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本日は曇りのち魔法。時々剣。  作者: ふぁやて
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たとえそれが運命だろうと僕達は。


それは森の中だった。


耳を澄ませば木々のざわめきや鳥の声だけが身体を撫でるように聞こえる。


ーここはどこだろうー


少年は記憶を失っているようだ。

彼の容姿はあまりにも儚げで驚くほど白い、この世のものとは思えないほど美しい顔をしている。

その少年と相反するかのように横たわる巨大な黄金の大剣。彼の身体と殆ど変わらない大きさのその剣は、ギラギラと木漏れ日を受け光っている。その剣の刀身には拳くらいの穴が五つ空いており、つい先ほどまで何かがはまっていたようだ。


ー頭が痛いー


少年はむくりと上体を起こし、顔を歪めながら頭を抱えた。


『う、ここはどこだろう。森、かな。、、、、』


ー森?ー


森という言葉は知っている。単語の意味や痛いという概念も理解しているのに、、、、記憶がない。これまでの記憶が抜き取られたかのように真っ白になっている。


ーこのまま寝ていようかー


彼は目を閉じ起こした上体をまた、地面にバタンと倒れ込ませた。




ーおー


ーい!、いー


ん?遠くで声が聞こえる。小さくて聞き取れない。


ーおい!起きろ!ー


少年は目をパチリと開くと吹っ飛ばされたかのように後ろへ、その身を翻し臨戦態勢へと入った。

少年の表情は先ほどまでの穏やかな表情とは似ても似つかない。相手を睨み威嚇する狼のような顔へと変わっていた。


『な、なんだよ!、何もしてないよ!物を盗んだりもしてないし、、、、ここは父様の管理している〝グレイフォレスト〟だから呑気に寝てる馬鹿を起こそうとしただけだよ!こんなところで寝てたら殺されても文句はいえないんだからな!』


怯えたように涙目になりながら必死に訴えかける少女がそこにはいた。貴族なのか、身につけている髪飾りや腕輪は煌びやかに装飾が施されており、とても高価に見える。


『私を襲う気か?い、いいだろう!やって、、やってやるさ!腐ってもベルベット家の長女だ!こ、こんなところでくたばってたまるか!さあ!その馬鹿でかい剣を拾えよ!』


その少女はカタカタと震えながら腰に携えている短剣に手を掛け、少年に向かって怒号を放つ。


『ふふっ』

『ふはっ』

『ふははははは!』


少年はパチクリと瞬きをすると糸が切れたかのように笑い出した。


『なんだよ!何がおかしいんだよ!真剣なんだぞこっちは!』


『はははは、ふー。いや、すみません。余りにも可愛らしい戦士殿なので緊張の糸が解けてしまいました。敵意はないです。何もしませんよ。急に起こされたのでびっくりしてしまっただけです。』


少年は深々とお辞儀をしながら少女に謝罪の言葉を述べる。


『へっ?』


ポカーンとした表情で、短剣に手を掛けたまま少女は固まっている。


『っんだよ!なんだよ!それ!びっくりしただけでそんな怖い顔になるのかよ!あーもう!こっちは心臓飛び出るかと思うくらい怖かったんだからな!』


少女は流れるように喋りながら、ぺたんと地面に膝を落とす。


『クスクス、本当にすみません。自分でも驚いているのです。こんな風に自分が動くなんて。、、、、それより先ほど剣を拾えとおっしゃいましたが、この金色の大きな剣は僕の物なのですか?』


横たわる黄金の剣を指差しながら少年は問う。


『そ、そうだと思うけど。だってお前とその剣以外には誰もいなかったし。それにお前、見たところ背中に剣を納めるようなベルトみたいなのついてる。』


少女は剣を納め、溜息混じりに呟いた。


『、、、そうですか。これは僕の剣のようですね。、、、おお、見た目は大きいけどとても軽く、扱いやすそうです。』


少年はその大剣を拾い上げ、森の隙間から入る木漏れ日に照らしながら、感想を述べた。 黄金の剣が太陽の光を反射し少年の顔がキラキラと光る。


ーき、綺麗ー


 少女はその剣に、その少年に、吸い込まれそうになるような感情を抱きながら目を奪われていた。


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