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本編 対面

ブックマーク11件

総合評価30pt

ありがとうございます!

優しく体を揺すられ浅くなっていた眠りから覚めると、アルノルトが背を屈め顔を近づけていた。

「んー?アル?」

「もうそろそろ時間だが、首席できそうか?」

起き上がるのを背に手を添えて手伝い、カーディガンを掛けると額に手を当てる。

「うん、身体らだいぶ軽いよ」

「熱もないようだし、首席できると伝えてこよう」

出口に向かったアルノルトを見送りナイトテーブルに置かれていた薬瓶に手を伸ばし蓋を開け飲み干し、共に置いてあったマスカットで口直しをする。

少しして部屋に姿を現したアルノルトはサッとナイトテーブルに目をやり微笑んだ。

「言わなくても飲んだんだな」

「ここに置いてあるってことは飲めってことでしょ?」

会話をしながらアルノルトは衣装部屋に姿を消す。ベットの淵に腰掛けるように掛布団から足を投げ出し、ボタンを外しかけた時、衣装を手にした彼がやって来た。

「あそこに置いてあればわかるよ。薬師と患者としての付き合いは長いんだから」

「そうだな。俺は食後の薬以外はお前に気づかれないように自分で置いていたし、はじめは置手紙を添えたが数回で入らなくなったな」

ちょっと困り果てたように笑った。

「でも、寝起きに薬置いてあると憂鬱なんだよね」

少し不満を漏らすと肩をすくめられ、目の前で跪いた。

ヴィリムはアルノルトから服を受け取ろうとするとそれを避けられ自身の隣に置き、外しかけていたボタンに手をかけた。

「一人で着れるよ」

「お前は動くな。今回は何時もと服装が違う」

ピンと指で額を弾いた。背後でシャツを広げられ袖を通すように促されおずおずと腕を通した。本来なら男でも何かしら手伝ってもらう。ヴィリムだけはそうしないのでこういう時はどうすればいいかわからない。

戸惑いがちな主人をよそに執事はボタンを締め立ち上がらせた

「ほら、次は下だ」

「手慣れすぎてない?」

「気のせいだ」

うーんとうなりながらもアルノルトの肩に手を置きズボンを履く。

カチャカチャと何やら豪華なものを肩から腰にかけて斜めに取り付けられた。

「お前が会場入りするのは一番最後だ。隣国の姫はすでに他の貴族の令嬢と偽って開場している」

少し曇った顔でアルをじっと見つめる。

「私彼に嫌われないかな?それに正体広まらないかな?」

不安そう言った主人であるヴィリムにまた、おでこを弾く

「大丈夫だ。貴族の子息令嬢は例の彼と兄妹ぐらいでお前が通ってる学園の貴族は来ないし、今回は許されたものしか爵位を持たない人は来れない」

今回の夜会は爵位の得ているものと、その夫人及び婚約者、国の要になっている一族の子息令嬢のみだ。ヴィリムが心配していることは起きないよう手はずは整えてある。

何も、心配いらないのだが…。

「お前の身分なら偽るのは当然だ、お前の兄もそうした。嫌うわけがないだろ」

「……わかった。アルを信じる」

「例の彼に嫌われると少々予定が狂うからやめて欲しいところではあるな」

アルノルトは着替えをすませるとスタスタ何処かに消えてしまった。

少しして戻ってきた彼の髪型が変わっていた。前髪を後ろに流し、ワックスのようなもので固められていた。

「さぁ、ヴィリム殿下。口を開けていないでお時間になりましたので会場に向かいましょう」

「ああ」

アルノルトの言葉に促されるように扉を開け待っていてくれている彼の方へ素顔とは違うキリッとした王子としての仮面を付け、それでいて何処かふわりとした空気を身に纏い部屋を後にする、



王城の大広間に老若男女の着飾った貴族達が楽しそう笑談を楽しんでいるのをカールは父であるヨハンの隣でぼんやり見ていた。彼の生家であるシュティール家は代々騎士であり、優れたものを輩出してきた名門貴族の家柄。

父であるヨハンも現在はディオノス王国の騎士団長を務め、国の中心にある人物。その息子であるカールもまた、優れた剣士であり、既に騎士団からも一目置かれ、大人顔負けの強さを誇っていた。

「父上、今回呼ばれたのは限られた爵位を持つ者と許可された子息しかいないとか。そのまでの重人がこの国にいるのですか?」

今朝聞かされた話に疑問を持っていたのだ。突然、夜会に出席しろと言われ、今回の夜会の主役となる人物のことを口外するなと言われたのだ。それをヨハンにぶつけてみるとシャンパン傾けながら少し鋭い目つきになる。

