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~辻田春菜(つじたはるな)~

作者: 大帝

半ば、夢のお話しです。


 気色の優れぬ異様な蜃気しんきに見舞われながら、俺の架空そらには鈍い女性おんなが性器を見せ付け佇んで居る。凶のあるじ何処どこぞの〝便り〟を俺の足元ふもとへ寄越した時には、未熟に教わる不思議の怪奇が女性おんなを連れ添い自粛をして生き、あそび心に血表ちひょうへ繋げるあやし文句ことばを気丈に幻見ゆめみて謡って在った。見慣れた田畑たはたのか細い畔から、〝堂々巡りの感覚いしき〟を連れ添う弱った女児こどもがぽそり降り立ち、俺の前方まえには常識かたちの向かない手広い陽気が散乱しながら生気を模した。思惑こころやみには金縁きんぶち眼鏡の童女が見習い、俺の理想へ駆け行く丈夫を見付けて傀儡とも成り、〝鳴る両脚あし強靭味つよみもと〟には、俺の孤独が何時いつしか擡げた女性おんなの孤独を描いて落ち着き、生きるみちから窪んだ底には童女おんながひっそり息衝く孤独の微笑わらいが植えられても在る。涼風かぜの通りは畔の方から根絶やし吹き、横顔示さず真っ直ぐ真面に俺へと佇む女性おんな姿勢すがたを辻田春菜へ着せ替えさせて、自分の精神こころは持ち上げ調子に、棚の奥へと当面置き遣る無難の合図を招集していた。ようの当りが俄かに弱まる、橙色した不思議の景色が、俺と童女こどもの律儀な間柄あいだをしっかり執り成し憂いに暮れて、白雲くもの真綿を黄色に染め行くよわつ倭人の古郷さとへと明暗ひかりを投げた。辻田春菜の異名に纏わる俺の記憶の旧巣ふるすを行けば、旧巣を取り巻く一つ一つの小さな殻から大きな殻まで、一つ束ねに剥き出されて在り、端正きれいな魅惑を人の軌跡に不意と置き遣る記憶の行為に彩りを見て、〝景色〟のあるじは俺の水面もとから充分羽ばたく女性おんなの記憶にあかりを模した。

      *

 ゆめの素通り―俺の脳裏をよぎる型にて―

      *

 辻田春菜と俺は付き合って居た。初め、大学か何処どこか分らない場所で沢山の男女が戯れて、次の遊びを考えていたが中々方向が定まらず、唯、わいわいがやがやと時の流れるのを皆で見ているようで、その群れの内では一人一人の生活が確かに在る、と言った感じであった。俺は他の女を探して居そうだったが他には見付からず、ただ辻田春菜との出会いから恋愛のストーリィがゆっくりとだが、展開されて行くのを親心を交えつつ、仕方無く見えていた様子が在る。

