~辻田春菜(つじたはるな)~
半ば、夢のお話しです。
気色の優れぬ異様な蜃気に見舞われながら、俺の架空には鈍い女性が性器を見せ付け佇んで居る。凶の主が何処ぞの〝便り〟を俺の足元へ寄越した時には、未熟に教わる不思議の怪奇が女性を連れ添い自粛をして生き、弄び心に血表へ繋げるあやし文句を気丈に幻見て謡って在った。見慣れた田畑のか細い畔から、〝堂々巡りの感覚〟を連れ添う弱った女児がぽそり降り立ち、俺の前方には常識の向かない手広い陽気が散乱しながら生気を模した。思惑の暗には金縁眼鏡の童女が見習い、俺の理想へ駆け行く丈夫を見付けて傀儡とも成り、〝鳴る両脚の強靭味の源〟には、俺の孤独が何時しか擡げた女性の孤独を描いて落ち着き、生きる理から窪んだ底には童女の間の掌がひっそり息衝く孤独の微笑が植えられても在る。涼風の通りは畔の方から根絶やし吹き、横顔示さず真っ直ぐ真面に俺へと佇む女性の姿勢を辻田春菜へ着せ替えさせて、自分の精神は持ち上げ調子に、棚の奥へと当面置き遣る無難の合図を招集していた。陽の当りが俄かに弱まる、橙色した不思議の景色が、俺と童女の律儀な間柄をしっかり執り成し憂いに暮れて、白雲の真綿を黄色に染め行く脆い和を保つ倭人の古郷へと明暗を投げた。辻田春菜の異名に纏わる俺の記憶の旧巣を行けば、旧巣を取り巻く一つ一つの小さな殻から大きな殻まで、一つ束ねに剥き出されて在り、端正な魅惑を人の軌跡に不意と置き遣る記憶の行為に彩りを見て、〝景色〟の主は俺の水面から充分羽ばたく女性の記憶に熱を模した。
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幻の素通り―俺の脳裏を過る型にて―
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辻田春菜と俺は付き合って居た。初め、大学か何処か分らない場所で沢山の男女が戯れて、次の遊びを考えていたが中々方向が定まらず、唯、わいわいがやがやと時の流れるのを皆で見ている様で、その群れの内では一人一人の生活が確かに在る、と言った感じであった。俺は他の女を探して居そうだったが他には見付からず、ただ辻田春菜との出会いから恋愛のストーリィがゆっくりとだが、展開されて行くのを親心を交えつつ、仕方無く見えていた様子が在る。
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幻から生れて白い叫びがするする解け入り、俺の記憶を次第に遠退け、女性の灯りを女性の肢体へ染ませた儘にて旧い記憶は日々の許容にて更新され行き、俺と女性は記憶へ宛がう小さない輪舞曲を耳にして居た。これまで経て来た自分の躰が既知であっても未知の体した旧来の気色を程好く独歩き、嫌な自質をそれでも吟味わう幻の境地に対して在った。細かな記憶が各自己の破片を連れ添い、辻田春菜の居所を識るのを寝床と知るのと、如何とも付かずの自由な宙にて、俺が這入れる無理の空間を気丈の表情して探して在った。苦労に絶えない日々の暮らしは煩悩の尽きない涼風の許容にて、自分に割かれた小さな定めを小さく刻んで彼女へ投げ込み、彼女の孤独が小さな洞穴など俺の両眼へか細く目掛けて注意を引くのに気付いた折りには、果ての見得ない孤高の立場を男女の憂いを置き遣る内にて、俺と春菜は交互に代われるときの定めに身を乗り出すまま遠くの囲いに失走って行った。黄泉の圀から男女に敷かれた旧い記憶が脚色を携え俺まで着て居り、虚空の許容にて拡がる縁は幻の強靭さに関心する儘、自分の未完が何時まで経っても果てを識れない脆い感覚を堪能している。