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第2話 転生の真実

「今からあなたの前世の記憶を抹消する!」

突如現れた金髪幼天使にそう言われるほまれは唖然とした。

「き、記憶を抹消?・・・あのー天いやアルルちゃんだっけ・・・なぜそんな事を・・・」

ほまれは訳の分からないままアルルに問いかけた。

「そうね、いきなりそんな事言われてもあたふたするだけよね。いいわどうせ消すんだし篠原ほまれ!あなたの真実を教えたげる」

「真実って・・・私が転生した理由の事!」

ほまれはハッとなりながら我に返って興味本意でアルルにそう尋ねる。当然だろう、ほまれが今一番知りたい謎が明かされようとしているのだから。

「察しがいいわね、そうよ、あなたが死んでからこっちへ来るまでの経緯」

「本当に転生なんて事が・・・」

そしてアルルは部屋の木椅子に腰掛けて話をはじめた。

ほまれも息を呑みながら聴き入る。

「篠原ほまれ、あなたは前世に於いて死んだ、死因は過労ね」

「た、確かに相当疲労は溜まってたっけ・・・」

「そしてあなたの魂は一度私たちが居る天界に登った、そう裁判を受けるために」

「あの世って本当にあったのかーーー」

ほまれは前世で悪い事をしてないか咄嗟に思い返すがここが地獄では無いことに安堵した。

「そこで死者は裁きを受け天界、地獄もしくは転生のどれかが主人から言い渡されるの」

「主人って神様の事?」

「そうよ」

「前世で良き行いをした者は天界、逆に罪を犯したりした悪人は地獄行きね」

「よ、良かった・・・私地獄行きじゃなきくて」

「そして前世で真っ当に生きながらも心半ばにして若く死んだ人は転生の判決を受ける、つまりあなたみたいな人ね」

ほまれはアルルの手をサッと握った

「ア、アルルちゃん・・・今若いって言った!」

前世で41歳だったほまれは思わぬアルルの言葉に嬉しさの表情を浮かべた。

「まぁ転生の基準は概ね50歳までね・・・それより手離して!迂闊に天使に触れていいもんじゃないわ」

幼いながらも天使という事に誇りを持っているようだ。

「ここからが重要なんだけど、転生した人はまず前世の身分、資産等によって次の転生先での環境が決まるわ」

「ふむふむ」

ほまれは更に真剣な表情に変わった。

「あなたは独身で殆ど身内との関わりが無かったようね、故にこの世界に転生した後も前世と同じように独り身って訳」

「うーよく考えるなー」

「まぁ母親が亡くなってしまったのは同情するわ、それは想定外だった」

「そっか・・・」

天涯孤独の事実を告げられたほまれの表情が少し暗くなる。

「あとあなた前世で相当貯金をしていたらしいじゃない?」

「そそ、そうだよ!額にして4700万!!!あれはどうなったの?」

ほまれが目の色を赤くして必死に尋ねた、当然だろう前世ではそれこそが彼女の生きる希望みたいなものだったのだから。

「安心なさい、それもちゃんと考慮してあるわ、おそらく前世と同じくらいの資産が引き継がれているはずよ」

「ほ、本当かなぁ・・・」

ほまれは半信半疑になりつつもさらに話を聴く。

「さてと、前置きはこのくらいにして、さっき言った記憶の話」

「んー今は記憶の事よりお金・・・」

「転生する者はまず前世の記憶を天界で抹消されるの」

「ど、どうして?」

「決まってるでしょ、転生先で前世の記憶を利用されないようにする為よ。そんなこと許したらチート状態でしょっ!」

「なるほど・・・」

ほまれは妙に納得した。

「そんでほまれ、あなたに関してだけど」

ゴクリ・・・とほまれは息を呑んだ。

「こっちの不手際であなたの記憶を抹消し忘れた!」

「ほぇ?」

「だから今あなたは前世の記憶を持ったままこの世界に居るって訳!それは不公平だから主人から、あなたの記憶を抹消するために遣わされたのよ」

「ちょっ・・・ちょっと待って!そしたら私赤ちゃんみたいな状態になるって事?」

ほまれはその宣告に慌てふためいた。

「そういう事ね。でも孤児院とか行けば何とかなるでしょ?資産もたんまり引き継いでるんだし」

アルルは他人事のようにそう言った。

「そ、それは困るよ!今知識も何も無くしたらこの世界で生きていける訳ないじゃーーん!」

ほまれはアルルにすがりつくようにして焦りの表情で訴えかける。しかし。

「知らないわよそんなの!これが本当のルールなの、受け入れなさい」

アルルは非情に突っぱねた。

しかしほまれも引き下がらない。

「そもそも記憶を抹消し忘れたのはそちら側の都合では?」

ほまれはに鋭い眼差しを向け

「お願い!13年もブランクがあるこの状態で知識も何も無くしたらそれこそ本当に死ぬ、アルルちゃんもこの気持ち分かるでしょ」

ほまれの必死の懇願にアルルの表情も少し同情気味になった。

「でも、これはルールで・・・」

「頼むよーそだ、何か甘いものでも奢るよクレープとか」

「ク、クレープ・・・」

アルルはその一言に完全に使命の事など忘れて誘惑に乗ってしまう。

「まぁそこまで言うなら考えなくもないけど・・・確かにこっちの不手際だし」

「流石天使、物分かりが良い」

(あまりこういう買収的な事はしたくないんだけど・・・まっお金じゃないしいいよね、しかしちょろいなー」

ほまれは内心薄ら笑いしながら勝ち誇った気分になった。

「でも、一つだけ忠告しとくわ!」

「ん!」

「むやみやたら前世の記憶を利用して悪巧みしないこと!」

アルルは険しい表情でほまれを指差した。

「し、しないよーそんな事・・・ちなみにしたらどうなるの?」

「死後地獄に落ちる」

その忠告にほまれは冷や汗をかきながら息を呑む。

「ところでクレープはいつ奢ってくれるの?」

一転して顔が緩くなり本来の子供のようなキラキラした目に戻った。

「明日でもいいよ、この世界の事まだ知らないし、色々見て回りたいし」

「オッケー約束ね」

ほまれは記憶の抹消を逃れた事に安堵するも当然まだ不安はあり再度アルルに問いかける。

「本当に私死んで転生したんだね・・・」

「そうよ、まだ実感湧かない?」

「当たり前だよ」

ほまれの不安そうな表情にアルルは

「まっすぐ慣れるでしょ、ここは来世なんだから前世の事を引きずるのは止めた方がいいよ、意味ないし」

励ますように言葉をかけた。

「そうだね、アルルちゃんの話を聞いたら辻褄も合ったしもう前世の事は考える必要はないよね」

前向きになるほまれにアルルは優しい顔になる。

ほまれもすっかり気が楽になり波乱万丈な一日を振り返るのだった。





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