      *

 ゆめから生れて白いたけびがするする解け入り、俺の記憶を次第に遠退け、女性おんなあかりを女性おんな肢体からだませた儘にて旧い記憶は日々の許容うちにて更新され行き、俺と女性おんなは記憶へ宛がう小さない輪舞曲ロンドを耳にして居た。これまで経て来た自分の躰が既知であっても未知のていした旧来むかしの気色を程好く独歩あるき、嫌な自質じしつをそれでも吟味あじわうゆめの境地に対して在った。細かな記憶が各自己の破片を連れ添い、辻田春菜の居所いどこるのを寝床と知るのと、如何どうとも付かずの自由なそらにて、俺が這入れる無理の空間すきまを気丈の表情かおして探して在った。苦労に絶えない日々の暮らしは煩悩なやみの尽きない涼風かぜ許容うちにて、自分に割かれた小さな定めを小さく刻んで彼女へ投げ込み、彼女の孤独が小さな洞穴あななど俺の両眼まなこへか細く目掛けて注意を引くのに気付いた折りには、果ての見得ない孤高の立場を男女だんじょの憂いを置き遣る内にて、俺と春菜は交互に代われるときの定めに身を乗り出すまま遠くの囲いに失走はしって行った。黄泉のくにから男女に敷かれた旧い記憶が脚色いろを携え俺まで着て居り、虚空の許容うちにて拡がるえにしゆめ強靭つよさに関心する儘、自分の未完みじゅく何時いつまで経っても果てをれないよわ感覚いしきを堪能している。犬のゆめから人間ひとゆめまで、意味をかいせぬ両者のすがたは俺へとって、巧みな文句ことばあかりを明かせる水のほとりを示してさえ居た。誰かの共鳴さけびが遠くで立った。他人ひととの共鳴さけびが互いにつかり協力ちからを観るのはこれまで覗いた記憶の許容うちでも稀な描写に分けられており、無駄に排せぬ有力ちからもとには嫌った景色が散行さんこうする儘、俺の感覚いしきを自由に取り巻く無像の主観あるじが手招きして在る。俗世の底から沸々湧き出す人の憤怒に身悶えしながら俺の両眼まなこは苦労お掴めぬよわ肢体からだを紡いで行って、ひと雑声こえから奇声が際立つ暇な経過が活き活きし始め、俺の躰はようから隠れる〝正男アダム〟の容姿を薄ら纏い、男女の表情かおから仄かに匂える人間ひと臭味くさみ何処どこに向いても払拭出来ない、予定調和の神の理想いしきにふらふら辿り、俺が培う人間ひと感覚いしき俗世このよ理想ゆめから立脚し始め、先立つ覇気には何にもれない俺の脆味よわみが運転して居た。ひとの生気の蠢く壺から男性おとこ女性おんなに気色が分れる岐路のきへと脚力ちからが傾き、俺が目にしたか細いおしにはゆめ思惑こころが滔々躍付やくつき、払拭出来ない自分の定期さだめを見境無いまま器用に無視する余程の腕力ちからを身に付けて居た。母の背中で昨日に観ていた狂いの〝やみ〟には、これまでり得ぬ人間ひと悪義あくぎが激しく活き得て、止まり木の無い、連続して行き連動して生く硝子の器へ自己おのれを這入らせ、母と俺との絆の強靭つよさは、果ての観得ない邪推に気取られよわくも成った。白紙に咲き得る俺の肢体からだちから水面もとから冷風かぜていしてひゅうっと吹き抜く昔語りの文句が飛び交い、明日あす私事しごとしなにしながら机上に立ち得て憔悴して生く褥のそらには母性ぼせいが先立ち、ひと女性おんなを全て消し得る魅惑のRomaローマ精神こころげた。「明日あす」の窓からやみへと吹き行く過去の現行いまから通りが開かれ、四肢てあしの捥がれた悪の女性おんなが事情をらずにこそこそ隠れ、白紙の背に立つ、不可思おかしな遊戯を朗笑しながら気分を落ち着け、順々冷め行く活きる熱気は過去へ飛び得ぬ不感の主観あるじを追い駆けてもいる。欠伸を始めたそらに根付ける人間ひとの虚無には、俗世このよで有り得ぬ男女の愛情こころ白雲くもを突き抜け自体からだを晒され、ように照り付く古来むかしながらのせいへの儀式は音波の要らない不毛の向きにも達して在った。秩序の乱れた人間ひと体調リズムは死ぬまで続き、そらから見得ないやみ主観あるじが生還する時、初めて覗ける無数の四肢てあし万能ちからを連れ添い見固めして生く。「人は、自分の為だけに生きる事が出来るほど強靭つよい者じゃないんです」、橙色した益荒男から成る自刃の勇者に色めく表情かおにて言われた言葉は俺の胸中むねへとすんなり這入り、「人は矢張り、痛苦を味わう故に、そのようになる。独り、孤独部屋にて王国を造り切れぬのだ」と寸度すんど呟く俺の勇士は品度ひんどを介せぬ無頼の億土を経て来て連なり、見得ない物への恐苦きょうくに怯える何物かに成る個人の孤独を、遠くから観てすんなり哄笑わらえる意味の成しへと歩先ほさきめた。人の孤独は痛苦から来る永いやみへの自刃と成るなど、死への恐怖へ安堵を擡げぬ人間ひとの域にて突っ伏しても居た。

      *

 夜だった。白いマルチーズのような犬が四、五匹程居り、誰かの平家ひらやの玄関先で可愛く戯れていた。戯れている様子だったのだが、中々夫々は動かないで、玄関先に集った民衆が丁度客のように成り、その様子を見守りながら、俺もその客の内の一人と成った。俺は此処ここへ辿り着く前、大学のような場所の暗い廊下、又は暗い階段が見える所に居り、そこでメールをして居て、誰か女を探していたらしい。そこには学生が数人居たようで、その学生達は皆、各々の生活に埋没していた様子で俺の事になんか構っちゃくれずに、内の二人は、結構友人と成ってから時間も経っていたようで、固く遊ぶ約束をしながら出て行った。