犬の幻から人間の幻まで、意味を解せぬ両者の像は俺へと入って、巧みな文句に灯りを明かせる水の畔を示してさえ居た。誰かの共鳴が遠くで立った。他人との共鳴が互いに打つかり協力を観るのはこれまで覗いた記憶の許容でも稀な描写に分けられており、無駄に排せぬ有力の基には嫌った景色が散行する儘、俺の感覚を自由に取り巻く無像の主観が手招きして在る。俗世の底から沸々湧き出す人の憤怒に身悶えしながら俺の両眼は苦労お掴めぬ脆い肢体を紡いで行って、他の雑声から奇声が際立つ暇な経過が活き活きし始め、俺の躰は陽から隠れる〝正男〟の容姿を薄ら纏い、男女の表情から仄かに匂える人間の臭味を何処に向いても払拭出来ない、予定調和の神の理想にふらふら辿り、俺が培う人間の感覚は俗世の理想から立脚し始め、先立つ覇気には何にも象れない俺の脆味が運転して居た。他の生気の蠢く壺から男性と女性に気色が分れる岐路の果きへと脚力が傾き、俺が目にしたか細い唖には幻の思惑が滔々躍付き、払拭出来ない自分の定期を見境無いまま器用に無視する余程の腕力を身に付けて居た。母の背中で昨日に観ていた狂いの〝暗〟には、これまで識り得ぬ人間の悪義が激しく活き得て、止まり木の無い、連続して行き連動して生く硝子の器へ自己を這入らせ、母と俺との絆の強靭さは、果ての観得ない邪推に気取られ脆くも成った。白紙に咲き得る俺の肢体の活の水面から冷風の態してひゅうっと吹き抜く昔語りの文句が飛び交い、明日の私事を宜しなにしながら机上に立ち得て憔悴して生く褥の宙には母性が先立ち、他の女性を全て消し得る魅惑のRomaが精神を棄げた。「明日」の窓から暗へと吹き行く過去の現行から通りが開かれ、四肢の捥がれた悪の女性が事情を識らずにこそこそ隠れ、白紙の背に立つ、不可思な遊戯を朗笑しながら気分を落ち着け、順々冷め行く活きる熱気は過去へ飛び得ぬ不感の主観を追い駆けてもいる。欠伸を始めた宙に根付ける人間の虚無には、俗世で有り得ぬ男女の愛情が白雲を突き抜け自体を晒され、陽に照り付く古来ながらの生への儀式は音波の要らない不毛の向きにも達して在った。秩序の乱れた人間の体調は死ぬまで続き、宙から見得ない暗の主観が生還する時、初めて覗ける無数の四肢が万能を連れ添い見固めして生く。「人は、自分の為だけに生きる事が出来るほど強靭い者じゃないんです」、橙色した益荒男から成る自刃の勇者に色めく表情にて言われた言葉は俺の胸中へとすんなり這入り、「人は矢張り、痛苦を味わう故に、そのようになる。独り、孤独部屋にて王国を造り切れぬのだ」と寸度呟く俺の勇士は品度を介せぬ無頼の億土を経て来て連なり、見得ない物への恐苦に怯える何物かに成る個人の孤独を、遠くから観てすんなり哄笑える意味の成しへと歩先を留めた。人の孤独は痛苦から来る永い暗への自刃と成るなど、死への恐怖へ安堵を擡げぬ人間の域にて突っ伏しても居た。
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夜だった。白いマルチーズのような犬が四、五匹程居り、誰かの平家の玄関先で可愛く戯れていた。戯れている様子だったのだが、中々夫々は動かないで、玄関先に集った民衆が丁度客のように成り、その様子を見守りながら、俺もその客の内の一人と成った。俺は此処へ辿り着く前、大学のような場所の暗い廊下、又は暗い階段が見える所に居り、そこでメールをして居て、誰か女を探していたらしい。そこには学生が数人居たようで、その学生達は皆、各々の生活に埋没していた様子で俺の事になんか構っちゃくれずに、内の二人は、結構友人と成ってから時間も経っていたようで、固く遊ぶ約束をしながら出て行った。
