモードがあったりする。無論、裏機能だ。どうやらこの腕輪は、特定のユーザーのみが使える“光の腕輪”のようだ。早速使ってみよう。
『ただし、メイン機能を使うには、祝福を受けて、ステータスをゲットする必要があります。』
ああ、やっぱり使えないか。
でも、この状況はこちらにとっては好都合だ。祝福を受けるだけでチートを使うことができるということは、より早いルートで元の世界に帰ることもできるようになるわけだ。とてもラッキーな道具を手に入れてしまった。というか、なんで他の人がつけてもこの腕輪は作動しなかったのだろうか?腕輪が使えるのは画面の向こうのユーザーのみで、この世界の住人は使えないはず。
『その理由は後程説明します。とにかく今は、盗賊を倒してルタージュの花を取り返しましょう』
「お、おう。」
すると、急にからだが持ち上がって、腕輪の指し示す方へ引っ張られていった。
「あなたのお見立て通り、やはり彼は聖なる者かもしれませんな。王女様もついていかれるのですかな?」
「そうね。心配だからそうするわ。ありがとう、トーマス。このお礼は後程…」
そして、引っ張られていく僕の後ろをサキが一生懸命追ってくるのだった。
投稿が遅れた挙げ句、話も急展開してしまい申し訳ありませんっ!!話についていけてない人にお詫びします。
今日のお話で、主人公のソウタはチート能力を手に入れました。はい、異世界転移無双のテンプレートです。
でも、これから展開していく話は、決してサクセスストーリーとは言えません。ですので、ワクワクできると思います。次回は、ソウタが盗賊と出くわします。一体どうなるのでしょうね。次回をお楽しみに!