      *

 くすゆめには〝生い立ち日記〟の無性むせい形成かたちが幾日過ぎても払拭され得ず、健やか成る儘、粛々なる儘、余裕あそびたない春の文句ことばに孤独を連れ添う晴嵐あらしを見付け、何処どこみやこへ辿って在っても、結局男女の関係あいだは変われぬ代物ものとの哀しく見事な朗報を聞き、り得たこころに過酷を認めぬよわ自己おのれが先進して活き、晩春あきの夜長・手長に屈服し得ない、無双の感無オルガを堪能していた。明日あす小路みちへとりゅうが羽ばたくゆめきには、大蛇おろちが見せ得る戯画の欠片かけらがそのを安め、これまでり得た無境むきょう神秘ひみつが揚々咲けずに、若い頃観た、男女の在り処を手探りながら前進して生く無様な俺さえ映して在った。〝意味〟を見付けぬ人の並びに、「明日あす」の寝床へ辿って行けない自分の戯画さえ揚々脚色付いろづき、犬の姿勢すがたに猫の姿に、果して気取れぬ幻獣けもの姿勢すがたに変態され得るゆめひみつの変質などり、言葉の尽きない俗世このよの迷いに色々尽き得ぬ煩悩なやみ初歩いろはの出方を観ながら、終ぞ還れぬよわゆめへの自分を象る安堵の兆しは、誰にも何にも気付かれないほど分厚い壁にて仕切りを設けた個人ひと空間すきまに浮き立つ代物ものだと俺に具わる虚無への遊具は金々きんきんがおにて語って在った。金色こんじきから成る背景うしろへ寄り添う生きた体裁かたちは、俺とひととの個別の具体からだを有頂に設けて払拭され得ず、漆黒くろやみへと虚無を通せる延命いのちの手綱を持ち合せており、ひとの音頭に喜び小躍おどれた俺の背中へ翼を付けて、昨日に見紛う明日あすへの砦を、人の感覚いしきに不意と投げ付け、覚悟を期さない白い経過ながれにそのを遣った。会話の利かない現代人との虚無の夕べは経過ながれの速さに圧倒され行く人間ひとの定めに感覚かんかくを置き、古いしるべに手取りあし取り、陰と陽とを二手に分けない自然の神秘ひみつに隠され始めて、俺に具わるひとへの礼儀は「明日あす」に凭れぬ細かな様子を俺へと伝え、何にもてないよわ主観あるじやみ許容うちにて独りで置いた。黄金色した司人モンク言動うごきは蝙蝠から成る二手に分れた漆黒くろを牛耳りやみに果て得ぬ獣の視野へとそのを任せて、荒れた飼育に具合を知らせぬ虚無の酒宴うたげを大事に受け取り自由に設え、死地へ赴く小路みちの上での要所に際し、忘れた形見の人の牙など獣熱けものあつさにあたためさえして、人を連れ行く人間ひと主観あるじに不意に変れず媚びを売り行く小さな感覚いしきは悪と善とも認められ得ぬ脆い定規に宛がわれている。昨日のゆめから今日のゆめまで、自分のきろくにどれだけ小さなしるべが見得ても、鵜呑みに出来ないよわ主観あるじ人間ひと胸中うちからか細く挙がり、思惑こころの見得ない旧いあそびにそらから落ち行く煩悩なやみを連れ添い、「明日あす」への歯車くるまに同乗して行く分身かわり主観あるじに挨拶していた。久方振りにて遠く離れた理想ゆめ許容うちからんやり出て来た主観あるじに従い、俺の精神こころに上手くたれた器用の欠片かけら如何どうした理想ゆめへと跳んで行くのか、一向覚えぬ境地に在れども、哀しい我が身は両親おや温身ぬくみも仄かに忘れ、分身かわり主観あるじやみへ羽ばたく小さな勇気を大事に採った。漆黒くろやみから仄かに蹴上がる碁石にも似た正しい星には、人の在り処がほとほと伝わる小さな郷里をつとつとおしえ、俺の脳裏に暫く安める人の安堵に対峙をいた。漆黒くろい光が昨日の旧巣ふるすをゆっくり忘れて固まり始め、俺の心中こころに小さく寄り付く大きな歩幅を当てに捉えて、安まる間も無く孤踏ことうに就き出す可笑しな道化を自分の好意にみとめて在った。