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燻む幻には〝生い立ち日記〟の無性の形成が幾日過ぎても払拭され得ず、健やか成る儘、粛々なる儘、余裕を保たない春の文句に孤独を連れ添う晴嵐を見付け、何処の宮へ辿って在っても、結局男女の関係は変われぬ代物との哀しく見事な朗報を聞き、識り得た情に過酷を認めぬ脆い自己が先進して活き、晩春の夜長・手長に屈服し得ない、無双の感無を堪能していた。明日の小路へと龍が羽ばたく幻の果きには、大蛇が見せ得る戯画の欠片がその実を安め、これまで識り得た無境の神秘が揚々咲けずに、若い頃観た、男女の在り処を手探りながら前進して生く無様な俺さえ映して在った。〝意味〟を見付けぬ人の並びに、「明日」の寝床へ辿って行けない自分の戯画さえ揚々脚色付き、犬の姿勢に猫の姿に、果して気取れぬ幻獣の姿勢に変態され得る幻の樞の変質など識り、言葉の尽きない俗世の迷いに色々尽き得ぬ煩悩の初歩の出方を観ながら、終ぞ還れぬ脆い幻への自分を象る安堵の兆しは、誰にも何にも気付かれないほど分厚い壁にて仕切りを設けた個人の空間に浮き立つ代物だと俺に具わる虚無への遊具は金々顔にて語って在った。金色から成る背景へ寄り添う生きた体裁は、俺と他との個別の具体を有頂に設けて払拭され得ず、漆黒い暗へと虚無を通せる延命の手綱を持ち合せており、他の音頭に喜び小躍れた俺の背中へ翼を付けて、昨日に見紛う明日への砦を、人の感覚に不意と投げ付け、覚悟を期さない白い経過にその実を遣った。会話の利かない現代人との虚無の夕べは経過の速さに圧倒され行く人間の定めに感覚を置き、古い標に手取り脚取り、陰と陽とを二手に分けない自然の神秘に隠され始めて、俺に具わる他への礼儀は「明日」に凭れぬ細かな様子を俺へと伝え、何にも保てない脆い主観を暗の許容にて独りで置いた。黄金色した司人の言動は蝙蝠から成る二手に分れた漆黒を牛耳り暗に果て得ぬ獣の視野へとその実を任せて、荒れた飼育に具合を知らせぬ虚無の酒宴を大事に受け取り自由に設え、死地へ赴く小路の上での要所に際し、忘れた形見の人の牙など獣熱さに温めさえして、人を連れ行く人間の主観に不意に変れず媚びを売り行く小さな感覚は悪と善とも認められ得ぬ脆い定規に宛がわれている。昨日の幻から今日の幻まで、自分の歴にどれだけ小さな標が見得ても、鵜呑みに出来ない脆い主観が人間の胸中からか細く挙がり、思惑の見得ない旧い弄びに宙から落ち行く煩悩を連れ添い、「明日」への歯車に同乗して行く分身の主観に挨拶していた。久方振りにて遠く離れた理想の許容から仄んやり出て来た主観に従い、俺の精神に上手く保たれた器用の欠片は如何した理想へと跳んで行くのか、一向覚えぬ境地に在れども、哀しい我が身は両親の温身も仄かに忘れ、分身の主観が暗へ羽ばたく小さな勇気を大事に採った。漆黒い暗から仄かに蹴上がる碁石にも似た正しい星には、人の在り処がほとほと伝わる小さな郷里をつとつと伝え、俺の脳裏に暫く安める人の安堵に対峙を抱いた。漆黒い光が昨日の旧巣をゆっくり忘れて固まり始め、俺の心中に小さく寄り付く大きな歩幅を当てに捉えて、安まる間も無く孤踏に就き出す可笑しな道化を自分の好意に認めて在った。
