真っ赤に染めた
赤い実食べて真っ赤に染めた。
久しぶりに会った子は何時もの灰色の姿で、真っ赤になったわたしをみてびっくりして目を丸くした。
「どうして赤になってしまったの?あんなに綺麗な白だったじゃない」
ぱたぱたと駆け寄って、その子は全身真っ赤に染まったわたしを覗き込んだ。
「わたしは白だったから仲間になれないって言われたの、だから赤く染めたのよ!」
えへんと胸を張ってみせる、白だった時のわたしは群れに加わっていなかった。けれどそれは何だか寂しくて仲間が欲しかったの、赤色をまとって囀っている彼女たちを見て、仲間になりたいって思ったの、今はもう仲間の一員よ、赤い子たちはわたしを仲間だと言ってくれるわ!
仲間ができたわたしは、灰色の子にそう自慢して見せたけれど、彼女は何だか悲しそうに目を伏せた。
「どうしてなの?あなたは白色のままでとても綺麗だったじゃない」
「だって白だと仲間になれなかったの。見てよ見て!赤だってこんなに綺麗なのよ」
くるりと一周回るけれど、彼女の表情は晴れないどころか、ますます悲しそうな顔でわたしの言葉に首を横にふるった。
「あなたの赤色は偽物でしょう、赤くないと仲間じゃないなんてそんなの変。わたしは灰色で汚い色だって言われたことがあるわ、でも色を変えようなんて思ったことない。だってこれがわたしだもの、色だけ真似して仲間になれても嬉しくない」
わたしは灰色の子の言葉にショックを受けた、だってだって、白だと仲間になれなかったのよ、だから同じ真っ赤に染めたの、とってもとっても頑張ったのよ、今も仲間でいるために頑張っているのよ、そのお陰で仲間がいっぱい出来たの。もう寂しくないよ。
「わたしは同じ色だっていうだけで、たくさんの仲間が出来るより、違う色でもいいよって言ってくれる少しの仲間がいればいい。ねえ、わたしは灰色だけど、真っ白なあなたの色がとても好きよ」
灰色の子の言葉にぽろぽろと涙が溢れてきた、だってだって、白だったわたしが赤い子に話しかけたらあなたは同じ色じゃないから仲間に入れてやらないって言われたの、だからすごくすごくとっても頑張って赤い色になった、やっと仲間だよって言ってもらえたけれど、いつ赤が剥がれて白が見えてしまうんじゃないかって怯えてた。寂しくはなくなったのに、怖くなったの。
でもそんなの必要無かったんだ、ちゃんとわたしの色で好きって言ってくれる子がいる。わあわあ泣いて、たくさん泣いて、たくさん塗り固めた赤がどろどろ落ちて、わたしの下に赤い水たまりが出来る。
目を真っ赤に腫らして、真っ白に戻ってしまったわたしをみて灰色の子は笑った。
「ほら、ありのままのあなたがいちばん素敵よ」
読んでくれた方ありがとうございます。