      *

 まるで暗いその場所から明るみへ出る用のドアが、そこに集った何人かの学生に見えるようにして在り、そこから出て行く者はまるで、〝勝者〟として在るように美しかった。その出て行った二人の者達は何か面白い歌をネットで聞こうと努めていたらしく、それでも中々それ用のサイトが見付からないでその曲の名前だけはその曲を紹介した者が知っており、その名は「聞いてられない歌・仮名。(きちんとは忘れた)」であり、とても聞きたくなる程に興味をそそられる名前であって、そこに集った俺と、俺の恐らく背後に居た二、三人と、俺から左横向こうに見えて居た二、三人は、その歌を初めに探していた二人が「明るい窓」から出て行った後で、各々でネットで検索しようとしていたようだった。その内でも俺がいち早く〝ユーチューブで探せば割とすぐ見付かるのでは?〟として探し始めればその心中の声が夢ながらにか他の彼等の心中にも伝わったようであり、〝流石…〟と言ったように彼等も少し後でユーチューブにて探し始めていたようだった。

      *

 憂いに華咲く俺の活気の横面よこづらからして、人間ひとの活気へ無駄に跳ね得る労力ちからは持たずに徘徊し始め、小躍おどる気力は人間ひと渦中うずにて目的あてが見得ないよわい絆をせいへとげた。ひとへ繋げる絆の葦などどれ程脆くて拙いものかと、俺の孤独は独り部屋にて納得して居る。何やかんやとたいらの経過に俗世の正味を引っ張り込む内、各自に課される人の定めを常識かたちへ捧げ、見る見る流行ながれる瞬間とき狭間あいだ脆味よわみを介せぬ伽藍の胴体からだを頭上に敷く儘、平らの空気もぬけへ拝した輩は延命いのちを片手に瞑想していた。輩に採られた古いタイプの瞑想の絵に、活きる事への覇気を見紛い、そらから消え行く自活が崩れた憤悶ふんもんを知り、果ての観得ない極度の結果に理系仕込みの隻腕が鳴り、初めて仕留めた自営を束ねた残骸むくろの憂慮は、人間ひとの群れへと安心して生き、未完みじゅくられた褥の安堵は自活を図れず自営を計れぬ気落ちのゆめへと落降らっこうしていた。白亜の軌跡が人間ひとられる〝壁〟を通して身軽に表れ、禿びた具体からだ白壁かべへ預けて脱稿して生く自分の私事しごとを大事としたまま俺を動かすゆめあしには小さな翼が無言に生き得る虚無のあかりを点して在った。虚無は虚無でも人間ひと感覚いしきに容易く見抜ける空気もぬけには無く、人の発声こえから丈夫に仕上がり払拭されない神秘の許容うちにて立脚して在り、俺の発言ことばも意味を成せないやみ許容うちにて人間ひとを遊び、誰の胸中むねにも説明出来ない神秘ひみつの迷路に近付いては居た。しかしそうした内でも〝誰か〟を問わない自然に生き得る〝何か〟に対して、説明出来ない俺の発言ことばがはっきり通れた確信あたりを得たのはまぼろしには無い。規則正しい世迷よまい手数かずなど、如何どうでも消えない人間ひと世界うちにて相変わらず在り、俺の心身からだ常識かたちを捨てたい哀れな鼓舞へとひたすらいきんで邁進して行く一本気に咲く気色を牛耳り、個人ひとりの在り処を誰にも報せぬよわい記憶へ縋ってもいた。ひと温身ぬくみはそうした陰から己に突き出る小さな怒りを気分に仕上げて狡猾とも成り、ようの在り処を抑えながらにやみに対する覚悟を落ち着け、俺とゆめへの非道な防御を如何どうでもせない強靭つよ表情かおへと掲げさせ行く。生きる心地を寝耳に忘れた不動の肢体からだを散見する内、人間ひとられたよわ常識かたちがそれでも大きく闊歩して居り、人間ひと界隈うちでの小さな律儀をさんに際立て無理を嫌悪し、新たな試算へ活歩かつほするのを大言壮語に無駄に並べて自身の意識を表明するが、そのじつ、噂やお金で故無く空転ころげる新たな狙いをとうに静めて、地団駄踏みつつ前進し得ずの不様を呈して「好し」としている。進歩を自棄した人間ひとの輩はまぬ時流ながれへそのを横たえ、〝古巣〟へ還れる自分の常識かたちひとへ見せずに保身に生き抜き、厚味を忘れた人の生家せいかを往来して行く。思惑こころ空間すきまに絶えず吹き抜く蒼い涼風かぜへとその身をいざない、透り過ぎ人間ひと延命いのちを何かに脚色付いろづけられ得て不思議を灯せる虚無の酒宴うたげへ代え得るものだと延命いのちの興せるゆうの弾みへ期待を募らせ、じっくり座って自我を透せるよわい嫉妬に開眼して居た。