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まるで暗いその場所から明るみへ出る用のドアが、そこに集った何人かの学生に見えるようにして在り、そこから出て行く者はまるで、〝勝者〟として在る様に美しかった。その出て行った二人の者達は何か面白い歌をネットで聞こうと努めていたらしく、それでも中々それ用のサイトが見付からないでその曲の名前だけはその曲を紹介した者が知っており、その名は「聞いてられない歌・仮名。(きちんとは忘れた)」であり、とても聞きたくなる程に興味をそそられる名前であって、そこに集った俺と、俺の恐らく背後に居た二、三人と、俺から左横向こうに見えて居た二、三人は、その歌を初めに探していた二人が「明るい窓」から出て行った後で、各々でネットで検索しようとしていたようだった。その内でも俺がいち早く〝ユーチューブで探せば割とすぐ見付かるのでは?〟として探し始めればその心中の声が夢ながらにか他の彼等の心中にも伝わったようであり、〝流石…〟と言ったように彼等も少し後でユーチューブにて探し始めていたようだった。
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憂いに華咲く俺の活気の横面からして、人間の活気へ無駄に跳ね得る労力は持たずに徘徊し始め、小躍る気力は人間の渦中にて目的が見得ない脆い絆を生へと棄げた。他へ繋げる絆の葦などどれ程脆くて拙いものかと、俺の孤独は独り部屋にて納得して居る。何やかんやと平らの経過に俗世の正味を引っ張り込む内、各自に課される人の定めを常識へ捧げ、見る見る流行れる瞬間の狭間で脆味を介せぬ伽藍の胴体を頭上に敷く儘、平らの空気へ拝した輩は延命を片手に瞑想していた。輩に採られた古い型の瞑想の絵に、活きる事への覇気を見紛い、宙から消え行く自活が崩れた憤悶を知り、果ての観得ない極度の結果に理系仕込みの隻腕が鳴り、初めて仕留めた自営を束ねた残骸の憂慮は、人間の群れへと安心して生き、未完に彩られた褥の安堵は自活を図れず自営を計れぬ気落ちの幻へと落降していた。白亜の軌跡が人間に象られる〝壁〟を通して身軽に表れ、禿びた具体を白壁へ預けて脱稿して生く自分の私事を大事としたまま俺を動かす幻の脚には小さな翼が無言に生き得る虚無の灯を点して在った。虚無は虚無でも人間の感覚に容易く見抜ける空気には無く、人の発声から丈夫に仕上がり払拭されない神秘の許容にて立脚して在り、俺の発言も意味を成せない暗の許容にて人間を遊び、誰の胸中にも説明出来ない神秘の迷路に近付いては居た。しかしそうした内でも〝誰か〟を問わない自然に生き得る〝何か〟に対して、説明出来ない俺の発言がはっきり通れた確信を得たのは幻には無い。規則正しい世迷の手数など、如何でも消えない人間の世界にて相変わらず在り、俺の心身は常識を捨てたい哀れな鼓舞へとひたすら息んで邁進して行く一本気に咲く気色を牛耳り、個人の在り処を誰にも報せぬ脆い記憶へ縋ってもいた。他の温身はそうした陰から己に突き出る小さな怒りを気分に仕上げて狡猾とも成り、陽の在り処を抑えながらに暗に対する覚悟を落ち着け、俺と幻への非道な防御を如何でも失せない強靭い表情へと掲げさせ行く。生きる心地を寝耳に忘れた不動の肢体を散見する内、人間に彩られた脆い常識がそれでも大きく闊歩して居り、人間の界隈での小さな律儀を算に際立て無理を嫌悪し、新たな試算へ活歩するのを大言壮語に無駄に並べて自身の意識を表明するが、その実、噂やお金で故無く空転げる新たな狙いを当に静めて、地団駄踏みつつ前進し得ずの不様を呈して「好し」としている。進歩を自棄した人間の輩は止まぬ時流へその実を横たえ、〝古巣〟へ還れる自分の常識は他へ見せずに保身に生き抜き、厚味を忘れた人の生家を往来して行く。思惑の空間に絶えず吹き抜く蒼い涼風へとその身を誘い、透り過ぎ生く人間の延命を何かに脚色付けられ得て不思議を灯せる虚無の酒宴へ代え得るものだと延命の興せる有の弾みへ期待を募らせ、じっくり座って自我を透せる脆い嫉妬に開眼して居た。