「ああ、そうだ。国にとって大切な方で国王、王家の名に連なる者に大切にされている方だ。お前にはその方とお話をしてもらう。そして、守ってやってくれ」

「守る?俺がですか?」

「ああ、お前と同い年でな。その方は体が弱く剣術を身に付けることが不可能ではないが難しい」

「体が弱い?」

その単語に今日学園に転入してきた銀髪に紫の瞳持つ少年。少年というには顔立ちが少女のようで見間違えるような容姿をしていた彼のことが頭をよぎる。

「カール君」

聞きなれた声に名を呼ばれ振り向くと、其処にはリリア・ディックハウトが綺麗な色合いのドレスを見に纏いこちらにやってきた。

「リリア。ああ、そうか。お前の父親は王の傍か」

そう言い王族が集まっている場所に視線を送ると、宰相を務めるリリアの父親がそこにいた。

「リリア、今日はアルノルトさんはいないのか?」

「もうすぐくるわ。ちょっと用事があって一緒にはいないの」

彼女にはもう一人兄がいるが地方で仕事を任されているため今日は不参加、

「カール君。今日お目にかかれる方を絶対に守って、あなたに嫌われないか不安に思っているの。本当はここに姿を現したくないとも思っているはずだわ。できればずっと何も知られず過ごしたいと思っているわ、でも、明かさなくてはならない。きっと今、ものすごく怯えていると思うわ」

少し沈んだ悲しそうな声で言われ、王族がいる場所から視線を彼女に戻す。

どうやら今回のシークレットを知っているようだ。それに自分もあったことがあるようだ。

「なぁ、それって……」

先程から頭によぎる彼を思い浮かべながらリリアにその名を言おうとした時。

シャランという音がした。この音は王や王族、主役になるものが入場するときに使われる音。大広間にいた全員が姿を表すことになる場所に視線を向ける。

王族と許可された人物のみが使うことが許される大広間に飾られたこの国の象徴である英雄騎士の像から左右に伸びるように作られた階段。螺旋階段の様な先にあるフロアは中二階の様になっておりこちらを見下ろせるように手摺が作られておりその先からはは吹き抜けになっているだけだ、中二階中央に扉があり、その橋にはテーブルセットが置かれていた。

扉の前に立っていた兵士二人が扉を開け、其処に姿を現はれたのは……。

「えっ……ヴィオ……?」

銀髪に紫の瞳を持つ先程から頭によぎる彼だった。もしかしたらと分かっていた。それでも。

大広間にいた、国王が高らかに声を上げた。

「彼は私の末の息子であり、第三王子であるヴィリム・ディオノス。見ての通りヴィリムは世界的にも稀な銀髪の持ち主。中等部に入学するまで隠し続けていたこと済まない民にもあって知らせと顔見せをする。その時まで黙っていてほしい。さぁヴィリムこちらに来なさい」

ヴィリムが名を呼ばれ、周囲に視線を向けた彼と目が合う。彼は一瞬だが、怯えた様な顔をし、すぐに学園にいるときには見せなかった貼り付けた笑みに戻す。

「はい。父様」

連れ添う様にその後ろにはリリアの兄、アルノルトがそこにいた。

「ああ、そういう事か。怯えた顔をしなくてもいいのにな」

そう呟くと隣にいたリリアが肩から力を抜くのが横目でわかった。

「父上とリリアは存在を知っていたのですよね?」

「ああ、そうだ。済まないなカール」

「ごめんなさい」

「いいです。あんな顔を見せられては文句も言えません」

苦笑交じりそういうとヨハンの大きな手が頭の上に乗せられた。

「お前がそばにいるなら安心だろう」

「ええ、それにしても顔色が優れていない様に思えますが…」

「先程、君の兄から聞いたが、熱が出たらしい、今は平常に戻ったが疲れだろう」

「それでは無理をしてこの場に?」

3人が階段を降りて来た彼を見る。足取りが重く重心がフラフラしている様に見える。綺麗にお辞儀をすると、普段は置かれていない椅子に腰掛ける。その斜め横にアルノルトが待機する。

「ギリギリまで眠っていたと聞いているが、殿下は大丈夫。アルノルト君からすれば寝てていてくれだそうだ」

ヨハンから聞いた二人は頭を抱えため息を吐きたい気持ちになる。

「休んでいてください」

「お兄様も止めましょうよ」

二人のつぶやきにブフッと吹き出した。

「殿下自身あまり無茶をしない方だ。しかし、休んでいたいだろうが今回ばかりは出席せざる得ないからな」

そう言いヴィリムに目を向けると周りには貴族達がわんさかと群れていたが、暫くするとその波は消えた。その瞬間を見計らい。3人はヴィリムのところに向かう

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