風変わり姫のなぜ、なんで?
お子様に読み聞かせられるお話を意識しました。
今回は女の子向けかもしれません。
ある国に、とてもキレイで優しいお姫様がおりました。
でもこのお姫様、少し変わっています。
美しいバラよりもサボテンが好きで、カメやカエルを飼っています。
宝石や甘いお菓子に興味はなく、体を動かす事が好きなのです。
そんなお姫様は、いつまで経っても結婚しようとしません。
王様はとても心配していました。
そんな話を聞きつけて、他の国の王様や貴族たちがやってきます。
「ぜひうちの王子と結婚を」
「いや、ぜひうちの息子と結婚を」
「いや、ぜひうちの子と結婚を」
王様は喜びましたがお姫様は不満気です。
お姫様は召し使いに聞きました。
「なぜ、本人ではなく親がやって来るのかしら?」
召し使いは答えます。
「あなたに会うのが恥ずかしいのではないですか」
「なんで、知らない人と結婚しなければいけないの?」
召し使いは王様にお姫様の気持ちを伝えました。
すると今度は王子様や貴族の息子たちがお姫様に会いに来るようになりました。
彼らは美しい首飾りや珍しい宝石、大きな花束を持ってきます。
お姫様が断っても、彼らは次から次に贈り物を置いていくのです。
お姫様は召し使いに聞きました。
「なぜ、みんな贈り物を持って来るの?」
召し使いは答えます。
「あなたに気に入って欲しいからです」
「なんで、みんなは私が物をもらうと喜ぶと思うの?」
召し使いは王様にお姫様の話を伝えました。
王様は困ってしまいました。
もう国中の偉い貴族の若者は、一人残らずお姫様の目に叶わず、帰ってしまったのです。
王様は思い切って、国中にお姫様の結婚相手を探すというおふれを出しました。
国中の若者がお城へやってきます。
「私は歌が得意です。姫に愛の歌を歌いましょう」
「私は料理が得意です。姫のために甘いお菓子を作りましょう」
「私は学者です。必ず国の役にたってみせましょう」
毎日毎日、若者たちは自分の話をしにやって来ます。
疲れてしまったお姫様は召し使いに聞きました。
「なぜ、みんな自分の事ばかり話すの?」
召し使いは答えます。
「あなたに自分の事を知ってほしいからです」
「なんで、みんなは私の事を知ろうとしないの?」
召し使いは王様にお姫様の文句を伝えました。
王様はもっと困ってしまいました。
それから少しして、お姫様は王様に聞きました。
「なぜ、お父様は私が結婚しないと困るの?」
「お前が心配なのだ」
そう王様は答えます。
「でも私、よく知らない人や、私の事を知らない人とは結婚したくないわ」
「その内分かっていくだろう」
「でも私、欲しくない物を押し付ける人とは結婚したくないわ」
「結婚したら、贈り物はいらないと言えばいい」
「でも私、自分の事ばかり話して私の話を聞いてくれない人とは結婚したくないわ」
王様はもっともっと困ってしまいました。
「お互いをよく知り、話を聞いてくれる。そんな都合の良い若者などいるはずない」
お姫様は王様に聞きます。
「なんで、いないと思うの?」
「いたら、とっくに結婚を許しているさ」
「なら、問題ないわね」
お姫様はにっこり笑いました。
その後、国をあげての結婚式が開かれました。
お姫様の隣には召し使いが、いえ、新しい王子様が照れた様子で立っています。
二人はいつまでも仲良く、幸せに暮らしました。