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そうしている内に、始めそのネットの内でメールが届いて、内容を見ればそれが辻田春菜から来たもののようであって、俺の心が春菜を注意し始めた頃からそこは自ら明るい教室か何か、一寸した人が屯ろ出来る広場のようになり、わいわいと集まった人の内に、俺と長い付き合いの山本が居り、その山本は現実通りに或る女と付き合った上、結婚していたようだった。俺は未だ山本の立場に辿り着いて居らず、山本に対して嫉妬して居たようだが、矢張り結婚出来る対象として彼女が出来ると心中に余裕が出来るのか、俺は俺で、と自分は自分に定められた人生を歩くように地道に自分に課せられた出来事を処理し始め、唯、春菜との関係を丈夫な物に構築しようと試み始めて居た。(何か、ストーリィ上で、大事な出来事を忘れている気がする)。
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端麗な顔した悪魔が微笑み、俺の心は旧友に対する嫉妬の嵐で自分の主観を暗へと引き下げ、宙を認める一つの疑惑にその身を興せる拙い努力に奮起を賭した。白い壁には俺に採られた人間の暗部が漆黒を総してその実を束ね、「明日」の行方に惑い始める小さな勇気を見上げて在った。冷たい孤独が人間の界隈から程好く漏れ出し、自然の虚無からその実を乗り出す可笑しな空虚が人間の表情から発散され活き、人間の世界へと息衝く虚無には「明日」へ通せる緩い経過を現行と今日から抜粋出来ずに、それでも活き抜く人間に彩られた延命の最中は立派に傾く乙女の浮気を奇妙に牛耳り、正義を灯せぬ幻の螺旋を人間の為にと大きく割いた。過去の標へ巧く宛がう人間に彩られる嫉妬の海馬は初夏の厚さをすっかり着忘れ、初春の許容から晩秋の序口迄、透った気配に好く好く小踊れる人間の労途が一切消えない赤身を帯び行く気色を携え、無駄に排せぬ硝子の容器は場末に遣られた俺の個体に散在して居た。個体から成る無駄を配せぬ俺の孤独に、人間の妙からぽんと浮き生く不思議の魅惑が順繰り覆され、大海を渡れる広い具体を雄々しく覚え、束の間相せる孤独の主観に自分の定めを巧く覆せる器用な実力を俺は強請った。文句の喘ぎが宙へ返る頃、俺へ相した他の姿勢はそそくさその場を離れ始めて、金の儲けを大きく期せ得る魅惑の峡谷まで下って行った。合せ鏡で前進しながら彼等の言動を見詰めた俺には、この先何処まで自分の姿勢が独歩いて行けるが一向解らぬ淵へ立たされ、彼等の姿が静かに佇む谷の辺りと自身の周囲が、それ程変れぬ無言の境地に在るものだと知り、俺に彩られた聡明るい独学は気楼の許容にて詠笑して居た。無言の清閑な人間へ彩られる多くの健気が俗世を離れる仕手の技にて横転しており、身体の痛苦を余程に嫌がる対の気色を傍観して居た。蟠りの無い、淡い感覚に彼等は巻かれて、四肢の上下にふらふら伸ばされ自由に操られ、思想も無いのに思想を重ねる他から成り立つ哀しい好意に、俺の心身は自分に割かれた淡い憂慮を垣間見る内、次第に丈夫に両腕を仕上げる孤独の主観へ陶酔している。