〜「ゾンビ」より終わりを込めて。〜
小説書くの初心者なんですけど、ゾンビ物が好きすぎて自分で書いてみました。
ご都合主義になり過ぎず、1人1人の固有キャラを丁寧に書いていきたいと思っています。
どうか僕の小説よろしくお願いします。
「お先真っ暗」
まさにそれを体現している1人の青年が、なんの栄光もない1日を始めた。
ゴミがあちこちに散らかり、指の油で指紋がべっとりとついたスマホ、乱雑に投げられたゲームのコントローラー。
風呂にも入らず、フケがパラパラと落ちる様はとても目も当てられない光景だった。
「ふぁ〜あーあ」
汚い口から溢れ出る臭い息、外にも出ない毎日のおかげで真っ白になった細い腕と肌。
なんのために生きているのか、彼にその答えを見出せる時が来るのか。
青年の母「祐介、あんた22になったんだから、今度こそ受かってきなさいよ?母さん、心配してるのよ?」
祐介「うるせえなババア!こっちは受かりたくても受かんねえんだよ!どうなるかなんてわかんねえんだからグダグダ言ってんなクソが!」
母の心の底からの心配を全く意に返さず、ただの八つ当たりでその場をしのぐ。
その時の母の顔は哀しげに、ただ哀れな息子をみつめるのであった。
3日ぶりのシャワーを浴びて、身体の垢をこすり落とし、歯を磨いてスーツに着替えた。
何度も何度もスーツに着替えるうちに、ネクタイを締め完璧にスーツを着こなせるようになっていた祐介は、スルスルと難なく着替えた。
ドライヤーで髪を乾かし、ワックスで髪をセットし、ボサボサの髪をまとめた。
革靴を履き、久しぶりに実家を出て行き、その背中を母は見送った。
祐介の母「行ってらっしゃい。」
一言そう呟き、ドアの鍵を閉めた。
祐介は車のエンジンをかけ、車を走らせ、面接会場へ向かった。
五分程走っていると、道に黒猫の死体が見えた。
祐介「うーわ黒猫じゃん、また落ちるってか?」
ハンドルを切り、死体を避け、先を急いだ。
祐介の車が完全に見えなくなった時、死体にカラスが飛んできた。
ツンツンと肉をつつき、死体を食らう。
ぶちぶちと肉を食べていると、黒猫の首がピクピクと動き出した。
カラスは気付かずにつついていると、猫の腕があっという間にカラスを押さえつけ、首に噛み付いた。
さっきまで食べられていた死体が、今度はカラスの首を噛みちぎり、頭をバリバリ噛み砕き始めた。
祐介「あと10分くらいかな〜」
ナビを頼りに目的地に向かっていた祐介は普段全く来ない街中を通りかかっていた。
飲食店やコンビニ、大型のデパートが並び、田舎にしては結構賑やかな風景、いつ以来ここを通っただろうか、そんな感想を抱いていた。
祐介「まだ時間あるし、コーヒーでも飲むかな」
そう言いながら近くのコンビニに寄り道をした。
中に入るとサボりであろう女子高生が目に入った。
薄い茶髪に染まったショートヘアーは片目を隠し、週刊誌を立ち読みしている姿はどこか様になっていた。
祐介「〔まったく…今9時半だぞ…そんな事してたら俺みたいなクズになっちまうぞ…まあ、女なんて身体売ればいくらでも稼げるのか…〕」
なんて事を考えながらコーヒーを買い、コーヒーマシンのボタンを押した。
アイスコーヒーが出来上がると、蓋を閉めて店内を出ようとした。
すると1人の老人が入ってきた。
祐介「うっ!」
強烈な臭いが祐介の鼻を捉えた。
嗅いだことのない臭い、ゴミの山から出る臭いともまた違う強烈な異臭、こんな臭いは嗅いだことがない。
あまりの臭さに店内中の人間が老人を見た。
老人「か…かきゃき…」
何やら上手く話せず、手を変な形にして、足を引きずり、祐介の前で止まった。
祐介「なん…だよ?ちょっと臭えぞじいさん…あ、うそちょっとてかだいぶ臭え」
老人「き…かか…あ…」
祐介は老人の奇声を無視して老人を避け、自動ドアの外に出た。
祐介「なんだったんだあのじいさん…ありゃ病気かなんかか?」
老人はあたりをキョロキョロと見回し、店員と目があった。
老人はしばらくジーッと店員を見つめた。
店員「な…なにかごようでしょうか?」