      *

 そうしている内に、始めそのネットの内でメールが届いて、内容を見ればそれが辻田春菜から来たもののようであって、俺の心が春菜を注意し始めた頃からそこは自ら明るい教室か何か、一寸した人がたむろ出来る広場のようになり、わいわいと集まった人の内に、俺と長い付き合いの山本が居り、その山本は現実通りに或る女と付き合った上、結婚していたようだった。俺はだ山本の立場に辿り着いて居らず、山本に対して嫉妬して居たようだが、矢張り結婚出来る対象として彼女が出来ると心中に余裕が出来るのか、俺は俺で、と自分は自分に定められた人生みちを歩くように地道に自分に課せられた出来事を処理し始め、唯、春菜との関係を丈夫な物に構築しようと試み始めて居た。(何か、ストーリィ上で、大事な出来事を忘れている気がする)。

      *

 端麗きれいな顔した悪魔が微笑み、俺の心は旧友ともに対する嫉妬の嵐で自分の主観あるじやみへと引き下げ、そらを認める一つの疑惑にその身を興せる拙い努力に奮起を賭した。白い壁には俺に採られた人間ひと暗部あんぶ漆黒くろそうしてそのを束ね、「明日あす」の行方に惑い始める小さな勇気を見上げて在った。冷たい孤独が人間ひと界隈うちから程好く漏れ出し、自然の虚無からそのを乗り出す可笑しな空虚が人間ひと表情かおから発散され活き、人間の世界うちへと息衝く虚無には「明日あす」へ通せる緩い経過を現行いまと今日から抜粋出来ずに、それでも活き抜く人間ひとられた延命いのち最中さなかは立派にかしづく乙女の浮気を奇妙に牛耳り、正義を灯せぬゆめ螺旋ろくろ人間ひとの為にと大きく割いた。過去のしるべへ巧く宛がう人間ひとられる嫉妬の海馬は初夏なつの厚さをすっかり着忘れ、初春はる許容うちから晩秋あき序口くち迄、透った気配に好く好く小踊おどれる人間ひと労途ろうとが一切消えない赤身を帯び行く気色を携え、無駄に排せぬ硝子の容器は場末に遣られた俺の個体からだに散在して居た。個体から成る無駄を配せぬ俺の孤独に、人間ひとみょうからぽんと浮き生く不思議の魅惑が順繰りかえされ、大海うみを渡れる広い具体からだを雄々しく覚え、束の間相あいせる孤独の主観あるじに自分の定めを巧くかえせる器用な実力ちからを俺は強請った。文句ことばの喘ぎがそらへ返る頃、俺へあいしたひと姿勢すがたはそそくさその場を離れ始めて、金の儲けを大きく期せ得る魅惑の峡谷たにまで下って行った。合せ鏡で前進しながら彼等の言動うごきを見詰めた俺には、この先何処どこまで自分の姿勢すがた独歩あるいて行けるが一向解らぬ淵へ立たされ、彼等の姿が静かに佇む谷の辺りと自身の周囲が、それ程変れぬ無言の境地に在るものだと知り、俺にられた聡明あかるい独学まなび気楼きろう許容うちにて詠笑えいしょうして居た。無言の清閑しずか人間ひとられる多くの健気が俗世このよを離れる仕手の技にて横転しており、身体からだの痛苦を余程に嫌がるついの気色を傍観して居た。蟠りの無い、淡い感覚いしきに彼等は巻かれて、四肢てあしの上下にふらふら伸ばされ自由にられ、思想も無いのに思想を重ねるひとから成り立つ哀しい好意に、俺の心身からだは自分に割かれた淡い憂慮を垣間見る内、次第に丈夫に両腕かいなを仕上げる孤独の主観あるじへ陶酔している。投身して生く男性おとこしつには無形かたちが挙がらず、世間の柔身やわみにそのまま乗じる女性おんな柔手やわでほっそり白く、男性おとこを操り自己を高める許容の敗訴を上手く設え、上流交流・地味を合図に、本能ちからの向くまま独走して行く端正きれいな経過を時代に敷いた。俺のぐるりを滅法飛び交う女性おんなられた悲惨の主観あるじは、明日あすへと向かえる魅惑の様子を見知らぬ糧へとすんなり代え行き、固陋に浮き出た俺とひととのえにしの定めは一向交えず、現行いまを透せる自然力ちから水面みなもを排水したまま人間ひとに流れる空気もぬけ赤味あかみを脱色して活き、初めから在る神秘の噂を魚釣りでの〝浮き〟に喩える警句を引き立て、定型かたを呈せぬ人間ひと脆味よわみを訓示していた。白日はくじつから成る白い吐息の流行ながれはもう直ぐ、俺とひととの空間すきまを拡げて白と黒との交差の許容うちにて自由に闊歩あるける呼吸のリズムを忘れない儘、俺とひととの俗世このよで浴び得る閃光ひかりの麓を人の目に見る案山子の様子に落ち着けてもいた。踵を踏んでる悪魔の手先が俺の精神こころを眺め始めて、真面目に見積もる夜気よぎの定義を分散していた。所構わず空虚を貪る俺のである。つとつと旧巣ふるすを貪る常識かたちの麓は垢に錆びれて虚しさが立つ。