投身して生く男性の質には無形が挙がらず、世間の柔身にそのまま乗じる女性の柔手は細り白く、男性を操り自己を高める許容の敗訴を上手く設え、上流交流・地味を合図に、本能の向くまま独走して行く端正な経過を時代に敷いた。俺のぐるりを滅法飛び交う女性に彩られた悲惨の主観は、明日へと向かえる魅惑の様子を見知らぬ糧へとすんなり代え行き、固陋に浮き出た俺と他との縁の定めは一向交えず、現行を透せる自然力の水面を排水したまま人間に流れる空気の赤味を脱色して活き、初めから在る神秘の噂を魚釣りでの〝浮き〟に喩える警句を引き立て、定型を呈せぬ人間の脆味を訓示していた。白日から成る白い吐息の流行はもう直ぐ、俺と他との空間を拡げて白と黒との交差の許容にて自由に闊歩ける呼吸のリズムを忘れない儘、俺と他との俗世で浴び得る閃光の麓を人の目に見る案山子の様子に落ち着けてもいた。踵を踏んでる悪魔の手先が俺の精神を眺め始めて、真面目に見積もる夜気の定義を分散していた。所構わず空虚を貪る俺の画である。つとつと旧巣を貪る常識の麓は垢に錆びれて虚しさが立つ。懐手をして自分の居場所が何処に在るのか、夜気の許容にて豪胆尽しに考え始めた。朝が奏でる奇妙の晴嵐は俺の周囲に散在している保守の清閑を粉砕し始め、自己の掌に在る無業の人像をとことん片付け現へ引き出し、白亜の視野へと透って独歩める古来の奇蹟へ追従して行く。俗世の男女が自分から観て何処に在るのか、煌びやかに立つ端正な延命が何処に立つのか、一向知られず生気を聞き分け、自己に通える硝子ケースに具体を仕留めて蹂躙する程俗世の遊気は気色を毛嫌い、朝へ先立つ可笑しな文句に自分の笑顔がくっきり浮き立つ狼煙を見上げてひっくりしている。誰も彼もが俺の元からくっきり消え去り幻の彼方へ彼等を誘う不調を訴え清閑に在った。世界の麓で根強く落ち着く漆黒い暗夜の七不思議を観て、明日に蔓延る無益な算から人間の孤独にぼんやり成り立つ試算の成就に邁進して行く自己の余命の失走りを観て居た。清閑な体裁で無機に佇む、商品紛いの女性達から異質の奇怪を無理に通され大人しくも在り、無言に蠢く俺の精神の端正な欠伸は、男性と女性の斑の並列に不断の定めを射止めていながら、細かく敷かれた生への仕切りに何も言わずに沈望している脆い孤独をその実に置いた。白い紙から段々遠くに担ぎ出される無敵のアクロは嗣業を得ながら、果して明日から如何した手に依り活き得ようか、不断の意図から奈落を欲する黄泉の集体を連動させた。ミルク色した些細な孤独を人間の感覚に嫉妬を追い駆け燻し行く、無残に居残る淡い瞳をした違和の詩人に、ほとぼり冷めない内気な様子を如何とも言えない未完に追い遣り達観して居た。学者の理想からほろほろ零れる人間へ縋りたい脆い好みが、他の労徒に運好く湧き立つ七色の泡に常識を変えられ短い延命におんぶに抱っこの白亜に失え生く矛盾を識る儘、幻に生れた可笑しな記憶をそのまま理想へと実現して行く。人間の脳裏に新たに湧き出す拙い眼をした固陋の学者は、拙い日々から人間の興味が転々(ころころ)空転がる無憶の仰臥に追随する儘、無形の消えない不思議な感無の虚夢に息衝く暗の合図に、ぴしゃり、ぴしゃん、と生きる上にて当面覗ける不思議の虚構を捏造するうち居眠りし始め、俺の元から離れた男女を白亜の内部へと押し遣り出した。白亜の内部には端麗に敷かれた星の数多が虚構を識れずに喘いで在って、俺の古巣を離れた彼等を活きて居ながら遠くに見守る幼児の素顔を描写していて、初めから在る二極の旧巣を俺の具体へ返して来るのは、四十の荒野に彷徨い独歩ける不敵の輪舞曲の幕開けとも成る。