臭いで顔を引きつらせながら、老人に問いかける。
すると老人は歯をむき出しにして店員に噛み付いた。
店員「うわぁ!何すんだクソ!痛えぇぇ!」
ダラダラと血が流れだし、2人の異常な光景に店内は軽いパニックになった。
客1「おいおい大丈夫かあれ?血めっちゃ出てるぞ?」
客2「警察呼んだ方がいいかしら?」
すると、老人は店員の首の肉を噛みちぎった。
店員「この野郎…何しやがんだ!」
叫びながら老人を殴り飛ばし、商品棚に吹き飛ばした。
客3「あのー、大丈夫ですか?だいぶ血が出てますよ?」
店員「大丈夫じゃないですよまったく、なんなんですかね、ちょっと店長に電話して病院行って来ますよ」
客2「いきなりどうしたんですかね?」
そう言いながらピクピクと痙攣している老人を覗き込んだ。
すると彼女の首が一瞬で消えた。
噴水の様に溢れ出る血をよそ目に、老人は真っ白な目をギョロッと開き、頭を加えながらバリバリと食らっていた。
客3「ギャァァァァァ!!!!」
店内に悲鳴が上がった。
祐介はまったく気付かずに、車内でコーヒーを飲みながら下を向き、スマホをいじっていた。
店員「あ…あ…いてえ…あ」
さっきまでとは比べ物にならない程に真っ白になった顔色を浮かばせ、首を抑えながらその場にへたり込んだ。
客1「この…クソじじいが!」
女子高生「なに…あれ、やばすぎ…」
老人を殴り飛ばし、馬乗りになりながら老人をボコボコにし始めると、店員がゆっくり立ち上がった。
店員「い…いら…じゃいま…」
すると客1の首が一瞬で消えた。
女子高生「まじかよ…」
身の危険を感じ、恐怖が彼女の足を奮い立たせその場を走りだし、店を出た。
すると老人と店員が女子高生の方を見て物凄い速さで追いかけ始めた。
女子高生「やばいやばいやばいやばい」
ふと辺りを見ると車で呑気にコーヒーを飲んでスマホをいじってるアホを見つけた。
素早く助手席のドアに回り込み、車に乗り込んだ。
女子高生「車出して!はやく!」
祐介「うわ!なんだよ!てかだれだよ!」
フロントガラスに老人と店員が飛び込んで来た。
祐介「うわ!今度はなんだよ!?さっきのじいさん!?」
女子高生「はやく!絶対人間じゃない!はやく逃げて!」
祐介はバックにギアを入れ、アクセルをベタ踏みして、老人と店員を振りほどいた。
祐介「ふざけんなよ、何だってんだよ!」
ドライブにギアを切り替え、道路へ出た。
近くにみえる高校からは大量に逃げ出している高校生たちが、そしてデパートからも大量に人が溢れ出し、辺りには全速力で逃げる人々でいつのまにか溢れかえっていた。
祐介「な…なんだよ…さっきまでこんなんじゃなかっただろ…」
女子高生「こんなんなら学校サボんなきゃ良かった…」
急に変わった世界に戸惑う祐介、辺りが地獄に変わっていく様を目に焼き付けながら、いろいろな思考が頭にグルグルと回っていた。
女子高生「ねえってば!」
はっと我に帰り、彼女の言葉に気がついた。
祐介「なんだよ!?びっくりするだろ?」
女子高生「さっきから呼んでましたけど!?」
ムッとしたジト目でこちらを見つめていた。
祐介「悪い悪い、でなんだよ?」
女子高生「あなたがいなきゃ死んでた、ほんとありがとう、私吉永蓮華、よろしくね?」
クールなポーカフェイスでそう言った彼女はとても冷静に見えた。
祐介「あ、ああよろしく、俺は西田祐介、つかお前、すげえ冷静だな」
蓮華「おまえじゃない、蓮華だし、慌てたところで状況が良くなるわけじゃないし、私まだ死にたくないし」
そう言いながら必死に身体の震えを抑えて、慌てるのを見せない様にしている彼女の様子に祐介は気付いた。
祐介「悪いな蓮華、俺もまだ死にたくねえ、そして親が心配だ、このまま実家に引き返すけどいいか?」
蓮華「いいよ目的地は祐介が決めて、私は安全な場所で勝手におろして」
祐介「りょーかい。」
アクセルを踏み込み、来た道を引き返す。
車の外は人間だった者たちが人間を襲い、食らっていた。
時を同じくして、とある交番。
