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なんか、祝福を受けたかったのだが…

「うーむ………どうしたものでしょうな。」


そう顎髭に手をあてがって悩む彼は、森の神官トーマス・ドルドンさんである。彼が着ている緑の衣裳はよれよれで、これまでたくさんの人々のために尽くしてきたことが伺える。また、手には立派な杖を持っている。彼の首にぶら下がっている物凄い装飾品は、なんとも言えないオーラを発しており、彼が賢者であることを表しているようだった。

つい先程森の教会に到着した僕らは、トーマスさんに事情を説明すると、


「おお…、それはなんたることか。その年で祝福を受けられていないとなると相当お辛い経験をこれまでたくさんなさったのでしょうな…」


と、僕に同情(実際に記憶を失った訳じゃないので、非常に心は傷んだ。)してくれて、すぐに儀式を執り行ってくれることになったのである。非常にありがたい。

この国では、隷属民身分の人々を除いて、全員が祝福を受けられるような法整備がされている。これは2代目国王が決めたことらしいが、彼はこの世界において間違いなく徳のある王なのであろうと思う。

そして、スキルを手に入れるために早速儀式を執り行ってもらうとしたのだが………


「まさか、ルタージュの花が盗まれているだなんて…」


サキも隣で呆然としている。

ルタージュというのは、この国においては非常に重要なもので、この花の歴史は神話時代にまでさかのぼる。

そんな重要な花が盗まれるというのは、非常にあってはならないことだ。ルタージュの花を盗むのは、国賊同然なのだから。


「最近、この辺を革命主義派の連中がうろついていたのですが、奴ら先代王がさまざまな身分に認めた祝福をやらせないつもりで盗みを働いているのでしょう。なんとも嘆かわしい…。申し訳ないのですが、ルタージュがなければ私も行いたくても祝福ができないのです……」


そう言った神官の目には、涙が浮かんでいた。それにしても、とても許せないことだ。僕が魔法さえ使役できたら………

…………うん?魔法? …あ!


「あの、トーマスさん。」

「…なんでしょう?」

「この森の中の、どこに適性なしで使える初級魔法の古文書がありますか?」


僕がそう聞くと、トーマスさんはなぜそのことを君が知っているんだ、と眉にシワを寄せ、すぐにまた表情が変わった。うん。僕には分かる。この顔は……


"魔法を教えて盗賊を倒してもらおう"


っていう顔だ。だって、晴れやかなんだもん。怖いくらいにニコニコしてるんだもん。


「見たところ、君は魔法適性があるようですな。ちゃんと何のタイプの魔法かを見抜くには祝福をしなければ分からないですが、な。経験と勘がそう言っとります。」


お、マジかよ。転生しなくても適性があるんだなぁとしみじみとにやけてしまった。


「適性があるとみて、あなたに頼みがあります。初級魔法を授けますから、盗賊を倒してくださりませんか?私の身分では、盗賊に手を出せないのです。神にお仕えする者が、人を傷つけたとあっては、神の名に傷がつきますので…どうか、お願いします。」


僕には、断る理由なんてない。初級魔法でも、魔法は魔法。この世界においては、とても強力な武器だ。そんな魔法をタダ同然で教えてもらえるのだ。それくらいやったって当然だろう。


「勿論です。僕がこらしめてきてやりますよ!」


僕は、力こぶを作った自分の右腕を見せた。


「本当に頼もしいですな。この年まで祝福を受けられていないのが本当にもったいない。ささ、古文書はこちらにありますから、私についてきてくだされ。」


トーマスさんは、僕を手招きした。

コメント、評価をお待ちしています。

投稿が1日遅くなりました。すみません!

次回の更新は、7月31日を予定しています。

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