なんか、迷い混むことになりました。
梅雨が明け、蒸し暑い夏。熱風はコンクリートで覆われた街を包み、道を歩く人々は、帽子をかぶったり、傘をさしたり、水を飲んだり…
そういう風景が、今僕が見ている朝の情報番組にうつっている。
僕は、この暑苦しい夏が嫌いなわけではないが、あまり外に出たがるような性格でもないために、電気代がかさむこの季節は少し憂鬱になる。
僕はまだ高校生。しかも、親からの仕送りは4,5ヶ月に1回のため、バイトだけだと少しキツい。僕が好きなゲームに費やす時間も、最近は少なくなってしまった。
《またもう一度好きなゲームを好きなだけやれる時間がくればいいのに。》
僕は何度そう願ったことだろうか。
僕、ソウタは去年まで、「マジックワールドの若王」などと呼ばれるほどの腕前を有していた。(今はどうか分からないので、一応否定しておく。)
マジックワールドRPGというゲームのシリーズがあるのだが、そのゲームは「ストーリー」と「バトル」が組合わさった、まあ、王道のRPGだ。
それはもう何十年も前からあるとても歴史あるゲームで、たくさんのファンがいる。僕の父さんもそうだ。そのマジックワールドRPGシリーズ(愛称はマジセカ。だから、ここからはマジセカと呼ばせていただく。)のオンライン大会というのがあって、年4回開催されるのだが、僕は4回とも優勝してしまった。そこから僕のネット界隈からの呼び名が、「若王」。どうやら、高校生で優勝したのも初めてだったらしい。
そんな僕は今、バイトに追われ、テストのための勉強や去年サボった分の追試などで、ゲームをやる時間が本当に少ない。というか、ない。
まじでツラい。
8月に入り、追試などもほぼ終わらせて、ようやくゆっくりゲームをできる時間を作ることができるようになった。年に2,3回しかこない仕送りが来たので、僕は新しいゲームをやることにした。買うのは勿論、マジセカシリーズのゲームだ。
場所は変わり、松国という街に向かった。
松国は僕のすむ街から約100キロメートル離れている。二輪免許のない僕の選べる交通手段は電車だが、2時間に1本しか来ない。しかも、運賃も高い。
まあ、背に腹は代えられないから、電車に乗った。2時間ゆられ、ようやくついた。松国は、マジセカを開発しているゲーム会社があり、
直営のゲームショップもあるくらいだ。とても人気があり、相当儲けているのだろう。
なぜ僕がこんなに説明するのがめんどくさいくらいの苦労をしてまで買いに来たのかというと、ここにしかないワケありのソフトがあるのだ。
開発者すらクリアできない、設定を難しくしすぎたためにファンからは絶対に誰もクリアできないと言われている幻のタイトル、
「マジックワールドRPG 未完のファンタジーワールド」だ。
このゲーム、なんと自分が選ぶ選択肢によってたくさんのエンディングがあるのだ。主人公が魔王を倒すという王道を貫いてきたマジセカの邪道とも言われるような設定だ。このタイトルを、僕は8月中に終わらせて、この世界で最初のクリア者になろうと考えていた。非常に甘い考えだったと、今の僕はすごく反省している。
ソフトを買いに行くときは、決まって松国のゲームショップに行くために、よく顔を合わせるカワノさんという店員のおじさんと顔馴染みで、よく色々と情報を教えてくれるのだが、そのおじさんもワケありソフトを買うときに僕にこう言った。「やめた方がいいと思うよ。」
結局僕はおじさんの忠告を軽く受け流し、ゲームを買い、自宅に戻った。戻るとすぐにパソコンに挿入し、起動するのを待つ。開いた画面に写る、タイトル。やはり素晴らしいグラフィックだ。スタートのボタンにカーソルを合わせ、マウスをクリックする。その次の瞬間、僕の目の前は、ぐらっとゆらいだ。
数時間たったのだろうか、僕は気がついた。ここ最近の疲労で倒れてしまったのだろうか?そういう考えが頭を横切った。が、立ち上がり、顔を上げ、目の前に映る景色を見て、僕はすぐに悟った。
「ここは…………まさか…………………」
なんと僕は、マジセカの世界に迷い混んでしまったようだ。
つたない文章からも分かる通り、この作品は僕が執筆する最初の作品となります。最初から異世界もの選ぶとか、どんだけ自分の思考を追い込むんだよ!とか考えている読者の方もいるとおもいますが、自分なりに努力してまいります。僕の励みになるので、たくさんの評価をお待ちしてます!!