昨日配属されたばかりの21歳の玉音秋人は、彼に噛まれたと言いながら血だらけで、泣き叫びながら現れた女性の対応に追われていた。
秋人「急に噛まれた?喧嘩して怒らせたとかじゃなくて?」
女性「そうなのよぉっ!別に怒りっぽい人とかじゃなかったし、急に目がおかしくなったのよぉ!」
秋人「目ですか?どのように?甘いにおいがしたり、落ち着きがなかったりもしましたか?」
女性「甘いどころか腐ったにおいがしたわよ!目なんて真っ白で、落ち着くどころか飛びかかって噛み付いてきたのよ!」
秋人「その問題の彼は今どこにいるんですか?」
女性「わかんないわよ!噛み付いたと思ったら他の人に襲いかかって、その隙に逃げてきたんだもん!」
秋人「わかりました、その噛まれたところへ案内してください」
そう言うと秋人は立ち上がり、交番の外へ出た。
だが女性は下を向き、棒立ちしている。
秋人「あ、あの?案内してもらえませんかね?」
女性「……」
黙ったまま下を向く女性に秋人は戸惑い、しばらく見つめる事しかできないでいた。
「今すぐそいつから離れろ!!」
大声で叫びながら走り、警告を促したのは同じ交番に勤めている富田巡査であった。
秋人「富田さん!?」
ゼェゼェと息を切らしながら、ふくよかな身体を揺らし、秋人の隣で止まった。
富田「玉音、そいつもう人間じゃねえぞ」
秋人「はぁ?何言ってるんですか?」
「ドォォンッ!!」
とんでもなくでかい衝撃音が響き渡った。
それを響かせたのは他でもない、目の前にいる女性であった。
彼女が壁を殴った音であった。
女性「か…また…かまれ…た」
パクパクと口を動かしながらこちらに首をがくんと上げた。
目は真っ白な気味の悪い見た目になり、今度は歯をガチガチと震わせ始めた。
秋人「な…だい…じょうぶですか?」
富田「あほか!そこら辺にあんな怪物が溢れかえってんだよ!さっさと逃げるぞ!」
それが彼の最期の言葉だった。
時間にして2秒、一瞬にして彼の頭と胴体は分離してしまった。
秋人「…え?」
さっきまで目の前にいた怪物が姿を消した。
「ゴリゴリ」
鈍い音が鳴った。
後ろを振り返ると富田巡査の頭を加えた女性がいた。
秋人「うわぁぁぁぁ!!!」
激しい絶叫とは裏腹に、秋人は女性の頭を警棒でフルスイングした。
だが、壊れたのは警棒の方であった。
グニャっとひしゃげた無残な警棒から見て取れる戦力差に、秋人の身体は逃亡を命令した。
全速力で走り、一切振り返る事も無く、一気に広い街中まで猛ダッシュした。
すると目の前には更なるサプライズが待っていた。
秋人「ま…まじかよ…」
富田巡査の言った通り、あちこちで人を襲う人ならざる者たち、老若男女、全員平等に食い殺されて行く。
手足を噛みちぎられ、這いつくばりながら2体から逃げる少年、頭に噛み付いたまま離れず、ゴリゴリと頭を噛み潰される女子高生、サラリーマン風のスーツの男性は頰から顔を食いちぎられるていた。
秋人「どうしちまったんだ…」
絶望感に打ちのめされ、目の前の現実を認めようとしない秋人。
だが、いかに現実を受け入れ、恐怖と戦えるかが生き死にを分ける大きな要因になる事に秋人は気付いているのか…。
すると1匹のビーグルが走ってきた。
ビーグル「ワン!」
秋人「ハッ!」
ビーグルの遠吠えで我に帰った秋人は目の前の地獄を再び目に焼き付けた。
秋人「立ち止まっていても食い殺されるだけだ」
秋人「とりあえずありがとな、お前が吠えなきゃぼーっとしたままだったよ」
だが秋人は再び恐怖した。
あの怪物と同じように、このビーグルも目が真っ白にくすんでいた。
ビーグル「はっ…はっ」
舌を出してこちらにジリジリと近づいてくる。
秋人「油断禁物って訳ね…」
すると目の前に、スーツ姿の男と、美しい容姿の女子高生を乗せたセダンがビーグルを引き飛ばし、停止した。
祐介「早く乗れ!食い殺されんぞ!」
秋人は素早く車のドアを開け、後ろへ乗り込んだ。
秋人が乗り込んだ瞬間、猛スピードで走り出した。
蓮華「大丈夫?どっか噛まれたりしてない?」
秋人「すみません…大丈夫です、噛まれてもいません…と言うよりなんなんですかこの現状は…」