懐手ふところでをして自分の居場所が何処どこに在るのか、夜気よぎ許容うちにて豪胆尽しに考え始めた。朝が奏でる奇妙の晴嵐あらしは俺の周囲に散在している保守の清閑しずかを粉砕し始め、自己おのれに在る無業の人像かたちをとことん片付けうつつへ引き出し、白亜の視野へと透って独歩あゆめる古来むかしの奇蹟へ追従して行く。俗世このよの男女が自分から観て何処どこに在るのか、煌びやかに立つ端正きれい延命いのち何処どこに立つのか、一向知られず生気を聞き分け、自己おのれに通える硝子ケースに具体を仕留めて蹂躙する程俗世このよ遊気ゆうき気色きしょくを毛嫌い、朝へ先立つ可笑しな文句に自分の笑顔がくっきり浮き立つ狼煙を見上げてひっくりしている。誰も彼もが俺の元からくっきり消え去りゆめの彼方へ彼等を誘う不調を訴え清閑しずかに在った。世界の麓で根強く落ち着く漆黒くろ暗夜やみよの七不思議を観て、明日あすに蔓延る無益なさんから人間ひとの孤独にぼんやり成り立つ試算の成就に邁進して行く自己おのれ余命いのち失走はしりを観て居た。清閑しずか体裁かたちで無機に佇む、商品紛いの女性おんな達から異質の奇怪を無理に通され大人しくも在り、無言に蠢く俺の精神こころ端正きれいな欠伸は、男性おとこ女性おんなむら並列ならびに不断の定めを射止めていながら、細かく敷かれたせいへの仕切りに何も言わずに沈望ちんぼうしているよわい孤独をそのに置いた。白い紙から段々遠くに担ぎ出される無敵のアクロは嗣業を得ながら、果して明日あすから如何どうした手に依り活き得ようか、不断の意図から奈落を欲する黄泉の集体シグマを連動させた。ミルク色した些細な孤独を人間ひと感覚いしき嫉妬ほのおを追い駆けし行く、無残に居残る淡いをした違和の詩人に、ほとぼり冷めない内気な様子を如何どうとも言えない未完みじゅくに追い遣り達観して居た。学者の理想ゆめからほろほろ零れる人間ひとへ縋りたいよわい好みが、ひと労徒ろうとに運好く湧き立つ七色いろあぶく常識かたちを変えられ短い延命いのちにおんぶに抱っこの白亜にえ生く矛盾をる儘、ゆめに生れた可笑しな記憶をそのまま理想ゆめへと実現して行く。人間ひとの脳裏に新たに湧き出す拙いをした固陋の学者は、拙い日々から人間ひとの興味が転々(ころころ)空転ころがる無憶むおくの仰臥に追随する儘、無形かたちの消えない不思議な感無オルガ虚夢きょむに息衝くやみの合図に、ぴしゃり、ぴしゃん、と生きる上にて当面覗ける不思議の虚構ドグマを捏造するうち居眠りし始め、俺の元から離れた男女を白亜の内部うちへと押し遣り出した。白亜の内部うちには端麗きれいに敷かれた星の数多が虚構をれずに喘いで在って、俺の古巣を離れた彼等を活きて居ながら遠くに見守る幼児こどもの素顔を描写していて、初めから在る二極にきょく旧巣ふるすを俺の具体からだへ返して来るのは、四十しじゅうの荒野に彷徨い独歩あるける不敵の輪舞曲ロンドの幕開けとも成る。ほとほと清閑しずか人間ひと空気くうき涼風かぜを隔てて通り過ぎる頃、俺の常識すがたへ身構え始めた旧い彼等の様相かおが仕上がり、言葉の上では説明し得ない空間すきまに漏れ行く生気の喚起が、のっそり、ぽっとり、俺から見え得る何へも隠れず、孤独の様相すがたで打ち乗り始めた。体裁かたちを掴めぬ〝おどろ〟の空気くうきが俺の横手にふらりと舞い出し、黄土の地面に這い生く黒蛇へびには男女を賄う姑息な実力ちからが雄々しく呼吸いきして、束の間膨れた奇蹟の古巣アジトは宙に息衝くせいの在り処を人間ひとの生気にほとほと観得ない夜気よぎ許容うちへと逆行させた。俗世このよに華咲く煩悩なやみの兆しは悪の実力ちからへ加担して行く男女の遊戯に没落し始め、人間ひと実力ちからと同調して生く白亜の夜気へと充実していた。〝意味〟の在り処を模索して行く人間ひとの厚味は俗世このよに行き付け、全ての人間むくろを俗世の垢へと共闘しながら変容させ得た。無理を通さぬ空間くうかんながらに人間ひと常識かたちは無理を通させ、男女の絆やひととの信頼きずなが如何にひ弱く脆いものかを実演しながら表し始めて、自決しながら俗世を去り生く旧い人間やから現行いま流行ながれにどれだけ居るかを、見得る常識かたちに表し始める末期まつごの仕種を俺へとせた。俺の勇気は現行いま経過ながれに追随して生きせいへの謳歌をどれ程望んで未来さきに見得たか、安い好意を自然からり、文句ことばついせぬ記憶の臭味を寡黙に仕上げて、淀んだ空気を排出し得ない虚無の在り処を散々突き止め、一にも二にも〝自分〟を崇める勇気の歩幅を漸くった。