ほとほと清閑に人間の空気が涼風を隔てて通り過ぎる頃、俺の常識へ身構え始めた旧い彼等の様相が仕上がり、言葉の上では説明し得ない空間に漏れ行く生気の喚起が、のっそり、ぽっとり、俺から見え得る何へも隠れず、孤独の様相で打ち乗り始めた。体裁を掴めぬ〝おどろ〟の空気が俺の横手にふらりと舞い出し、黄土の地面に這い生く黒蛇には男女を賄う姑息な実力が雄々しく呼吸して、束の間膨れた奇蹟の古巣は宙に息衝く生の在り処を人間の生気にほとほと観得ない夜気の許容へと逆行させた。俗世に華咲く煩悩の兆しは悪の実力へ加担して行く男女の遊戯に没落し始め、人間の実力と同調して生く白亜の夜気へと充実していた。〝意味〟の在り処を模索して行く人間の厚味は俗世に行き付け、全ての人間を俗世の垢へと共闘しながら変容させ得た。無理を通さぬ空間ながらに人間の常識は無理を通させ、男女の絆や他との信頼が如何にひ弱く脆いものかを実演しながら表し始めて、自決しながら俗世を去り生く旧い人間が現行の流行にどれだけ居るかを、見得る常識に表し始める末期の仕種を俺へと観せた。俺の勇気は現行の経過に追随して生き生への謳歌をどれ程望んで未来に見得たか、安い好意を自然から識り、文句に終せぬ記憶の臭味を寡黙に仕上げて、淀んだ空気を排出し得ない虚無の在り処を散々突き止め、一にも二にも〝自分〟を崇める勇気の歩幅を漸く識った。
*
学生達と畝りくねり、いんぐりもんぐりしている内に、俺の右背後には春菜が来て居り、春菜は現実で見ていたものよりも、更に段々奇麗に仕上がっていた様で、その可愛く奇麗に成り始めた彼女は俺の右手を取ってずっと握り締め、自分の股間近くへまでスカートの上で引き寄せ、柔ら白くて包容されたく思わせる両太腿の間に緩く挟み込んでいた。春菜の左横、詰り俺のやや右後方(右背後)に居た俺の親友が春菜に訊いた。
「○○(○○には俺の名が入る)のこと好き?」
春菜は少し間を置いたようにして応えた。
「うん」
笑顔が浮んだのかどうか見定まらぬ間に俺はそう言う春菜の姿がやや堪らなく愛惜しく思えて、その頃から又やや春菜は可愛く、美しく成長した様だった。
*
言葉少なに俺と春菜の経過から退く幾多の情は脆い感覚にその実を乗り出し、馴染ませ、現行から遠くへ逃げて先立つ幻の歩先を掻い摘んで、思考の葦へと絡み付かせる器用な言動に傾倒して居た。何に付けても真面目を呈して経過を掛け活き、感覚の冴えない夜気の許容には無性に羽ばたく丸味が空転がり俺と彼女の二極の足元に可笑しく放れる虚無を見出し、明日の活気へ阿ね始める愉快な根気を人間へ見せ付け落着して在る。俺の身体が重みを忘れた浮力に伴い、二極を示唆する旧い習いに味を付けても、俺の精神は無聊に伴うimbalanceを内実に掲げて何時でも何処でも一調子に向く無頼の苦力に過労を認め、明日の動静に自分を射止める無力の臭いを嗅ぎ付け始めた。橙色した白雲の目下で人間の孤独が滑稽く在るのを幻の旧巣でちょいと垣間見、啄み損ねる詩の文句を旋律に合せて掴み始める空虚を介せる魔力を識った。二つの芸には俺の向かない余所の臭味が薄ら漂い、俗世を離れて延命を射止める初歩の標を横目に見た儘、両親の温身がゆっくり過ぎ得た自分の経過を、俗世の未完に据え置きながら、明日を牛耳る孤独な気運にふらふら付き添い、身分を忘れた人の生気を獣の古巣へ二度と遣らない軟い呼笛を大事に聴いた。得の行方は自分から観て何処へ向くのか、俗世の気運に程好く付き添う美味をも憶え、夜気の目下へほっそり集える人間の孤独に証明を当てた。俗世の宮に延々沿われて活きる気運は、俺の体裁を揚々気取らす常識から成る私運と似ている。