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第6話 そうして私は地上に落とされた

「はぁ、はぁ・・・これでだいぶ片付いたかな?」

この家に来て早3日、ようやく片付けの終わりが見えてくる、家具もメルの好みの位置に置き換えられ本も大小分けて丁寧に棚にしまわれていた。

「ほぁっ・・・これで心置きなく出掛けらるかなー」

メルは心労から解放されソファーにもたれ掛ける。

「あっ・・・あと庭の雑草抜かなきゃ・・・でもそれは今度にしよーーさて・・・」

しばらく物思いにふけメルは1番お気に入りの白を基調にしたワンピースと花のワッペンで装飾された帽子を被り肩掛けカバン手にかけ外出の準備をはじめる。これらは街のフリーマーケットで揃えたものだ。

「んふーー!やっと・・・やっとこれで自由だーーー」

他に誰も居ないためか子供みたいに好奇心を爆発させ満面の笑みでそう叫ぶとメルは玄関の扉をテンション高く開ける。すると

「ん、んぐぅ〜・・・」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁだ、大丈夫ですかー!!!」

メルは仰天した。家の庭先で幼い体格の金髪少女が倒れ込んでいたのだ。辺りには純白の羽が所々に散乱している。

急いで近づくと

「うぐっ・・・んぐぅ〜・・・」

何やら聞いたことのある声と身に覚えのある容姿。

「ア、アルルちゃん?・・・どうしたの!」

それはメルが初めてこの世界で友達になり恩人でもあり神の遣いでもある天使、アルルだった。

身体中ボロボロのアルルはゆっくりと起き上がり

「どうしたもこうしたもないわよー、全部アンタのせいよーー」

メルに向かって大声で怒鳴り立てた。

「えっ?ええ?どういう事なの・・・私のせいって?」

メルはプンスカ不機嫌なアルルをひとまず家の中に入れることにした。


「でっ、何があったのアルルちゃん、それに全身アザだらけ・・・病院行った方が・・・」

メルは深くアルルの事を心配しながら話かける。

ギロリとメルの方を睨みアルルは口を開いた。

「掟を破った罪で地上に落とされた・・・」

メルはふと、あの時アルルの能力で先生たちの思考を操作した時の事を思い出す。

(あっ、あれか〜・・・)

「ち、地上に落とされたってことはつまり???・・・」

しかし心当たりのある事は話さずに会話を続けた。

「天界を追放されたってことよーーー!!!」

アルルは涙ながらに両手を上げて叫ぶ。さらに続けて

「あんたの前世の記憶を消す使命を怠った事、人間の思考を勝手に弄ったこと、あと天使の存在をべらべら喋った事のトリプルコンボで主人はカンカンよー」

(やっぱりそれも含まれてるかぁー)

「ゴ、ゴメン、この前の無理強いは謝るよー」

メルは両手を強く眼前で合わせアルルをなだめた。

「で、でも最後のはアルルちゃんの不手際で私は関係ないよー」

「そ、それもそうねアレは私の不覚だったわ・・・」

アルルも一部については自分の非である事を認めた。

しかし

「で、でも大多数はメル、あんたが関わっている事は事実なんだからね、それを分かって?」

「・・・・・・」

メルは言い返せなかった。


「ちなみに地上に落ちたらこの後どうなるの?」

メルは罪悪感に苛まれるも恐る恐る問いかけた。

「地上で150年修行しろってさ」

「ひゃ、150年!!!」

途方もない年月にメルは一層自責の念に駆られる。

「まぁ、400年天使やってる私からしたらその位たいした月日じゃないんだけど」

「えっ?」

さらっと衝撃の事実を口にするアルルにメルの目は点になる。

「え、えーーーーー!!!アルルちゃん400歳ってことーーー?」

「天使ならまだ見習って所よ」

「てっきり10歳くらいかと・・・凄いね・・・って言うか天使って老けないの?」

「ふん!当たり前よ、神の御前に仕える神聖な存在なんだから、これからはあまり偉そうなことは言えないわね」

メルよりずっと長い悠久の時を過ごし、それに伴う知識と経験の豊富さを武器にアルルは少々勝ち誇った気分になる。

(でも明らかに言動とかは私より子供だよね・・・怒りそうだから言わないでおこう)


「まぁいいわ、天界の生活にも退屈してたし」

地上に落とされた事を意外にもそこまで悪く思って

いない様子だった、ならアルルはなぜあそこまで激昂したのかメルは疑問に思う。

「怒って・・・ないの?・・・もう」

「そういう訳じゃないけど、もういいわ、この世界私そんな嫌いじゃないしね」

メルはほとぼりが冷めたと思い胸を撫で下ろす。

「何か入れるよ、ハーブティーでいい?」

「うん」

メルはお茶の用意をしながら気になった事を尋ねる。

「アルルちゃんはこれからどうするの?」

「そうねーとりあえず学校でも行きながら寮生活するわ、メルのうちに居候する事も考えたけどココ街外れで利便性悪いし」

アルルも地上に落とされた以上それなりの生活プランは立てていたようだ。

「へぇ〜」

続けてメルは

「でもその気になれば翼でパーって一っ飛び出来るんじゃ?あっでも人に見つかっちゃったらダメか」

メルが笑顔で話していると

「んぐっ・・・」

「ん?どうしたのアルルちゃん?」

メルが振り向くと、アルルはプルプルと身体を震わせ子供がぐずる前のように表情も強張らせていた。

「むしり取られた・・・」

小さな虫の声みたいにアルルは呟く。

「えっ、何て?」

「だーかーらーむしり取られたのよー羽を」

大粒の涙を流しながらアルルは再度激昂した。

「む、むしり取られたって・・・それも罪?」

「そうよっ!あれめっちゃ痛かったんだからっ!!!」

メルの顔が青ざめる。

アルルはソファーでうずくまり怯えながら両耳を塞いだ。相当にトラウマになっていると見て取れる。

「ゴ、ゴメンね・・・そんな辛い事が・・・」

すかさずなだめるようにメルはアルルの両肩を優しくさすった。

「怖い怖い怖い・・・もうあんな思いはまっぴら・・・」

(だからさっきあんなに怒ってたんだ・・・確かに生えてる羽を雑草みたいにごっそり抜かれたら恐怖だよね)

メルは同情しながらアルルをいたわり続けるのだった。








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