      *

 学生達とうねりくねり、いんぐりもんぐりしている内に、俺の右背後には春菜が来て居り、春菜は現実で見ていたものよりも、更に段々奇麗に仕上がっていたようで、その可愛く奇麗に成り始めた彼女は俺の右手を取ってずっと握り締め、自分の股間近くへまでスカートの上で引き寄せ、柔ら白くて包容されたく思わせる両太腿の間に緩く挟み込んでいた。春菜の左横、詰り俺のやや右後方(右背後)に居た俺の親友が春菜に訊いた。

「○○(○○には俺の名が入る)のこと好き?」

 春菜は少し間を置いたようにして応えた。

「うん」

 笑顔が浮んだのかどうか見定まらぬあいだに俺はそう言う春菜の姿がやや堪らなく愛惜しく思えて、その頃から又やや春菜は可愛く、美しく成長したようだった。

      *

 言葉少なに俺と春菜の経過から退く幾多のこころよわ感覚いしきにそのを乗り出し、馴染ませ、現行いまから遠くへ逃げて先立つゆめ歩先ほさきを掻い摘んで、思考の葦へと絡み付かせる器用な言動うごきに傾倒して居た。何に付けても真面目を呈して経過じかんを掛け活き、感覚いしきの冴えない夜気よぎ許容うちには無性むしょうに羽ばたく丸味まるみ空転ころがり俺と彼女の二極の足元ふもとに可笑しく放れる虚無を見出し、明日あしたの活気へおもね始める愉快な根気を人間ひとへ見せ付け落着して在る。俺の身体からだが重みを忘れた浮力に伴い、二極を示唆する旧い習いに味を付けても、俺の精神こころは無聊に伴うimbalanceを内実うちに掲げて何時いつでも何処どこでも一調子に向く無頼の苦力くりきに過労をしたため、明日あす動静うごきに自分を射止める無力のにおいを嗅ぎ付け始めた。橙色した白雲くも目下あたり人間ひとの孤独が滑稽おかしく在るのをゆめ旧巣ふるすでちょいと垣間見、啄み損ねるうたの文句を旋律おとに合せて掴み始める空虚を介せる魔力をった。二つの芸には俺の向かない余所の臭味が薄ら漂い、俗世を離れて延命いのちを射止める初歩のしるべを横目に見た儘、両親おや温身ぬくみがゆっくり過ぎ得た自分の経過を、俗世このよ未完みじゅくに据え置きながら、明日あすを牛耳る孤独な気運はこびにふらふら付き添い、身分を忘れた人の生気を獣の古巣へ二度と遣らない軟い呼笛あいずを大事に聴いた。得の行方は自分から観て何処どこへ向くのか、俗世このよの気運に程好く付き添う美味をも憶え、夜気よぎ目下ふもとへほっそり集える人間ひとの孤独に証明あかりを当てた。俗世このよみやこに延々沿われて活きる気運はこびは、俺の体裁かたちを揚々気取らす常識かたちから成る私運しうんと似ている。ゆめ水面もとから疲労を呈して浮んだ脚力ちから嫉妬ほのおに宿れる柔い幻想ゆめさえしっかり牛耳り、人間ひとの孤独にぽんと湧き立つ夢幻の淡味あわみを堪能していた。やみに迫れる可笑しな態度は獣から出た人間ひと煩悩なやみに屈服せぬ儘、暫くそうして対峙する内、段々通える人間ひとと獣の本能ちからを問いつつ、淡い記憶に無造に敷かれた壮大おおきな感覚いしきにそのを揺らされ、忘れ掛け得る孤独の記憶に人間ひとの心が回帰して行く端正きれいな様子を打ち立てていた。俗世このよの熱意と対峙する際強靭味つよみを忘れた本能ちから歩幅はばから冷気が吹き抜け、俺の心身からだを充分突き得る白壁かべの固さに狼狽して行く未完みじゅくの重荷が俺へと被さり、そらを見上げて救いを見詰める古来むかしながら幻物語ゆめものがたり両掌りょうてに掬って暫く佇むふるびた延命いのちに縋っても居た。