幻の水面から疲労を呈して浮んだ脚力は嫉妬に宿れる柔い幻想さえしっかり牛耳り、人間の孤独にぽんと湧き立つ夢幻の淡味を堪能していた。暗に迫れる可笑しな態度は獣から出た人間の煩悩に屈服せぬ儘、暫くそうして対峙する内、段々通える人間と獣の本能を問いつつ、淡い記憶に無造に敷かれた壮大きな感覚にその実を揺らされ、忘れ掛け得る孤独の記憶に人間の心が回帰して行く端正な様子を打ち立てていた。俗世の熱意と対峙する際強靭味を忘れた本能の歩幅から冷気が吹き抜け、俺の心身を充分突き得る白壁の固さに狼狽して行く未完の重荷が俺へと被さり、宙を見上げて救いを見詰める古来の幻物語を両掌に掬って暫く佇む旧びた延命に縋っても居た。無数に蔓延る人間の悪魔に心を許せる無根を呈した哀れが先立ち、人と世迷が困惑して行く永い歴史を嘲笑している無体の覚悟を認識するのは、俺の周囲に散々活き得る他の愛撫の温味であった。俺に仕上がる故意の両眼が依然変らず盗聴するのは俺の理想から絆の切れ得た俗世の男女の雑音であって、幻へ先立ち二度と還れぬ俺の幻想へと立ち得た俺には、それまで活き得た過去の男女が一切活き得ず、男女が活き得た空気の残骸は暗へ消え去り、自然に生れる男性と女性の温身の主観はぴたりと鳴り止み集わなかった。稀有の光明に溺愛するほど常識を投げ打つ、孤狼の躰は俺へと身代わり、母の背中で夜毎に観て来た孤独の褥は母体を想わせ、俗世の騒音に狂い始めた俺の感覚はバランスを問い、人間が崇めて古来止まない余命を削れる競争へと唯、愚行を呈して重ねられ生く無駄の利益を粉砕して居た。
*
春菜は俺の親友に、親友の妻の事に就いて、自分にされた同様の質問を投げ掛けたようだ。すると親友は、「…だから結婚してるやん」と結婚し終えた者ならあっさり言える言葉を以てすっと応えていた。ここで俺には、未だその立場へまで辿り着いて居ない弱さの様なものが立ち昇り、少々焦りのような気持ちが芽生え始めて、「俺には未だ無理なのかな…」等と春菜をそっち退けにした様な淋しさを緩く味わい始めていた。まるで江戸の夜のように、人が集まる必要以上の場所は真っ暗闇が顔を覗かせて居て、その内で俺と春菜とは一緒に居たり、逸れたりしていた。その民衆の内で、親友以外にはっきりと知った顔には出会わなかった。そこで、先程の犬が数匹集まった平家の民家へ辿り着く事になる。それまで俺と春菜は、幾つかの恋愛に纏わるストーリィを展開させ、互いを確かめ合うというよりは、互いの存在を掴もうと弱気ながらに自分の、否、自分達の幸せを育もうと躍起に成っていた様子であり、しかし周りを囲んで自分達と自分達の周囲に集った者達を見守る闇の存在が壁と成って立ちはだかる様で、俺達は一個の共同体とも成れたかの様にして、その暗闇に淡い不安を覚えて居た様である。白く、時折り玄関奥から玄関先まで、又、玄関先から玄関奥まで走り廻る犬、仔犬の様子を彼等と共に俺は見ながら、自分に着信かメールが来ているのをポケット内で感じて知り、暫くその人の多さで玄関から出れずに居た俺は着信なのかメールなのかを定める事が出来ず儘にて周りに集う群衆と同様にして犬の可愛らしさを楽しんで居り、漸く玄関から出る事が出来た俺は辺りの暗闇、明かりの点いた平屋の玄関から上方へ行くほど黒色が映えて暗闇を象って行く夜空を覚えながら、もう結婚してもいい、否、あんなに美しく奇麗に、可愛らしく成長した春菜と俺は結婚したい、と強く思い込み始めていた俺は、先程の着信がメールであった事に気付き、そのメールの相手が別の可愛い女である事を静かに強く望んで居た。春菜に愛露を感じて居た。
彼女のぬくみが、ぬるく伝わる。。