祐介「そんなん知るか!俺がききてえよ!とりあえず食われんなって事だろ!」
恐怖と不安からくるストレスに、祐介はイライラしていたようだ。
そして頭によぎったのは母の姿と弟の事、朝はあんな酷い言葉を浴びせ、そして優しさを無下にしてしまった思いが駆け巡る。
蓮華「まあまあ、八つ当たりしたって何も変わんないよ」
祐介「俺は西田祐介だ、お巡りさん、あんた銃くらい持ってんだろ?」
秋人「私は玉音秋人です、所持していますよ」
祐介「あんたはその銃であいつら追っ払ってくれ、俺は運転して逃げまくるからよ」
次々と怪物達を追い抜き、猛スピードで駆け抜けていく。
祐介「こんな状況じゃなきゃ俺はスピード違反で捕まってんな」
笑いながら呟いた。
蓮華「それより祐介、実家にはまだつかないの?」
祐介「あと少しだ…あと少し…」
そう言いながら3分程で祐介は自宅にたどり着いた。
幸い周りには怪物どもの姿が見えず、不幸中の幸いであった。
祐介「すぐ戻ってくる、そしてすぐ俺が戻らなかったら秋人さんあんたが運転して逃げてくれ「
秋人「わかった…一応僕も付いて行こうか?」
祐介「馬鹿か!それなら誰が蓮華を守るんだよ!俺は別にいいから蓮華を守ってやってくれ!」
祐介は車を飛び出し、自宅の玄関に急いで向かった。
祐介「母さん!いないのか!いるならさっさと出てこいよ!」
叫びながらドアを叩く。
そしてドアノブを回すと開いていることに気がついた。
祐介「まじかよ…」
ドアノブが開いている、少なくとも自分が出て行った後に母が鍵を開けたという事。
恐る恐る家に上がる。
祐介「母さん、さっさと逃げるぞ、外はやべえからよ」
警戒しながら茶の間を除く、だが誰もいない。
祐介「いねえのか?もしかしてもう逃げたとか…」
最後の確認を兼ねて母の寝室を除く。
祐介「うわっ!?」
そこにいたのはニヤニヤと笑いながらグレーのベストを着こなす少年だった。
少年「遅かったね?」
祐介「てめえ!真琴じゃねえか!ビビらせんなあほが!」
祐介の弟の西田真琴であった。
真琴「あはは、いやー、驚かせるつもりはなかったんだけどね、外があんなんだからここで静かにしてたんだ」
祐介「つかお前…学校から逃げて来たのか…?」
真琴「うん、あいつらよーく見てたらさ激しく動く物にしか寄っていかないんだ、静かに歩いたり、近くに寄らなければ襲われる事はないし、何より僕小さいから余計に逃げやすかったよ」
祐介「なんちゅう弟だよ全く…」
真琴「そして母さんの事だけど、帰って来た時にはいなかった…どこかに出かけたか、それか考えたくないけど…」
祐介「わかった…もういい、とりあえずここにはいないんだな、なら一緒にこい、さっさと逃げるぞ」
真琴「わかったよ兄さん、あんまり慌てちゃダメだよ?」
そして2人は車に戻った。
真琴「初めまして皆さん!僕は西田真琴!祐介兄さんの弟です」
蓮華「よろしくね、私蓮華、ていうかお母さんは?」
祐介「いなかった…逃げ延びててくれればいいが、とりあえずここにはいねえ、さっさと安全なとこまで逃げるぞ」
真琴「兄さんの車に乗るの久しぶりだなぁ!いっつも家の中で引きこもってるからさ!」
祐介「うるせぇ!ほんとにお前は可愛くねえなぁ!」
こんな状況でも兄をからかい、余裕を見せる少年に皆が自らの情けなさを感じていた。
秋人「すごいな真琴君は、こんな状況でもそんなに余裕があるなんて…僕は玉音秋人、よろしくね」
真琴「何もすごくないよ、ただ目の前の事を素直に受け止めて行動してるだけだし、あの怪物達から逃げるだけでしょ?そんなの簡単だよ、ハハッ」
そう言って笑う少年は本当に少年なのかと疑いすら持てるほど余裕があった。
祐介「昔から変に頭だけ良くてよ、人の癖とか表情を見て何考えたりしてるか当てたりしてな…そんなんだから友達いねえんだよ!」
真琴「兄さんもグレにグレて周りから除け者にされて危険人物扱いされて友達いないじゃないか!人の事言えないよ兄さんは!あははははは」