無数に蔓延る人間ひとの悪魔に心を許せる無根を呈した哀れが先立ち、人と世迷よまいが困惑して行く永い歴史を嘲笑している無体の覚悟を認識するのは、俺の周囲まわりに散々活き得るひとの愛撫の温味ぬくみであった。俺に仕上がる故意の両眼まなこが依然変らず盗聴するのは俺の理想ゆめから絆の切れ得た俗世このよの男女の雑音ノイズであって、ゆめへ先立ち二度と還れぬ俺の幻想ゆめへと立ち得た俺には、それまで活き得た過去の男女が一切活き得ず、男女が活き得た空気もぬけ残骸むくろやみへ消え去り、自然に生れる男性おとこ女性おんな温身ぬくみ主観あるじはぴたりと鳴り止み集わなかった。稀有の光明ひかりに溺愛するほど常識かたちを投げ打つ、孤狼ころうの躰は俺へと身代わり、母の背中で夜毎に観て来た孤独の褥は母体を想わせ、俗世の騒音ノイズに狂い始めた俺の感覚いしきはバランスを問い、人間ひとが崇めて古来止まない余命いのちを削れる競争へと唯、愚行を呈して重ねられく無駄の利益を粉砕して居た。

      *

 春菜は俺の親友に、親友の妻の事に就いて、自分にされた同様の質問を投げ掛けたようだ。すると親友は、「…だから結婚してるやん」と結婚し終えた者ならあっさり言える言葉を以てすっと応えていた。ここで俺には、未だその立場へまで辿り着いて居ない弱さのようなものが立ち昇り、少々焦りのような気持ちが芽生え始めて、「俺には未だ無理なのかな…」等と春菜をそっち退けにしたような淋しさを緩く味わい始めていた。まるで江戸の夜のように、人が集まる必要以上の場所は真っ暗闇が顔を覗かせて居て、その内で俺と春菜とは一緒に居たり、逸れたりしていた。その民衆の内で、親友以外にはっきりと知った顔には出会わなかった。そこで、先程の犬が数匹集まった平家の民家へ辿り着く事になる。それまで俺と春菜は、幾つかの恋愛に纏わるストーリィを展開させ、互いを確かめ合うというよりは、互いの存在を掴もうと弱気ながらに自分の、否、自分達の幸せを育もうと躍起に成っていた様子であり、しかし周りを囲んで自分達と自分達の周囲に集った者達を見守る闇の存在が壁と成って立ちはだかるようで、俺達は一個の共同体とも成れたかのようにして、その暗闇に淡い不安を覚えて居たようである。白く、時折り玄関奥から玄関先まで、又、玄関先から玄関奥まで走り廻る犬、仔犬の様子を彼等と共に俺は見ながら、自分に着信かメールが来ているのをポケット内で感じて知り、暫くその人の多さで玄関から出れずに居た俺は着信なのかメールなのかを定める事が出来ず儘にて周りに集う群衆と同様にして犬の可愛らしさを楽しんで居り、漸く玄関から出る事が出来た俺は辺りの暗闇、明かりの点いた平屋ひらやの玄関から上方へ行くほど黒色こくしょくが映えて暗闇を象って行く夜空を覚えながら、もう結婚してもいい、否、あんなに美しく奇麗に、可愛らしく成長した春菜と俺は結婚したい、と強く思い込み始めていた俺は、先程の着信がメールであった事に気付き、そのメールの相手が別の可愛い女である事を静かに強く望んで居た。春菜に愛露エロスを感じて居た。


彼女のぬくみが、ぬるく伝わる。。

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