なんか、冒険することにしました。
気がついた僕の目の前に広がっていた景色は、僕の住んでいる世界とは大きくかけはなれたものだった。
たくさんの木が生えている森林はもちろん僕の住む世界にもあったが、飛んでいるのが鳥ではなく、頭に角を生やしたフラージという魔物。このフラージというのは、マジセカに出てくるオリジナルのモンスターで、それを見つけたことで、この世界がマジセカの中であるということが確信できた。マジセカは、シリーズを通して同じ世界が舞台だからだ。
ただ、さっきまでエアコンの効いた自室でPCを触っていた僕には、何が起きたのかすぐには理解ができなかった。科学では説明できないことが起きているからである。だって、そもそも考えてみよう。
「ゲームの世界に入るって、あのライトノベルとかでよく聞く異世界転移ってやつだろ？そんなことが現実で起きるのかよ…」
ただ、もしこれが夢でなく現実であれば、僕にとってこれ程嬉しいことはない。夢にまでみた、1日中マジセカに没頭するっていうのが、実現できるのだ。
よっしゃー！と心の中でガッツポーズをしたのもつかの間。
「ぐるぅあぅあああああ！！！」
森の中から魔物の叫び声が聞こえてきた。
自分の憧れた世界であると同時に、ここは危険と隣り合わせな世界でもある。ゲームの中で軽く受け流してきた死も目の前にあるのだ。僕は、なんて浅はかな考えをすぐに思い付いてしまうのだろう………と思った。
画面の中、自分がキャラクターを操作することで冒険してきた世界を、今は自分自身で冒険するしかない。
しかも、よりによってシリーズの中でも最難関。プレイしたこともないゲームをだ。僕をとてつもない不安が襲った……………と思ったら大間違い。僕の中には、自信しかなかった。
「一時期現役を離れていたが、僕には『若王』と呼ばれたほどの知識と腕前は健在だ。これらを使ってこの世界を満喫してやろう！引いては、1番最初のクリア者になってやろう！」
僕だけのマジセカ。僕の描くストーリーを、実現させてやろうと思った。
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