祐介「やっぱ降りろ!もうやだ!俺は拗ねたぞ!」
皆がそのやり取りを見て、この地獄の中でほんのひと時の愉快さを感じた。
秋人「ハハッ、仲が良いんですね」
真琴「いやいや、最近なんて顔も合わせてなかったしいつも母さんば泣かせて仕事もしないでぐうたら部屋にこもってゲームばっかりしていて風呂にもまともに入らず歯もたまにしか磨かない、こんな兄さん仲がいいなんて決してそんな事ないですよ!」
祐介はシクシクと運転席で暗くなり泣いていた。
真琴「どうしたの兄さん?泣くなんておかしいよ、だって全て自分が撒いた種じゃないか!あ、そっか!もしかして触れて欲しくないとこ触れられて悲しんでるの?それならごめんね!あやまるよ!」
蓮華「もうやめてあげて!」
秋人「そ、そうですよ、やめてあげてください」
「ギャァァァァァッ!!」
全員が声が聞こえた方向に振り向く。
するとそこには更なる地獄が待っていた。
祐介「な…なんだありゃあ…」
蓮華「わかんないけど…」
真琴「兄さん、とりあえず逃げないと踏み潰されるね!」
8メートルはあろう巨体な怪物が逃げ惑う人々を踏み潰しながらこちらに迫って来ていた。
巨体な怪物「おぉぉぉ…」
目玉は真っ白になり、脳は丸見え、大きい腕が二本生えてはいるが、手のひらからはまた腕が枝のように生えている。
腹からは内臓が垂れ落ち、足は重機のタイヤほど太く、太ももから踵にかけて指が無数にはえていた。
するとその怪物は目の前に転んで腰を抜かしている少女を掴み顔のそばまで運んだ。
少女「いやァァァッ!!やだぁ!離して!」
すると少女はまるで歯磨き粉のチューブのように濁り潰され、目玉と内臓を穴という穴から飛び出させ即死した。
最後は怪物の口の中に消えて行った。
怪物は次に、同じく腰を抜かしている大学生くらいの女性に目をつけた。
先程と同じように手を伸ばし、女性はその命の終わりを覚悟した。
「パァン!パァン!」
銃弾が2発打ち込まれたのと同時に、祐介が運転する車から秋人が飛び出してきた。
怪物「グォォォォォ」
銃弾は頭と目に着弾したようだ。
苦しんでいる隙に秋人は女性を抱え上げ、祐介の車に走った。
真琴が後部座席のドアを開けた。
真琴「秋人さん!早く早く!」
秋人は女性ごと車に飛び乗ると、車は猛スピードで走り出した。
祐介「まったく無茶しやがる、あんたが助けなきゃとか言い出した時は参ったぜほんと」
真琴「正直僕ならみ捨ててるね」
秋人「はぁ…はぁ…とりあえず助かってよかった」
女性は気絶していた。
蓮華「安心するのは早いみたいよ…あいつ絶対走って追いかけて来るよ…」
怪物は陸上選手さながらのクラウチングスタートの姿勢を取り、走り出した。
まるで、先程秋人が放った銃弾のように、早く、一歩一歩が力強く、スタートを切った道路は爆発でもあったかのように陥没していた。
真琴「ちょっと想像以上にやばいんじゃない?」
明らかに焦りをみせ、予想の遥か上を行く速度で追いかけて来る怪物に真琴は恐怖していた。
蓮華「祐介やばいよ!追いつかれる!」
祐介「うるせえ!とっくに最高速度だよ!」
あと少しで怪物の手が届く寸前、怪物の動きが止まった。
そのまま祐介の車は猛スピードで道路を駆け抜けていった。
青年「いやぁ驚いたね、こんな巨大な化け物タイプもいたんだ」
怪物の頭には鉄パイプが突き刺ささり、怪物はゆっくりとその場に倒れた。
青年「いやぁしっかし、後処理部隊も楽じゃないね」
そう言う反面、彼はニコリと笑い、怪物の死体を見つめていた。
祐介「なぁ?気のせいだと思うんだけどよ、あのデカ物、倒れる時に人いなかったか?」
真琴「僕は見えなかったよ」
女性「あ…あのぉ…」
どうやら気絶していた女性が目を覚ましたようだ。
祐介「おおっ!目ぇさめたかい!あんたあと少しで食われちまうとこだったんだぜ!」
秋人「無事で何よりですよ」
女性「私…七宮楓って言います…助けていただき本当にありがとうございます」
蓮華「隣のお巡りさんが助けてくれたんだよ?ほんと間一髪だったよ」
車内はまたひと時の休息を取り戻したのであった。